死後離縁の理由によっては、家庭裁判所の許可が得られないのはご存知でしょうか。
家庭裁判所は死後離縁の理由が、不純なものだと判断すると許可をしません。
つまり、死後離縁をするには、理由が不純ではないと説明する必要があります。
今回の記事では、死後離縁の理由について説明しているので、死後離縁を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.死後離縁には家庭裁判所の許可が必要
亡くなった人との養子縁組を解消するには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
家庭裁判所の許可を得ずに市役所等の窓口へ行っても、養子離縁届は受理されません。
第八百十一条
6 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
家庭裁判所は死後離縁許可申立書に記載された、死後離縁の理由および照会書の回答を元に許可の判断をします。
家庭裁判所に申立てをしたからといって、常に許可が得られるわけではありません。
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2.明らかに不純な理由でない限り許可される
死後離縁を許可するかどうかの判断基準は、理由が明らかに不純かどうかです。
つまり、死後離縁の理由が不純でなければ、家庭裁判所は許可をします。
不純に該当する典型例としては、以下が挙げられます。
養方の財産を相続したのに養方の者に対する扶養義務や祭祀を免れる目的がある
分かりやすく説明するなら、相続財産(利益)だけ取得して、扶養義務から免れるために養子縁組を解消するのは不純と判断されます。
重要な点は2つあります。
- 相続財産を取得したかどうか
- 亡くなった養方の家族関係
上記2つを家庭裁判所は知りたいはずなので、死後離縁許可申立書の理由欄に記載します。
3.理由の書き方は決まっていない
死後離縁の許可申立書には、死後に養子縁組を解消する理由を記載します。
理由の書き方は決まっていませんが、私が死後離縁の許可申立書を作成するときは、以下の3つを書くようにしています。
- 誰が養子縁組をしたのか
- 亡くなった養親(養子)の財産を相続したか
- 亡くなった養親(養子)の家族関係
3-1.誰が養子縁組をしたのか
1つ目は、誰が養子縁組をしたのかです。
成人してから自分で養子縁組をしたのか、未成年のときに親が代諾して養子縁組をしたのかです。
自分で養子縁組をしたのなら、養子縁組をした理由があるはずです。
それに対して、親が代諾して養子縁組をしているなら、実親と養親が話し合って養子縁組がされたのでしょう。
例えば、実母が再婚する際に、再婚相手と未成年の子どもが養子縁組をしているなら、以下のように書きます。
申立人は、実母の代諾により〇〇と養子縁組をしました。
*申立人=養子
3-2.亡くなった養親(養子)の財産を相続したのか
2つ目は、亡くなった養親(養子)の財産を相続したのかです。
当然ですが、養親が亡くなれば養子は相続人となります。
養子が死後離縁の申立てをする場合は、養親の相続財産を取得していなければ記載します。ちなみに、理由欄に記載しなくても、家庭裁判所から申立後に聞かれます。
例えば、相続放棄をしているなら、相続放棄していると記載します。
申立人は、亡〇〇の相続について相続放棄をしています。
相続財産を取得していなければ、死後離縁の理由が不純と判断される可能性は低いです。
3-3.亡くなった養親(養子)の家族関係
3つ目は、亡くなった養親(養子)の家族関係についてです。
死後離縁をすることにより、亡くなった養親(養子)の親族が不利になると、不純と判断される可能性はあります。
例えば、亡くなった養親に年老いた親がいれば、養子には扶養義務があります。あるいは、亡くなった養子に幼い子がいれば、養親には扶養義務があります。
亡くなった養親(養子)の家族と交流がなければ、素直に交流がないことを記載します。
4.財産を相続していると認められないのか?
亡くなった養親(養子)の財産を相続していると、死後離縁が認められないのか疑問に思われる人もいます。
家庭裁判所が判断することですが、財産を相続したからといって、死後離縁が認められないとは限りません。
なぜなら、死後離縁をする理由が不純でなければ、財産を相続していても問題ないはずです。
例えば、死後離縁をしなければ、養方の相続争いに巻き込まれる人もいるでしょう。関わり合いになりたくないので、死後離縁をするのは不純な理由ではないはずです。
あなたが死後離縁をする理由が、不純ではないことを家庭裁判所に説明しましょう。
5.さいごに
死後離縁をするには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
家庭裁判所が許可をするかの判断基準は、死後離縁の理由が不純かどうかです。
亡くなった養親(養子)の相続財産を取得しながら、扶養義務を免れるために死後離縁をするのは不純な理由といえます。
死後離縁許可の申立てをする場合は、死後離縁の理由が不純ではないことを家庭裁判所に説明しましょう。