任意後見人の代理権の範囲はご存知でしょうか。
任意後見人が代理できる行為は、代理権目録に記載された行為のみです。
代理権目録に記載されていなければ、どんなに必要な行為であっても代理することはできません。
今回の記事では、任意後見の代理権について説明しているので、任意後見契約を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.代理行為は契約書に記載された行為のみ
任意後見人が代理できる行為は、任意後見契約書の代理権目録に記載された行為のみです。
代理権目録に記載されていない行為は、どんなに必要な行為であっても代理することはできません。
ですので、任意後見契約を結ぶ前に、代理行為をしっかりと考えておく必要があります。
任意後見人に委任する代理行為は代理権目録に記載するのですが、代理権目録は2種類から選らぶ必要があります。
関連記事を読む『任意後見契約は公正証書で作成しなければ成立しない』
2.代理権目録の様式は2種類ある
公証人が任意後見契約書を作成する場合、代理行為の範囲を代理権目録に記載します。
代理権目録の様式は2種類あります。
- 第1号様式(チェック方式)
- 第2号様式(包括記載方式)
任意後見契約を結ぶ際は、1号様式または2号様式のどちらかを選ぶ必要があります。
2-1.第1号様式は代理行為にチェックを入れる
第1号様式の代理権目録は、用意されているリストの中から、必要な代理行為にチェックを入れるタイプです。
項目が細かく設定されている
以下は、第1号様式の一部です。
細かく項目が用意されているので、必要な項目にチェックを入れていきます。
第1号様式は細かすぎるのが欠点
第1号様式は代理権の範囲は明確になるのですが、項目が細かすぎて分かりにくいのが欠点です。
高齢の委任者が理解してチェックを入れるのは、困難だと思われます。
実際には、第2号様式を利用する方が多いでしょう。
2-2.第2号様式は代理行為を包括的に記載する
第2号様式の代理権目録は、代理行為を包括的に記載します。
以下は、第2号様式の例です。
代理権目録(任意後見契約)
1 不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項
2 金融機関との全ての取引に関する事項
3 ・・・
第1号様式のように細かく記載するのではなく、「金融機関との全ての取引に関する事項」のように包括的に記載します。
気を付ける点としては、包括的に記載すると曖昧になる部分もあるので、細かく記載する等の工夫も必要になります。
3.代理権目録に記載できない事項
任意後見契約書の代理権目録に記載できない事項もあります。
主な記載できない事項には、以下があります。
- 事実行為
- 死後事務
- 医療行為の同意
3-1.単なる事実行為は記載できない
間違えやすいのですが、療養看護のような事実行為を代理権目録に記載することはできません。
記載できるのは、療養看護に関する事務についてです。
例えば、介護施設との契約や支払いは記載できますが、介護行為を記載することはできません。
3-2.死後の事務は記載できない
委任者(本人)が亡くなった後の、葬儀費用の支払いや家財道具の処分は記載することができません。
死後事務については、任意後見契約とは別に死後事務委任契約を結ぶことになります。
任意後見契約と死後事務委任契約を一緒に結ぶ場合は、任意後見契約書の本文に記載することは可能です。
3-3.医療行為の同意は記載できない
医療契約や医療費の支払いについては記載できますが、医療行為の同意は記載することができません。
なぜなら、医療行為の同意や延命治療の拒絶については、他人に委任できないと考えられているからです。
延命治療の拒絶については、尊厳死宣言等の公正証書を別に作成することが可能です。
4.さいごに
任意後見人の代理権は、任意後見契約書の代理権目録に記載された行為のみです。
代理権目録に記載されていなければ、どんなに必要な行為であっても代理することはできません。
代理権目録は2種類あり、どちらかを選んで記載することになります。
- 第1号様式(チェック方式)
- 第2号様式(包括記載方式)
第1号様式は詳細で細かく分かれており、第2号様式は包括的に記載する方式となります。
任意後見契約の代理権目録には記載できない事項もあります。
- 事実行為
- 死後事務
- 医療行為の同意
上記のような事項は、代理権目録に記載できません。
任意後見契約を結ぶ際は、代理権目録に記載する代理行為が重要になりますので、漏れがないように気を付けてください。