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【法定後見と任意後見の違い】6つの項目を比較して説明

任意後見と法定後見の違い
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法定後見人と任意後見人は同じ後見人ですが、違う部分も多いのはご存知でしょうか。

例えば、法定後見人を選ぶのは家庭裁判所ですが、任意後見人を選ぶのは本人です。

ただし、どちらの後見にもメリット・デメリットがあり、人によって合う合わないがあります。どちらの後見が優れているという問題ではありません。

今回の記事では、法定後見と任意後見の違いを6つの項目で説明しているので、後見を利用する際の参考にしてください。

目次

  1. 法定後見人と任意後見人は誰が選ぶ
    1. 法定後見人は家庭裁判所が選ぶ
    2. 任意後見人は本人が契約で選ぶ
  2. 法定後見人と任意後見人の報酬
    1. 法定後見人の報酬額は家庭裁判所が決める
    2. 任意後見人の報酬額は契約で決める
  3. 法定後見人と任意後見人の就任時期
    1. 法定後見人は後見開始の審判確定時
    2. 任意後見人は任意後見監督人の選任時
  4. 法定後見人と任意後見人の監督人
    1. 成年後見監督人は家庭裁判所が任意に選任
    2. 任意後見監督人は法律により必ず選任
  5. 法定後見人と任意後見人の代理権
    1. 法定後見人の代理権は法律で定めている
    2. 任意後見人の代理権は契約で定める
  6. 法定後見人と任意後見人の取消権
    1. 法定後見人は取消権が認められる
    2. 任意後見人は取消権が認められない
  7. さいごに

1.法定後見人と任意後見人は誰が選ぶ

法定後見と任意後見の違い1つ目は、後見人を誰が選ぶかです。

  • 法定後見人は家庭裁判所が選ぶ
  • 任意後見人は本人が契約で選ぶ

法定後見と任意後見では、誰が後見人を選ぶかに違いがあります。

1-1.法定後見人は家庭裁判所が選ぶ

法定後見人を選ぶのは、申立人(家族等)ではなく家庭裁判所です。

後見人の選任申立てをする際に、後見人の候補者を推薦できますが、最終的には家庭裁判所が決めます。

例えば、家族を候補者として申立てをしても、専門家(弁護士・司法書士等)が選ばれることも少なくありません。

候補者(家族等)が選ばれなかったとしても、申立ての取り下げはできません。一度選任された後見人は、原則として終了するまで後見業務を行います。

1-2.任意後見人は本人が契約で選ぶ

任意後見人を選ぶのは、被後見人である本人自身です。

ただし、自由に選べるのではなく、任意後見受任者と任意後見契約を結んでおく必要があります。任意後見契約は公正証書で作成しなければ、有効に成立しません。

任意後見契約を結んだ後に、本人の判断能力が低下すると、任意後見受任者が任意後見人に就任します。

法定後見と任意後見の違い(選任者)

 

2.法定後見人と任意後見人の報酬

法定後見と任意後見の違い2つ目は、後見人の報酬です。

  • 法定後見人の報酬は家庭裁判所が決める
  • 任意後見人の報酬は契約で決める

法定後見と任意後見では、後見人の報酬が違います。

2-1.法定後見人の報酬額は家庭裁判所が決める

法定後見人の報酬額は、家庭裁判所が決めます。

具体的には、法定後見人が報酬付与の申立てをして、家庭裁判所が報酬額を決定します。

以下は、報酬額の目安です。

報酬額の目安
管理財産額 報酬額(月額)
1,000万円以下 2万円
1,000万円超
5,000万円以下
3万~4万円
5,000万円超 5万~6万円

法定後見人の報酬は請求しなければ付与されません。家族が後見人に就任しているなら、報酬を請求しないことも可能です。

ただし、専門家が後見人に就任している場合は、仕事なので報酬を請求します。

2-2.任意後見人の報酬額は契約で決める

任意後見人の報酬額は、任意後見契約で自由に決めれます。

したがって、家族を任意後見人にしている場合は、報酬額を0円にしている人もいます。

一方、家族以外(専門家等)を任意後見人にしている場合は、法定後見人の報酬額を目安にして決めているようです。

法定後見と任意後見の違い(報酬)

 

3.法定後見人と任意後見人の就任時期

法定後見と任意後見の違い3つ目は、後見人の就任時期です。

  • 法定後見人は後見開始の審判確定時
  • 任意後見人は任意後見監督人の選任時

法定後見と任意後見では、後見人の就任時期も違います。

3-1.法定後見人は後見開始の審判確定時

法定後見人の就任時期は、後見開始の審判が確定したときです。

本人の判断能力が低下していても、後見開始の申立てをしていなければ、法定後見人は就任しません。何もしなければ後見は開始しません。

法定後見人が必要になったら、後見開始の申立てをしましょう。

3-2.任意後見人は任意後見監督人の選任時

任意後見人の就任時期は、任意後見監督人が選任したときです。

任意後見契約の効力を発生させるには、本人の判断能力が低下した後に、任意後見監督人の選任申立てをする必要があります。

そして、任意後見監督人が選任されると、任意後見人も就任します。

法定後見と任意後見の違い(就任時期)

 

4.法定後見人と任意後見人の監督人

法定後見と任意後見の違い4つ目は、後見監督人の存在です。

  • 法定後見人の監督人は家庭裁判所が任意に選任する
  • 任意後見人の監督人は必ず選任される

法定後見と任意後見では、後見監督人の存在に違いがあります。

4-1.成年後見監督人は家庭裁判所が任意に選任

成年後見監督人を選任するかどうかは、家庭裁判所が事情を考慮して判断します。

  • 家族が後見人に就任する場合
  • 管理する財産が高額な場合

家庭裁判所が職権で選任するだけでなく、家族等の申立てにより選任することもあります。

成年後見監督人の業務などについては、下記の記事で詳しく説明しています。

4-2.任意後見監督人は法律により必ず選任

任意後見監督人が選任されなければ、任意後見契約の効力は発生しません。

したがって、任意後見人には必ず任意後見監督人が存在します。

報酬額の目安
管理財産額 報酬額(月額)
5,000万円以下 1万~2万円
5,000万円超 2万5,000~3万円

任意後見人の報酬は契約で0円にできますが、任意後見監督人の報酬は発生します。

法定後見と任意後見の違い(後見監督人)

 

5.法定後見人と任意後見人の代理権

法定後見と任意後見の違い5つ目は、代理権の範囲です。

  • 法定後見人の代理権は法律で定められた範囲
  • 任意後見人の代理権は契約で定めた範囲

法定後見人と任意後見人では、代理権の範囲が違うので注意してください。

5-1.法定後見人の代理権は法律で定めている

法定後見人の代理権は法律により定められています。

法定後見人の代理権は、本人の財産に関するすべての法律行為が対象です。
※婚姻や離婚などの身分行為は除く。

一般的な贈与や売買だけでなく、遺産分割や相続放棄も法定後見人が代理で行います。相続手続をする際は、法定後見人の有無が非常に重要です。

5-2.任意後見人の代理権は契約で定める

任意後見人の代理権は、任意後見契約で定めた範囲になります。

具体的には、任意後見契約書に添付する、代理権目録に記載された法律行為です。

代理権目録に記載されていなければ、どんなに重要な行為であっても代理できません。任意後見契約の内容を考える際は、代理権の漏れがないように注意してください。

法定後見と任意後見の違い(代理権)

 

6.法定後見人と任意後見人の取消権

法定後見と任意後見の違い6つ目は、後見人の取消権です。

  • 法定後見人は取消権が認められる
  • 任意後見人は取消権が認められない

法定後見人と任意後見人では、本人が行った法律行為の取消権にも違いがあります。

6-1.法定後見人は取消権が認められる

法定後見人は本人が行った法律行為について、日常生活に関する行為以外であれば、取り消すことができます。

例えば、本人が高額な商品を買った場合でも、法定後見人は取り消すことが可能です。

法定後見人が選任されていれば、本人を不利な法律行為から守ることができます。

6-2.任意後見人は取消権が認められない

任意後見人は法定後見人と違い、本人の法律行為を取り消すことができません。

例えば、本人が高額な商品を買った場合、任意後見人は取り消すことができないです。

任意後見人には取消権が認められないので、その他の対策で備えておく必要があります。

法定後見と任意後見の違い(取消権)

 

7.さいごに

今回の記事では「法定後見人と任意後見人の違い」について説明しました。

法定後見人と任意後見人は同じ後見人ですが、違う部分も多いです。

法定後見人と任意後見人の違い
法定後見人 任意後見人
誰が選ぶ 家庭裁判所 本人
報酬額 家庭裁判所
が決める
契約で決める
就任時期 後見開始の
審判確定時
任意後見監督人
の選任時
後見監督人 家庭裁判所が
任意で選任
法律により
必ず選任
代理権の範囲 法律で決まる 契約で決める
取消権 有り 無し

法定後見人と任意後見人のどちらにも、メリット・デメリットは存在します。

どちらが優れているではなく、あなたに合う方を選んでください。

ただし、任意後見契約は元気なうちしか結べないので、検討するなら早い方が良いでしょう。