相続放棄を検討しているのであれば、デメリットも知っておきましょう。
どんな制度にも欠点はあるので、知らずに放棄すると思わぬトラブルも発生します。
以下は、主なデメリットです。
- プラスの財産も放棄
- 手間と費用がかかる
- みなし単純承認の規定
- 次順位相続人に相続が移る
- 生命保険金の非課税枠が使えない
- 相続放棄の撤回は認められない
今回の記事では、相続放棄のデメリットについて説明しているので、しっかりと確認しておいてください。
1.最大のデメリットはプラスも相続放棄
1つ目のデメリットは、プラスの財産も放棄です。
相続放棄は借金を放棄する手続きではなく、相続財産をすべて放棄する手続きになります。
1-1.負債(借金)だけでなく預貯金等も相続できない
相続放棄すると、負債(借金等)だけでなく、預貯金や不動産も相続できません。
【事例1】
亡くなった親の財産は借金100万円と預貯金200万円。
相続放棄すると借金100万円を引き継ぎませんが、預貯金200万円も引き継げません。
金額だけで判断するなら、相続した方が得になります。
【事例2】
亡くなった親の財産は借金500万円と土地(1,000万円)。
相続放棄すると借金500万円を引き継ぎませんが、土地も引き継げません。
土地が処分できるのであれば、相続した方が得になります。
預貯金や不動産も相続できない点はデメリットなので、相続財産はしっかりと確認しておきましょう。
関連記事を読む『財産の一部だけ相続放棄はできない!一部放棄は認められない』
1-2.知らなかった財産が見つかっても相続できない
相続放棄した後で、知らなかった財産が見つかっても相続できません。
【事例1】
亡くなった親の財産は借金100万円と預貯金20万円。
借金の方が多かったので相続放棄したが、後から預貯金300万円が見つかった。
320万円ー100万円=220万円
相続していれば、220万円の得になっています。
知らなかった財産を含めて放棄になる点はデメリットなので、後悔しないように探しておきましょう。
2.相続放棄の手間と費用はデメリット
2つ目のデメリットは、相続放棄の手間と費用です。
相続放棄には手間がかかりますし、手続費用も発生します。
- 相続放棄は家庭裁判所の手続き
- 専門家に依頼すると報酬がかかる
それぞれ説明していきます。
2-1.相続放棄は家庭裁判所の手続き
相続放棄するには、家庭裁判所の手続きが必要です。相続人同士で話し合いをしても、相続放棄の効力は発生しません。
以下は、民法の条文です。
相続放棄の申述は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。
添付書類として戸籍等も必要なので、手続きに手間がかかるのはデメリットになります。
関連記事を読む『【相続放棄の手続きは家庭裁判所】その他の方法では成立しない 』
2-2.専門家に依頼すると費用が増える
自分で相続放棄の手続きをする時間がなければ、専門家(弁護士・司法書士)への依頼も可能です。
ただし、専門家に手続きを依頼すると、専門家報酬の分だけ費用が増えます。
専門家報酬は事務所によって違いますが、1人当たり数万円は必要なので、依頼する人にとってはデメリットです。
関連記事を読む『相続放棄の相談はどこでするのか?誰にするかの方が重要!』
3.みなし単純承認の規定はデメリット
3つ目のデメリットは、みなし単純承認の規定です。
相続人が相続放棄したいと思っても、法律の規定に該当すると単純承認したとみなされます。
以下は、民法の条文です。
みなし単純承認の規定は3つあります。
- 相続財産を処分した
- 相続放棄せずに3ヶ月経過した
- 相続放棄後に相続財産を消費した
どれか1つにでも該当すると、相続放棄できなくなる点は相続人にとってデメリットです。
関連記事を読む『相続放棄が認められない|単純承認とみなされる3つの行為 』
4.次順位相続人がいるとデメリット発生
4つ目のデメリットは、次順位相続人に相続が移ることです。
相続放棄すると初めから相続人ではなかったとみなされます。先順位相続人が全員相続放棄すると、次順位相続人へ相続権が移ります。
以下は、相続順位を表した図です。
先順位相続人が全員相続放棄すると、デメリットも発生します。
4-1.遺産分割協議の参加者が変更
先順位相続人が全員相続放棄すると、遺産分割協議の参加者が変更します。
【事例】
配偶者と子どもが相続人の場合。
子どもが全員相続放棄すると、直系尊属(兄弟姉妹)に相続が移ります。
その結果、配偶者と直系尊属(兄弟姉妹)で遺産分割協議を行います。
配偶者も相続放棄する場合は問題ありませんが、子どもだけが相続放棄する場合はデメリットになります。
関連記事を読む『遺産分割協議書に相続放棄した人は記載するのか?』
4-2.親の借金等が直系尊属や兄弟姉妹に移る
親の借金等が原因で相続放棄した場合、次順位相続人(直系尊属や兄弟姉妹)に借金等が移ります。
【事例】
亡くなった親に借金があったので、子が全員相続放棄した場合。
※親には兄がいる。
親の借金は親の兄(伯父)に移ります。伯父が何もしなければ、親の借金を相続します。
相続するつもりがなければ、叔父も手続きが必要です。
先順位相続人(子ども)が放棄すると、次順位相続人(直系尊属や兄弟姉妹)も手続きが必要になります。
相続放棄しても連絡する義務はないですが、普段から交流があるなら伝えておきましょう。
先順位相続人の相続放棄により、次順位相続人も相続放棄が必要になるのはデメリットです。
関連記事を読む『相続放棄したいが親戚に迷惑をかけたくないなら方法は2つ』
5.生命保険金の非課税枠が使えない
5つ目のデメリットは、生命保険金の非課税枠が使えないです。
生命保険金を受け取ると、相続放棄していても相続税の課税対象になります。
生命保険金には非課税枠があるのですが、相続放棄すると適用されません。
相続放棄すると相続人ではないので、生命保険金の非課税枠は適用されないです。
生命保険金の金額によっては、相続放棄により相続税が発生するデメリットがあります。
関連記事を読む『相続放棄をしても生命保険金は受け取れるのか』
6.相続放棄の撤回は認められない
6つ目のデメリットは、相続放棄の撤回は認められないです。
相続放棄の撤回は法律で禁止されています。
以下は、民法の条文です。
相続放棄した後に高額な財産が見つかっても、相続放棄の撤回は認められません。たとえ財産を知らなかったとしても結論は同じです。
相続放棄の撤回が認められない点はデメリットになります。
関連記事を読む『相続放棄の撤回はできない【法律で禁止されている】』
6.まとめ
今回の記事では「相続放棄のデメリット」について説明しました。
どんな制度にもデメリットがあるように、相続放棄にもデメリットがあります。
- プラスの財産も放棄
- 手間と費用がかかる
- みなし単純承認の規定
- 次順位相続人に相続が移る
- 生命保険金の非課税枠が使えない
- 相続放棄の撤回は認められない
知らなかった財産が後から見つかっても相続できません。知らなかったを理由に撤回もできません。
相続放棄すると相続人が変更するので、次順位相続人も関係します。
相続放棄を検討しているなら、デメリットについても知っておいてください。
相続放棄のデメリットに関するQ&A
- 配偶者が相続放棄しなくても順位は変わりますか?
-
変わります。配偶者は順位変更と関係ないです。
- 相続放棄の撤回は絶対に無理ですか?
-
撤回はできません。
ただし、詐欺や脅迫を理由に取消しは可能です。