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【相続放棄のデメリット】6つの欠点を図を用いて説明

相続放棄のデメリット
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相続放棄を検討しているのであれば、デメリットも知っておきましょう。

どんな制度にも欠点はあるので、知らずに放棄すると思わぬトラブルも発生します。

以下は、主なデメリットです。

  • プラスの財産も放棄
  • 手間と費用がかかる
  • みなし単純承認の規定
  • 次順位相続人に相続が移る
  • 生命保険金の非課税枠が使えない
  • 相続放棄の撤回は認められない

今回の記事では、相続放棄のデメリットについて説明しているので、しっかりと確認しておいてください。

目次

1.最大のデメリットはプラスも相続放棄

相続放棄のデメリットはプラスの財産も放棄

1つ目のデメリットは、プラスの財産も放棄です。

相続放棄は借金を放棄する手続きではなく、相続財産をすべて放棄する手続きになります。

1-1.負債(借金)だけでなく預貯金等も相続できない

相続放棄すると、負債(借金等)だけでなく、預貯金や不動産も相続できません。

【事例1】
亡くなった親の財産は借金100万円と預貯金200万円。

相続放棄すると借金100万円を引き継ぎませんが、預貯金200万円も引き継げません。

金額だけで判断するなら、相続した方が得になります。

【事例2】
亡くなった親の財産は借金500万円と土地(1,000万円)。

相続放棄すると借金500万円を引き継ぎませんが、土地も引き継げません。

土地が処分できるのであれば、相続した方が得になります。

預貯金や不動産も相続できない点はデメリットなので、相続財産はしっかりと確認しておきましょう。

1-2.知らなかった財産が見つかっても相続できない

相続放棄した後で、知らなかった財産が見つかっても相続できません。

【事例1】
亡くなった親の財産は借金100万円と預貯金20万円。

借金の方が多かったので相続放棄したが、後から預貯金300万円が見つかった。

320万円ー100万円=220万円

相続していれば、220万円の得になっています。

知らなかった財産を含めて放棄になる点はデメリットなので、後悔しないように探しておきましょう。

2.相続放棄の手間と費用はデメリット

相続放棄のデメリットは手間と費用

2つ目のデメリットは、相続放棄の手間と費用です。

相続放棄には手間がかかりますし、手続費用も発生します。

  • 相続放棄は家庭裁判所の手続き
  • 専門家に依頼すると報酬がかかる

それぞれ説明していきます。

2-1.相続放棄は家庭裁判所の手続き

相続放棄するには、家庭裁判所の手続きが必要です。相続人同士で話し合いをしても、相続放棄の効力は発生しません。

以下は、民法の条文です。

(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法938条)

相続放棄の申述は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。

添付書類として戸籍等も必要なので、手続きに手間がかかるのはデメリットになります。

2-2.専門家に依頼すると費用が増える

自分で相続放棄の手続きをする時間がなければ、専門家(弁護士・司法書士)への依頼も可能です。

ただし、専門家に手続きを依頼すると、専門家報酬の分だけ費用が増えます。

専門家報酬は事務所によって違いますが、1人当たり数万円は必要なので、依頼する人にとってはデメリットです。

3.みなし単純承認の規定はデメリット

みなし単純承認の規定は相続放棄のデメリット

3つ目のデメリットは、みなし単純承認の規定です。

相続人が相続放棄したいと思っても、法律の規定に該当すると単純承認したとみなされます。

単純承認

すべての権利・義務を相続する

以下は、民法の条文です。

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法921条)

みなし単純承認の規定は3つあります。

  • 相続財産を処分した
  • 相続放棄せずに3ヶ月経過した
  • 相続放棄後に相続財産を消費した

どれか1つにでも該当すると、相続放棄できなくなる点は相続人にとってデメリットです。

4.次順位相続人がいるとデメリット発生

相続放棄のデメリットは相続人の変更

4つ目のデメリットは、次順位相続人に相続が移ることです。

相続放棄すると初めから相続人ではなかったとみなされます。先順位相続人が全員相続放棄すると、次順位相続人へ相続権が移ります。

以下は、相続順位を表した図です。

法定相続人の順位

先順位相続人が全員相続放棄すると、デメリットも発生します。

4-1.遺産分割協議の参加者が変更

先順位相続人が全員相続放棄すると、遺産分割協議の参加者が変更します。

【事例】
配偶者と子どもが相続人の場合。

子どもが全員相続放棄すると、直系尊属(兄弟姉妹)に相続が移ります。

その結果、配偶者と直系尊属(兄弟姉妹)で遺産分割協議を行います。

配偶者も相続放棄する場合は問題ありませんが、子どもだけが相続放棄する場合はデメリットになります。

4-2.親の借金等が直系尊属や兄弟姉妹に移る

親の借金等が原因で相続放棄した場合、次順位相続人(直系尊属や兄弟姉妹)に借金等が移ります。

【事例】
亡くなった親に借金があったので、子が全員相続放棄した場合。
※親には兄がいる。

親の借金は親の兄(伯父)に移ります。伯父が何もしなければ、親の借金を相続します。

相続するつもりがなければ、叔父も手続きが必要です。

先順位相続人(子ども)が放棄すると、次順位相続人(直系尊属や兄弟姉妹)も手続きが必要になります。

相続放棄しても連絡する義務はないですが、普段から交流があるなら伝えておきましょう。

先順位相続人の相続放棄により、次順位相続人も相続放棄が必要になるのはデメリットです。

5.生命保険金の非課税枠が使えない

相続放棄のデメリットは生命保険金の非課税枠が使えなくなる

5つ目のデメリットは、生命保険金の非課税枠が使えないです。

生命保険金を受け取ると、相続放棄していても相続税の課税対象になります。

生命保険金には非課税枠があるのですが、相続放棄すると適用されません。

生命保険の非課税枠

500万円×法定相続人の数

相続放棄すると生命保険金の非課税枠が適用されない

相続放棄すると相続人ではないので、生命保険金の非課税枠は適用されないです。

生命保険金の金額によっては、相続放棄により相続税が発生するデメリットがあります。

6.相続放棄の撤回は認められない

相続放棄のデメリットは撤回できない

6つ目のデメリットは、相続放棄の撤回は認められないです。

相続放棄の撤回は法律で禁止されています。

以下は、民法の条文です。

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法919条)

相続放棄した後に高額な財産が見つかっても、相続放棄の撤回は認められません。たとえ財産を知らなかったとしても結論は同じです。

相続放棄の撤回が認められない点はデメリットになります。

6.まとめ

相続放棄のデメリットは6つある

今回の記事では「相続放棄のデメリット」について説明しました。

どんな制度にもデメリットがあるように、相続放棄にもデメリットがあります。

  • プラスの財産も放棄
  • 手間と費用がかかる
  • みなし単純承認の規定
  • 次順位相続人に相続が移る
  • 生命保険金の非課税枠が使えない
  • 相続放棄の撤回は認められない

知らなかった財産が後から見つかっても相続できません。知らなかったを理由に撤回もできません。

相続放棄すると相続人が変更するので、次順位相続人も関係します。

相続放棄を検討しているなら、デメリットについても知っておいてください。

相続放棄のデメリットに関するQ&A

配偶者が相続放棄しなくても順位は変わりますか?

変わります。配偶者は順位変更と関係ないです。

相続放棄の撤回は絶対に無理ですか?

撤回はできません。
ただし、詐欺や脅迫を理由に取消しは可能です。

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