あなたの後見人になるのは、法定後見人か任意後見人のどちらかです。同じ成年後見人ですが、思っているよりも違う部分があるはずです。
後見人の違いを知っておくことで、あなたと家族にとってもメリットがあります。
今回は下記の5つについて説明しています。
- 選任方法
- 報酬
- 後見人の就任時期
- 代理権の範囲
- 取消権
後見人が必要になってからでは手遅れになることもあるので、元気なうちに確認をしておいてください。
違う部分
1.後見人の選任方法
法定後見と任意後見では、誰が後見人を選ぶかで違いがあります。
1-1.法定後見人は家庭裁判所が選ぶ
法定後見では、家庭裁判所が後見人を選任します。
後見の申立てをする際に、家族を候補者とすることはできるのですが、専門家が後見人に選ばれることも少なくないです。
*専門家とは、弁護士・司法書士・社会福祉士等です。
家族が選ばれなかったとしても、後見の申立てを取り下げることはできません。一度選任された後見人は、原則として亡くなるまで後見業務を行います。
家庭裁判所の選任基準としては、「家族間で後見人の候補者に異論はないか」「本人の財産額」等から判断します。
1-2.任意後見人はあなたが選ぶ
任意後見では、あなたが後見人を選びます。
当事者間で任意後見契約を結ぶことで、あなたの判断能力が低下した後に後見人に就任してもらいます。
契約ですので誰を選ぶかは自由です。
ただし、契約を結べるのは、あなたの判断能力が低下する前です。
作成費用については『任意後見契約の費用』をご覧ください。
2.後見人の報酬額
後見人の報酬額も法定後見と任意後見で違いがあります。
2-1.専門家が就任すると報酬を請求される
法定後見人は家庭裁判所に報酬を請求することができます。現実的には、専門家が就任すると報酬は請求されます。
家族が後見人に選任された場合は、報酬を請求しないこともできます。
報酬額は事由に決めれるわけではなく、家庭裁判所が金額も判断します。
管理財産額 | 報酬額(月額) |
---|---|
1,000万円以下 | 2万円 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 3万円~4万円 |
5,000万円超 | 5万円~6万円 |
2-2.任意後見契約で報酬額を決める
後見人の報酬も任意後見契約で決めます。家族を後見人にする場合は、報酬額を0円にしていることが多いです。
専門家を後見人にする場合も自由に決めれるのですが、法定後見の報酬額を目安にしていることが多いです。
3.後見人の就任時期
後見人の就任時期も違います。
3‐1.後見開始の審判確定時
成年後見の申立てにより家庭裁判所の審判が確定し、後見人を選任すると法定後見が開始します。
3‐2.任意後見監督人の選任時
任意後見契約の効力が発生させるには、あなたの判断能力が低下した後に、任意後見監督人の選任申立てをする必要があります。
任意後見監督人が選任されることにより、任意後見人が就任します。
任意後見監督人が就任すると報酬が発生します。
管理財産額 | 報酬額(月額) |
---|---|
5,000万円以下 | 1万円~2万円 |
5,000万円超 | 2万5,000円~3万円 |
任意後見人の報酬は0円にすることもできますが、任意後見監督人の報酬は発生します。
4.後見人の代理権の範囲
後見人の代理権の範囲も違います。
4-1.法定後見は法律で定められている
法定後見の類型によって違うのですが、後見は財産に関するすべての法律行為となります。
*法定後見は後見・保佐・補助に分かれます。
3つの違いは『法定後見の3類型』にて説明しています。
4-2.任意後見契約で定めた範囲
任意後見人の代理権は、任意後見契約で定めた範囲だけです。
契約で定めた範囲のみになるので、漏れなく記載しておく必要があります。
5.取消権の有無
本人が行った法律行為の取消権にも違いがあります。
5-1.法定後見人には認められる
法定後見人は本人が行った法律行為について、日常生活に関する行為以外であれば、取り消すことができます。
*保佐人・補助人は除きます。
5-2.任意後見人には認められない
任意後見人には法定後見人とは異なり、取消権は認められていません。
したがって、本人が高額な品物を買ってしまった場合でも、任意後見人がその売買契約を取り消すことはできません。
6.まとめ
法定後見と任意後見には違う部分が複数あります。
法定後見人 | 任意後見人 | |
---|---|---|
選任方法 | 家庭裁判所が決める | 任意後見契約で決める |
報酬額 | 家庭裁判所が判断する | 任意後見契約で決める |
後見人の就任時期 | 後見開始の審判確定時 | 任意後見監督人の選任時 |
代理権の範囲 | 法律で決まっている | 任意後見契約で決める |
取消権 | 有り | 無し |
法定後見は法律ですべて定められているので、自由度は低いですが法律で守られています。一方、任意後見は契約ですべて定めるので、自由度は高いですが自分で守る必要があります。
メリット・デメリットはどちらの後見にもあるので、あなたの生活スタイルに合う方を選んでください。
ただし、任意後見契約は元気なうちしか結ぶことができないので、検討されている場合は早めに判断することをお勧めします。