不在者財産管理人の管理業務は、終了事由に該当するまで続きます。
ただし、終了事由に該当したら終わりではなく、家庭裁判所に取消しの申立てが必要です。
申立てが認められたら、管理財産の引き渡し等を経て終了です。
今回の記事では、不在者財産管理人の終了について説明しているので、管理人は確認しておいてください。
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1.不在者財産管理人の主な終了事由は5つ

不在者財産管理人の管理業務は、申立人の目的が達成できても終了せず、終了事由に該当するまで続きます。
以下は、主な終了事由です。
- 不在者が財産を管理できる
- 委任管理人が選任された
- 管理する財産がなくなった
- 不在者の死亡が確認された
- 不在者に失踪宣告がされた
いずれの事由に該当しても、不在者財産管理人の業務を継続する必要がなくなります。
1-1.不在者本人が財産を管理できる

1つ目は、不在者が財産を管理できるようになったです。
当然ですが、本人が財産を管理できるようになれば、不在者財産管理人は必要ありません。
以下は、家事事件手続法の条文です。
(処分の取消し) 第百四十七条 家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったとき(家庭裁判所が選任した管理人が管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。
不在者が見つかれば連絡を取って、現在の状況を説明してください。
ただし、すぐに財産を引き渡すのではなく、家庭裁判所の手続きを経てからです。万が一、間違えて財産を引き渡すと、管理責任を問われるので注意してください。
1-2.不在者が委任管理人を選任した

2つ目は、不在者が委任管理人を選任したです。
不在者が自分で管理人を選任すれば、不在者財産管理人は必要ありません。
以下は、民法の条文です。
(不在者の財産の管理) 第二十五条 (省略) 2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
本人(不在者)は管理できないが、代わりに管理人を選任した場合です。
家庭裁判所の手続きが終了したら、委任管理人に財産を引き継いでください。
1-3.管理する財産がなくなった

3つ目は、管理する財産がなくなったです。
管理する財産がなくなれば、不在者財産管理人は必要ありません。
以下は、家事事件手続法の条文です。
(処分の取消し) 第百四十七条 家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったとき(家庭裁判所が選任した管理人が管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。
当たり前ですが、管理する財産がなくなれば、管理業務も終了となります。
管理する財産がなくなるケースは複数あります。
- 支払いにより財産がなくなる
- 管理する財産が発生しなかった
- 供託により財産がなくなった
支払いにより財産がなくなる
不在者の負債や管理費用(報酬含む)は、管理財産から支払われます。
管理期間が長期間になれば、いつかは支払いにより財産がなくなるので、管理業務も終了となります。
関連記事を読む『不在者財産管理人の報酬は不在者の財産から支払われる 』
管理する財産が発生しなかった
目的があって不在者財産管理人を選任するのですが、管理する財産が発生しないケースもあります。
例えば、帰来時弁済型の遺産分割をした場合です。
不在者以外の人が相続財産を全部取得して、不在者が見つかった時は法定相続分に相当する代償金を支払うという遺産分割になります。

遺産分割協議で不在者が取得するのは代償金の請求権なので、不在者財産管理人が管理する財産はありません。
※遺産以外の財産は除く。
遺産分割協議が終了したら、管理する財産がないので終了です。
関連記事を読む『【帰来時弁済型の遺産分割とは】不在者の帰来時に代償金を支払う 』
不在者の金銭を供託する
家事事件手続法の改正により、不在者財産管理人も金銭(管理財産)を供託できます。
以下は、家事事件手続法の条文です。
(供託等) 第百四十六条の二 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。
不在者の金銭を供託したことにより、管理財産がなくなれば管理業務も終了です。
関連記事を読む『不在者財産管理人も供託できるようになる【令和5年4月1日施行】』
1-4.不在者の死亡が確認された

4つ目は、不在者の死亡が確認されたです。
不在者の死亡が確認されると、相続が発生するので不在者財産から相続財産へと変わります。
相続が発生した後の流れは、相続人の有無によって分かれます。
- 相続人が存在する
- 相続人が存在しない
相続人が存在するなら引き継いで終了
不在者に相続人がいれば、相続人が管理財産を相続します。
相続人が複数人いるなら、遺産分割協議の終了を待つか、または受取の代表者を決めてもらいます。
相続人(代表者)が財産を引き継いで終了です。
相続人が存在しないなら相続財産清算人
不在者に相続人がいないなら、管理財産は相続財産法人となります。
相続財産清算人の選任申立てをして、清算人が選任されたら管理財産を引き継ぎます。
1-5.不在者の失踪宣告が確定した

5つ目は、不在者の失踪宣告が確定したです。
不在者の生死が不明になってから7年経過、または危難が去ってから1年経過していると、失踪宣告を請求できます。
※不在者財産管理人も申立人になれる。
失踪宣告の審判が確定すると、不在者は死亡とみなされます。
死亡とみなされた後の流れは【1-4.不在者の死亡が確認された】と同じです。
関連記事を読む『【失踪宣告の手続き】申立てをしなければ始まらない 』
1-6.その他の事由でも終了する

1つ目から5つ目以外の事由でも、財産の管理を継続することが相当でなくなれば、管理業務は終了となります。
例えば、管理財産に対して管理費用(報酬含む)が不相当に高額であり、管理人の選任が相当ではない場合です。管理人がいなくても問題なければ、管理業務を終了させた方が良いでしょう。
主な終了事由に該当しない場合であっても、終了するケースはあると覚えておきましょう。
2.終了には家庭裁判所の取消手続きが必要
不在者財産管理人の終了事由に該当しても、家庭裁判所の手続きを経なければ終了となりません。
具体的には、「不在者財産管理人選任処分の取消し」が必要です。
終了事由に該当したからといって、勝手に終了すると管理義務違反になります。
2-1.不在者財産管理人選任処分の取消しの審判
不在者財産管理人の終了事由に該当したら、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任処分の取消し審判申立書」を提出してください。
申立書を提出できるのは、以下の人になります。
- 不在者本人
- 不在者財産管理人
- 利害関係人
- 委任管理人
申立書が提出されると、家庭裁判所が終了事由を調査します。
例えば、不在者が戻って来た場合なら、不在者本人で間違いないか調査します。
終了事由に間違いがなければ、審判終了後に不在者財産管理人へ告知されます。そして、告知により取消しの効力が発生します。
2-2.家庭裁判所に管理終了報告書を提出して終了
不在者の財産管理事務(財産の引継ぎ等)が終了したら、家庭裁判所に管理終了報告書を提出してください。
報告書には添付書面も必要であり、終了事由によって違います。
※具体的な書面は管轄家庭裁判所に確認してください。
例えば、不在者本人に財産を引き継いだ場合は、本人の印鑑証明書や免許証コピー、振込受付書や受領書等が考えられます。
管理終了報告書を提出したら、不在者財産管理人に関する業務も終了です。
3.管理人の終了事由に該当していない場合
不在者財産管理人の終了事由に該当しなければ、管理人としての仕事は続きます。
ですが、やむを得ない事情等により、仕事が続けれない人もいます。
どうしても不在者財産管理人を辞めたい場合は、家庭裁判所に改任請求をしてください。
- 改任
-
新しい不在者財産管理人を選任して、現在の不在者財産管理人は退任する
新しい不在者財産管理人が選任されたら、管理財産を引き継いで終了となります。
関連記事を読む『不在者財産管理人が辞任するなら方法は取消しと改任の2つ 』
4.まとめ
今回の記事では「不在者財産管理人の終了」について説明しました。
不在者財産管理人の管理業務は、終了事由に該当するまで続きます。
- 不在者が財産を管理できる
- 委任管理人が選任された
- 管理する財産がなくなった
- 不在者の死亡が確認された
- 不在者に失踪宣告がされた
終了事由に該当したら、家庭裁判所に選任処分取消しの申立てをしてください。
申立てが認められたら、管理財産の引き渡し等を済ませて、管理終了報告書を提出してください。
不在者財産管理人の終了にも、家庭裁判所の手続きが必要なので、勝手に終了しないよう注意してください。