養子縁組を解消すると、養子の名字は元の名字に戻ります。
ただし、2つの条件を満たせば、離縁後も養親の名字を使用できます。
- 養子縁組の期間が7年以上
- 養子離縁の日から3ヶ月以内に届出
上記の条件を満たさなければ、養親の名字は使用できません。
今回の記事では、離縁後に養親の名字を称するについて説明しているので、離縁を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.養子は離縁により縁組前の名字に戻る
養子縁組を解消すると、養子の名字は縁組前の名字に戻ります。
以下は、民法の条文です。
養子縁組により養親の名字を称しているので、養子縁組を解消すると元の名字に戻るのは当然といえます。
ただし、養親の配偶者とも養子縁組を結んでいる場合は、どちらか一方とだけ離縁しても名字は変わらないです。
養子縁組と名字については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『養子縁組と苗字の関係について図を用いて分かりやすく説明』
2.条件を満たせば同じ名字を使用できる
養子縁組を解消すると、養子の名字は縁組前の名字に戻ります。
ただし、2つの条件を満たせば、養子は離縁後も養親の名字を使用できます。
以下は、民法の条文です。
- 養子縁組の期間が7年以上
- 養子離縁の日から3ヶ月以内に届出
上記の2つを満たさなければ、養親の名字は使用できません。
2-1.養子縁組の期間が7年以上必要
名字使用の条件1つ目は、養子縁組の期間が7年以上です。
養子離縁後に養親の名字を使用するには、養子縁組の期間が7年以上必要になります。養子縁組の期間が7年に満たなければ、養親の名字は使用できません。
養子離縁後も養親の名字(現在の名字)を使用するつもりなら、養子縁組の期間を確認してください。場合によっては、養子離縁の時期を遅らせましょう。
2-2.養子離縁の日から3ヶ月以内に届出
名字使用の条件2つ目は、養子離縁の日から3ヶ月以内に届出です。
養子縁組の期間が7年以上あっても、3ヶ月以内に届出をしなければ、養親の名字は使用できません。
たとえ養子縁組の期間が20年以上でも、3ヶ月の期間経過後は届出ができません。
養子離縁後も養親の名字(現在の名字)を使用するつもりなら、届出についても確認しておいてください。
3.離縁の際に称していた氏を称する届を届出
養子離縁の後に養親の名字(離縁前の名字)を称する場合、「離縁の際に称していた氏を称する届」を届出する必要があります。
以下は、戸籍法の条文です。
ちなみに、「離縁の際に称していた氏を称する届」という名称は長いので、「戸籍法73条の2の届」とも呼ばれます。
届書は全国共通で、市区町村役場にて取得可能です。
3-1.届出人は離縁した養子(制限あり)
離縁の際に称していた氏を称する届の届出人は、離縁した養子です。
ただし、離縁する養子が15歳未満の場合、法定代理人は届出ができません。
以下は、通達です。
養子離縁の届出は法定代理人ができる点とは違うので、間違えないように注意してください。
3-2.届出先は本籍地または住所地
離縁の際に称していた氏を称する届の届出先は、届出人の本籍地または住所地の市区町村役場です。
どちらに出しても効力に違いはありません。ですが、添付書類に違いがあります。
届出人の住所地(本籍地以外)に出す場合は、戸籍謄本が添付書類です。本籍地が遠方なら、前もって戸籍謄本を請求しておきましょう。
4.養子離縁届と戸籍法73条の2の届を同時に提出
養子離縁届と離縁の際に称していた氏を称する届 (戸籍法73条の2の届)は、同時に提出可能です。
条文上は「縁組前の氏に復した者」と記載されていますが、実務上は養子離縁届と同時に提出できます。
以下は、大阪市のホームページです。
養子離縁届と同時に提出すると、新しい戸籍も現在の名字(養親の名字)で作成されます。
養親の名字を引き続き使用するのであれば、同時に提出する方が良いでしょう。
5.3ヶ月経過してから養親の名字を称したい
養子離縁の日から3ヶ月経過すると、離縁の際に称していた氏を称する届は提出できません。
理由があって養親の名字を称したい場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
以下は、戸籍法の条文です。
家庭裁判所がやむを得ない事由であると判断すれば、離縁前の名字に変更できます。
ただし、家庭裁判所の判断基準は厳しいので、認められない可能性も高いです。あくまでも、最後の手段として覚えておきましょう。
6.まとめ
今回の記事では「離縁後に養親の名字を称する」について説明しました。
養子縁組を解消すると、養子は縁組前の名字に戻ります。
ただし、2つの条件を満たすことで、養子は離縁前の名字を使用できます。
- 養子縁組の期間が7年以上
- 養子離縁の日から3ヶ月以内に届出
「養子離縁届」と「離縁の際に称していた氏を称する届」は同時に提出できるので、引き続き同じ名字を使用するなら、前もって準備しておきましょう。
養子離縁の日から3ヶ月経過すると、養親の名字を使用するのは難しいので、期間の経過には注意してください。