死後離縁を検討しているなら、デメリットも知っておいてください。
どんな制度にも欠点があるように、死後離縁にもデメリットは存在します。
- 家庭裁判所の許可が必要
- 発生済の相続には影響しない
- 当事者双方の死亡後は不可
- 遺族年金の受給権は消滅
- 養子縁組前の苗字に戻る
- 死後離縁の撤回は認められない
知らずに養子縁組を解消して、後悔している人もいます。
今回の記事では、死後離縁のデメリットを6つ説明しているので、必ず確認しておいてください。
1.死後離縁には家庭裁判所の許可が必要
1つ目のデメリットは、死後離縁には家庭裁判所の許可が必要です。
亡くなった人との養子縁組を解消するには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
以下は、民法の条文です。
市役所等の窓口に離縁届を提出しても、家庭裁判所の許可を得ていなければ不受理になります。
1-1.死後離縁の理由によっては却下
家庭裁判所に死後離縁の申立てをしても、離縁理由によっては却下されます。
扶養義務や祭祀逃れが理由であれば、許可を得るのは難しいでしょう。
ただし、不純な理由以外であれば、許可は得られるので安心してくだい。
関連記事を読む『死後離縁の理由によっては認められないケースもある』
1-2.許可を得た後で市役所等に届出をする
家庭裁判所に死後離縁の許可を得ても、戸籍謄本の記載は変更されません。
家庭裁判所の許可審判が確定したら、市役所等に離縁届を提出してください。離縁届を提出しなければ、養子縁組は解消されません。
養子縁組を解消するのに手間がかかるのは、死後離縁のデメリットです。
関連記事を読む『死後離縁の手続きは3段階あるので1つずつ進めていこう』
2.死後離縁は発生済の相続に影響しない
2つ目のデメリットは、発生済の相続に影響しないです。
死後離縁が認められても、すでに発生している相続には関係ありません。
したがって、養親が亡くなって死後離縁をしても、養親の相続人であることに変わりはありません。
2-1.養親の相続を放棄するなら相続放棄が必要
亡くなった養親の相続を放棄するなら、死後離縁ではなく相続放棄の手続きが必要です。
間違って死後離縁の手続きを進めていると、その間に3ヶ月が経過してしまいます。
相続の開始を知ってから3ヶ月が経過すると、相続放棄は認められないので注意してください。
関連記事を読む『【相続放棄の手続きは家庭裁判所】その他の方法では成立しない 』
2-2.死後離縁した後に代襲相続に気付くこともある
死後離縁した後に、代襲相続が発生していることに気付くこともあります。
例えば、養親が亡くなった後に養親の親族と疎遠になっていれば、代襲相続が発生していることに気付いていないこともあります。
発生済の相続に死後離縁は影響しないので、代襲相続人であることに変わりはありません。
関連記事を読む『死後離縁をしても相続には影響しないが代襲相続は防げる』
3.当事者双方が亡くなると死後離縁できない
3つ目のデメリットは、当事者双方が亡くなると死後離縁できないです。
死後離縁できるのは養子縁組の当事者なので、双方が亡くなっていると離縁できません。
以下は、民法の条文です。
親族が養子縁組を解消したいと思っても、養親・養子双方が亡くなっていれば、死後離縁は利用できないです。
あくまでも、生存当事者が利用できる制度なので、離縁するつもりなら早めに申立てをしましょう。
4.死後離縁により遺族年金の受給権は消滅
4つ目のデメリットは、遺族年金の受給権は消滅するです。
遺族年金の受給要件を満たしていれば、養子であっても受給できます。
ただし、死後離縁すると親子関係が消滅するので、遺族年金の受給権も消滅します。
遺族年金の受給権が発生しているなら、死後離縁はデメリットです。
勘違いして養子縁組を解消しないように、養子の親権者は注意してください。
関連記事を読む『遺族基礎年金はいつまでもらえる?受給権が消滅すると終了』
5.養子縁組の期間によっては苗字が使えない
5つ目のデメリットは、養子縁組の期間によっては苗字が使えないです。
原則として、死後離縁すると元の苗字(養子縁組前の苗字)に戻ります。
以下は、民法の条文です。
例外として、養子縁組より7年以上経過している場合は、今の苗字を使用できます。
したがって、7年経過していなければ、死後離縁により元の苗字に戻ってしまいます。
仕事関係などで苗字を変えたくない場合、死後離縁はデメリットです。
7年経過するまで待てば問題ありませんが、その間に代襲相続が発生する可能性はあります。
関連記事を読む『【離縁の際に称していた氏を称する届】苗字の使用条件は2つ 』
6.死後離縁の撤回はできない
6つ目のデメリットは、死後離縁の撤回はできないです。
死後離縁により養子縁組を解消すると、理由に関わらず撤回できません。
例えば、死後離縁した後で養親の親に財産があると気付いても、死後離縁の撤回は認められません。
したがって、死後離縁をした結果、財産を相続する権利を失う可能性はあります。
7.死後離縁のデメリットまとめ
今回の記事では「死後離縁のデメリット」について説明しました。
死後離縁することにより、亡くなった養親(養子)との関係を解消できます。
ただし、死後離縁にもデメリットは存在します。
- 家庭裁判所の許可が必要
- 発生済の相続には影響しない
- 当事者双方の死亡後は不可
- 遺族年金の受給権は消滅
- 養子縁組前の苗字に戻る
- 死後離縁の撤回は認められない
自分に該当するデメリットはないか確認したうえで、死後離縁してください。