亡くなった人に借金等があっても、相続放棄すれば相続しません。
ただし、相続放棄にはデメリットもあります。どんな制度にも欠点はあるので、知らずに放棄すると危険です。
以下は、相続放棄の主なデメリットです。
- プラスの財産も放棄
- 手間と費用がかかる
- 次順位相続人に相続が移る
- 生命保険金の非課税枠が使えない
- 相続放棄の撤回は認められない
相続放棄すると見つかっていない財産も放棄します。先順位相続人が相続放棄すると、次順位相続人に相続が移ります。
今回の記事では、相続放棄のデメリットについて説明しているので、相続放棄する前に確認してください。
1.最大のデメリットはプラスも相続放棄

相続放棄1つ目のデメリットは、プラスの財産も放棄です。
相続放棄は借金だけ放棄する手続きではなく、相続財産をすべて放棄する手続きになります。
そのため、マイナスの財産(借金等)だけでなく、プラスの財産(預貯金等)も相続できないです。
たとえ知らなかった財産が見つかっても、相続人ではないので相続できません。
例えば、借金があったので相続放棄したが、後になって借金を上回る預貯金が発見された場合です。知らなかった預貯金も含めて相続放棄しています。
相続放棄する際は、後から財産が見つかっても後悔しない覚悟が必要です。
関連記事を読む『財産の一部だけ相続放棄はできない!一部放棄は認められない』
2.相続放棄の手間と費用はデメリット

相続放棄2つ目のデメリットは、相続放棄の手間と費用です。
相続放棄には手間がかかりますし、手続費用も発生します。
- 相続放棄は家庭裁判所の手続き
- 専門家に依頼すると報酬がかかる
それぞれ説明していきます。
2-1.相続放棄は家庭裁判所の手続き
相続放棄するには、家庭裁判所の手続きが必要です。相続人同士で話し合いをしても、相続放棄の効力は発生しません。
以下は、民法の条文です。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
相続放棄の申述は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。
添付書類として戸籍謄本等も必要なので、手続きに手間がかかるのはデメリットになります。
ちなみに、「相続放棄」と「相続分の放棄」は違うので、間違えないように注意してください。
関連記事を読む『相続放棄と相続分の放棄は違う【間違えている人が多い】』
2-2.専門家に依頼すると報酬が発生
自分で相続放棄の手続きをする時間がなければ、専門家(弁護士・司法書士)への依頼も可能です。
ただし、専門家に手続きを依頼すると、専門家報酬が発生します。
専門家報酬は事務所によって違いますが、1人当たり数万円は必要なので、依頼する人にとってはデメリットです。
関連記事を読む『相続放棄の相談はどこでするのか?誰にするかの方が重要!』
3.次順位相続人がいるとデメリット発生

相続放棄3つ目のデメリットは、次順位相続人に相続が移ることです。
相続放棄すると初めから相続人ではなかったとみなされます。先順位相続人が全員相続放棄すると、次順位相続人へ相続権が移ります。
以下は、相続順位を表した図です。

先順位相続人が全員相続放棄すると、デメリットも発生します。
3-1.遺産分割協議の参加者が変更
先順位相続人が全員相続放棄すると、遺産分割協議の参加者が変更します。
例えば、配偶者と子どもが相続人の場合です。
子どもが全員相続放棄すると、直系尊属(兄弟姉妹)に相続が移ります。
その結果、配偶者と直系尊属(兄弟姉妹)で遺産分割協議を行います。
配偶者も相続放棄する場合は問題ありませんが、子どもだけが相続放棄する場合はデメリットになります。
関連記事を読む『遺産分割協議書に相続放棄した人は記載するのか?』
3-2.借金等が次順位相続人に移る
借金等が原因で相続放棄した場合、次順位相続人に借金等が移ります。
次順位相続人が借金等を相続するつもりがなければ、次順位相続人も相続放棄が必要です。
相続放棄しても連絡する義務はないですが、普段から交流があるなら伝えておきましょう。
先順位相続人の相続放棄により、次順位相続人も相続放棄が必要になるのはデメリットです。
関連記事を読む『相続放棄したいが親戚に迷惑をかけたくないなら方法は2つ』
4.生命保険金の非課税枠が使えない

相続放棄4つ目のデメリットは、生命保険金の非課税枠が使えないです。
生命保険金を受け取ると、相続放棄していても相続税の課税対象になります。
生命保険金には非課税枠があるのですが、相続放棄すると適用されません。

相続放棄すると相続人ではないので、生命保険金の非課税枠は適用されないです。
生命保険金の金額によっては、相続放棄により相続税が発生するデメリットがあります。
関連記事を読む『相続放棄をしても生命保険金は受け取れるのか』
5.相続放棄の撤回は認められない

相続放棄5つ目のデメリットは、相続放棄の撤回は認められないです。
相続放棄の撤回は法律で禁止されています。
以下は、民法の条文です。
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
相続放棄した後に高額な財産が見つかっても、相続放棄の撤回は認められません。
たとえ財産を知らなかったとしても結論は同じです。
相続放棄の撤回が認められない点はデメリットになります。
関連記事を読む『相続放棄の撤回はできない【法律で禁止されている】』
6.まとめ
今回の記事では「相続放棄のデメリット」について説明しました。
どんな制度にもデメリットがあるように、相続放棄にもデメリットがあります。
- プラスの財産も放棄
- 手間と費用がかかる
- 次順位相続人に相続が移る
- 生命保険金の非課税枠が使えない
- 相続放棄の撤回は認められない
知らなかった財産が後から見つかっても相続できません。知らなかったを理由に撤回もできません。
相続放棄すると相続人が変更するので、次順位相続人も関係します。
相続放棄を検討しているなら、デメリットについても知っておいてください。
相続放棄のデメリットに関するQ&A
- 配偶者が相続放棄しなくても順位は変わりますか?
-
自由報酬なので事務所によって違います。
- 配偶者が相続放棄しなくても順位は変わりますか?
-
変わります。配偶者は順位変更と関係ないです。
- 相続放棄の撤回は絶対に無理ですか?
-
撤回はできません。
ただし、詐欺や脅迫を理由に取消しは可能です。