亡くなった人の孫も遺産分割協議の参加者となる場合があります。
孫が祖父(祖母)の養子になっているや、子どもが先に亡くなり孫が代襲相続人になっているなど5つのケースです。
孫が遺産分割協議の参加者に該当すると、孫を除外した遺産分割協議は無効になります。
今回の記事では、孫が遺産分割協議に参加する場合について説明しているので、遺産分割協議の参考にしてください。
目次
1.孫が法定相続人なら遺産分割協議に参加
孫が祖父母の法定相続人として、遺産分割協議に参加するケースは2つあります。
- 孫が祖父母の養子
- 孫が代襲相続人
それぞれ説明していきます。
1-1.孫が祖父母と養子縁組を結んでいる
遺産分割協議に孫が参加するケース1つ目は、孫が養子になっているです。
養子は実子と同じく第1順位の相続人なので、孫が養子なら遺産分割協議の参加者となります。
孫が遺産分割協議で主張できる割合は、法定相続分の割合です。
【例題1】
亡くなった人の実子が2人で養子(孫)が1人の場合。
※配偶者は亡くなっている。
- 子ども:3分の1
- 子ども:3分の1
- 孫 :3分の1
相続人に配偶者がいないなら、子どもの人数で分割した割合です。
【例題2】
亡くなった人の実子が2人で養子(孫)が1人の場合。
※配偶者は生存している。
- 配偶者:2分の1(6分の3)
- 子ども:6分の1
- 子ども:6分の1
- 孫 :6分の1
相続人に配偶者がいるなら、2分の1を子どもの人数で分割した割合です。
孫を養子にするなら、実子の法定相続分が減る点に注意してください。実子に黙って孫を養子にすると、遺産分割協議で実子と孫が揉めやすいです。
関連記事を読む『孫と養子縁組を結ぶなら法定相続分の変更に注意』
1-2.子どもが先に亡くなり孫が代襲相続人
遺産分割協議に孫が参加するケース2つ目は、孫が代襲相続人になっているです。
亡くなった祖父母の子どもが、祖父母よりも先に亡くなっていると、孫が代襲相続人として遺産分割協議の参加者となります。
※死亡以外でも代襲相続は発生します。
孫が遺産分割協議で主張できる割合は、本来の相続人(孫の親)の相続分です。代襲相続人が複数いるなら、人数で分割した割合になります。
【例題1】
亡くなった人の子どもが3人で、1人が先に亡くなり孫が1人の場合。
- 子ども:3分の1
- 子ども:3分の1
- 孫 :3分の1
代襲相続人が1人であれば、先に亡くなった子どもの法定相続分と同じです。
【例題2】
亡くなった人の子どもが3人で、1人が先に亡くなり孫が2人の場合。
- 子ども:3分の1
- 子ども:3分の1
- 孫 :6分の1
- 孫 :6分の1
代襲相続人が2人であれば、先に亡くなった子どもの法定相続分の2分の1です。
孫が代襲相続人として遺産分割協議に参加するなら、法定相続分を間違えないように注意してください。
関連記事を読む『代襲相続により孫が代わりに相続する』
2.孫が第3者でも遺産分割協議に参加
孫が祖父母の相続人に該当しなくても、遺産分割協議に参加するケースは3つあります。
- 孫に一部包括遺贈している
- 孫が相続分を譲渡されている
- 子どもが遺産分割前に亡くなっている
それぞれ説明していきます。
2-1.孫が祖父母から一部包括遺贈を受けた
遺産分割協議に孫が参加するケース3つ目は、孫が包括受遺者になっているです。
亡くなった祖父母が遺言書で孫に一部包括遺贈していれば、孫は遺産分割協議の参加者となります。
- 一部包括遺贈
- 相続財産に対する割合(一部)を遺贈すること
孫が遺産分割協議で主張できる割合は、遺贈された割合です。
【例題】
亡くなった人の相続人が子ども2人で、孫に一部包括遺贈(2分の1)していた場合。
- 子ども:4分の1
- 子ども:4分の1
- 孫 :2分の1(4分の2)
孫は遺産分割協議で、包括遺贈された2分の1を主張できます。
一部包括遺贈にすると遺産分割協議が必要なので、孫に特定の財産を残したいなら、特定遺贈を検討しましょう。
関連記事を読む『包括遺贈の受遺者は遺産分割協議の参加者となる』
2-2.孫が相続人から相続分を譲渡された
遺産分割協議に孫が参加するケース4つ目は、孫が相続分の譲受者になっているです。
相続人は自己が有する相続分を、相続人以外に譲渡することができます。
孫が相続人でなくても、相続人から相続分の譲渡を受ければ、遺産分割協議に参加します。
孫が遺産分割協議で主張できる割合は、譲渡された相続分の割合です。
【例題】亡くなった人の相続人が子ども3人で、孫が子ども1人から相続分を譲渡された場合。
- 子ども:3分の1
- 子ども:3分の1
- 孫 :3分の1
孫が遺産分割協議で主張できる割合は、子どもから譲渡された3分の1です。
孫が相続分の譲渡を受けているなら、遺産分割協議の参加者なので注意してください。
2-3.子どもが遺産分割前に亡くなっている
遺産分割協議に孫が参加するケース5つ目は、孫が再転相続人になっているです。
亡くなった人の遺産分割をする前に相続人が亡くなると、相続人の相続人(再転相続人)が遺産分割協議に参加します。
亡くなった人の子どもが相続人であっても、遺産分割前に子どもが亡くなると、孫が再転相続人として遺産分割協議の参加者です。
孫(再転相続人)が遺産分割協議で主張できる割合は、亡くなった相続人の相続分を法定相続分で分割した割合になります。
【例題1】
亡くなった人の相続人が子ども3人で、遺産分割前に子ども1人が亡くなり、再転相続人(孫)が1人の場合。
- 子ども:3分の1
- 子ども:3分の1
- 孫 :3分の1
再転相続人が孫1人であれば、孫の主張できる割合は3分の1です。
【例題2】
亡くなった人の相続人が子ども3人で、遺産分割前に子ども1人が亡くなり、再転相続人(孫)が2人の場合。
- 子ども:3分の1
- 子ども:3分の1
- 孫 :6分の1
- 孫 :6分の1
再転相続人が孫2人であれば、孫の主張できる割合は各6分の1です。
遺産分割協議を後回しにすると、再転相続が発生しやすいので、早めに済ませておきましょう。
3.孫が未成年なら遺産分割協議は代理人が参加
孫が遺産分割協議の参加者に該当しても、未成年(18歳未満)であれば法定代理人が参加します。
一般的には、親権者または未成年後見人のどちらかです。
孫の代わりに親権者等が遺産分割協議に参加して、遺産分割協議書にも署名捺印します。
ただし、孫と親権者等が利益相反に該当する場合は、特別代理人を選任する必要があります。選任された特別代理人が遺産分割協議に参加します。
孫が遺産分割協議の参加者なら、孫の年齢にも気を付けてください。
関連記事を読む『遺産分割協議書には未成年者ではなく親権者が署名捺印』
4.曾孫も遺産分割協議の参加者になり得る
今回の記事で説明している5つのケースは、孫だけでなく曾孫にもすべて該当します。曾孫も該当すれば、遺産分割協議の参加者となります。
孫 | 曾孫 | |
養子 | ○ | ○ |
代襲相続人 | ○ | ○ |
包括受遺者 | ○ | ○ |
相続分の受贈者 | ○ | ○ |
再転相続人 | ○ | ○ |
曾孫が養子になっていれば相続人ですし、子どもと孫が先に亡くなっていれば曾孫が再代襲相続人です。
曾孫に一部包括遺贈できますし、曾孫に相続分を譲渡できます。遺産分割前に子どもと孫が亡くなると曾孫が再再転相続人になります。
曾孫が未成年なら親権者等が遺産分割協議に参加する点も孫と同じです。
曾孫であっても条件に該当すれば遺産分割協議の参加者なので、除外しないように注意してください。
5.さいごに
今回の記事では「遺産分割協議と孫」について説明しました。
原則として、亡くなった人の孫は遺産分割協議の参加者ではありません。
ですが、孫が以下に該当すると、遺産分割協議の参加者となります。
- 孫が養子
- 孫が代襲相続人
- 孫が包括受遺者
- 孫が相続分の受贈者
- 孫が再転相続人
孫が遺産分割協議に参加しなければ、遺産分割協議は成立しません。
孫も遺産分割協議の参加者になるケースは多いので、間違えて除外しないように気を付けてください。