孫と養子縁組をするには、孫の年齢によって手続きが少し違います。
孫が成年であれば養子縁組届を提出するだけです。
それに対して、孫が未成年であれば2つの要件に注意してください。
- 配偶者がいるなら一緒に養子縁組
- 孫が15歳未満なら法定代理人の承諾
孫を養子にすることで、実子の法定相続分に影響があります。
遺産分割協議でトラブルになる可能性もあるので、遺言書を書いておくなどの対策は必要です。
今回の記事では、孫との養子縁組について説明しているので、養子縁組をする際の参考にしてください。
1.祖父(祖母)と孫が養子縁組する手続き
祖父母と孫が養子縁組をする手続きは、通常の養子縁組と同じです。
ただし、孫が未成年だと法律上の要件を満たしたうえで、養子縁組届を提出します。
※孫が18歳未満の場合。
1-1.孫が未成年なら2つの要件

未成年の孫と養子縁組をするなら2つの要件に注意しましょう。
- 配偶者がいるなら一緒に養子縁組
- 孫が15歳未満なら法定代理人の承諾
ちなみに、孫と養子縁組を結ぶ場合は、未成年であっても家庭裁判所の許可は不要です。
関連記事を読む『未成年との養子縁組【原則として家庭裁判所の許可】』
配偶者がいるなら一緒に養子縁組
あなたに配偶者がいるなら、配偶者も孫と養子縁組をする必要があります。
※配偶者が意思表示できない場合は除く。
以下は、民法の条文です。
(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組) 第七百九十五条 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
配偶者が養子縁組をしたくないなら、未成年の孫と養子縁組できません。
どうしても養子にしたいなら、孫が成年になるのを待ってください。
※配偶者の同意は必要。
孫が15歳未満なら法定代理人の承諾
未成年の孫が15歳未満なら、養子縁組は孫の代わりに法定代理人が承諾します。
したがって、法定代理人が養子縁組に反対なら、孫は養子にできません。
どうしても養子にしたいなら、孫が15歳以上になるのを待ちましょう。
1-2.市役所等に養子縁組届を提出する

市役所等に養子縁組届を提出するのは、孫と養子縁組を結ぶ場合も同じです。
届出先の市役所等は、以下の3つから選べます。
- 養親の本籍地
- 養子の本籍地
- 届出人の所在地
届出人とは養親または養子(15歳未満なら法定代理人)です。
養子縁組届を市役所等で取得するなら、必要な書類も確認しておきましょう。
2.孫と養子縁組すると相続に影響
孫と養子縁組をすることにより、相続に影響があります。
非常に重要なので、必ず確認しておいてください。
2-1.縁組により法定相続分も変更

養子は第1順位の相続人なので、養子にした孫も法定相続人です。
そして、法定相続人が増えると、法定相続分の割合も変わります。
例えば、配偶者と実子2人(AとB)が法定相続人だった場合です。
養子縁組前の法定相続分は以下になります。
- 配偶者:2分の1
- 実子A:4分の1
- 実子B:4分の1
養子縁組後は以下のように変わります。
- 配偶者:2分の1
- 実子A:6分の1
- 実子B:6分の1
- 孫 :6分の1
孫を養子にすることで、実子の法定相続分は減ることになります。
孫と養子縁組を結ぶと、法定相続分に変更があるので注意してください。
2-2.養子と代襲相続人の立場で相続
あなたの実子が先に亡くなっていて、実子の子ども(孫)と養子縁組を結んだ場合です。
孫は代襲相続人と養子の両方で法定相続人となります。
例えば、配偶者と実子2人(AとB)が法定相続人で、実子Aが先に亡くなった場合です。
養子縁組前の法定相続分は以下になります。
- 配偶者:2分の1
- 孫 :4分の1
※実子Aの代襲相続人 - 実子B:4分の1
養子縁組後は以下のように変わります。
- 配偶者:2分の1
- 孫 :6分の2
- 実子B:6分の1
孫は代襲相続人(6分の1)と養子(6分の1)の両方で法定相続人となります。
亡くなった実子の子どもを養子にしているなら、法定相続分の計算に気をつけてください。
関連記事を読む『【孫が法定相続人】2つのケースを図や表を用いて簡単に説明』
3.孫と養子縁組するなら相続税に注意
相続税対策として、孫を養子にする人もいます。
なぜなら、法定代理人の人数が増えると、相続税が減少するケースが多いからです。
3-1.基礎控除が増えるとは限らない

孫を養子にすると法定相続人の人数変わるので、相続税の基礎控除額も変わります。
ただし、実子の有無や養子の人数によっては、孫を養子にしても基礎控除額は増えません。
なぜなら、基礎控除額の計算に含む養子の人数は、相続税法により制限されているからです。
以下は、相続税法の条文。
(遺産に係る基礎控除)
第十五条 (省略)
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人
二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人
基礎控除額の計算に含む養子の人数は、以下のようになります。
- 被相続人に実子がいるなら1人まで
- 被相続人に実子がいないなら2人まで
すでに養子が複数人いる場合は、孫を養子にしても基礎控除額は増えません。
関連記事を読む『養子は基礎控除を計算する際に人数制限があるので注意』
3-2.相続税が2割加算される

亡くなった人の配偶者や一親等の血族以外が相続財産を受け取ると、相続税が2割加算されます。
養子は一親等の血族なのですが、孫を養子にしている場合は2割加算の対象です。
以下は、国税庁のウェブサイト。
ただし、被相続人の養子となっている被相続人の孫は、被相続続人の子が相続開始前に死亡したときや相続権を失ったためその孫が代襲して相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。
※代襲相続人を兼ねている場合は除く。
孫 | 2割加算 |
---|---|
孫(相続人以外) | 加算 |
孫が代襲相続人 | ー |
孫が養子 | 加算 |
孫が代襲相続人と 養子を兼ねる | ー |
孫が相続財産を受け取る場合、相続税の2割加算に注意してください。
4.孫との養子縁組にもデメリットはある

孫との養子縁組を検討しているなら、デメリットについても知っておいてください。
どんな制度にもメリット・デメリットがあります。孫との養子縁組も例外ではありません。
- 他の相続人とトラブルの可能性
- 養子にも遺留分が発生する
- 縁組の解消には孫の同意も必要
上記のデメリットを理解したうえで、縁組を検討してください。
4-1.他の相続人とトラブルの可能性
孫を養子にすると、他の相続人とトラブルになる可能性があります。
なぜかというと、法定相続人が増えると、他の相続人の相続分は減るからです。
前もって親族内で話し合っているなら別ですが、知らなければ揉めることもあります。
相続人が複数人存在するなら、遺言書を書いておき遺産分割協議を不要にしましょう。
関連記事を読む『遺産分割協議に孫が参加するケースは5つある』
4-2.養子にした孫にも遺留分が発生

相続税対策で孫を養子にした場合は、遺留分に気を付けてください。
養子(孫)にも遺留分があるので、遺言書を残していても遺留分を請求される恐れがあります。
孫を養子にするなら、法定相続分だけでなく遺留分にも注意してください。
関連記事を読む『遺留分が孫に発生するケースは2つある』
4-3.縁組を解消するには孫の同意が必要

養子縁組を成立させるのは簡単ですが、解消には問題もあります。
基本的に、養子縁組を解消するには、相手方(孫)の同意が必要です。孫が養子縁組の解消に反対であれば、祖父母だけでは解消できません。
孫が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に離縁調停の申立てができます。
関連記事を読む『離縁調停とは調停委員を交えて話し合いにより離縁すること』
5.まとめ
今回の記事では「孫と養子縁組」について説明しました。
養子縁組をする孫が未成年であれば、2つの要件に注意してください。
- 配偶者がいるなら一緒に養子縁組
- 未成年の孫が15歳未満なら法定代理人の承諾
一方、孫が成人しているなら、市役所等に養子縁組届を提出するだけです。
孫を養子にすることで、法定相続分が変化します。
実子の法定相続分が減るので、トラブルを防ぐためにも遺言書を書いておきましょう。
一度成立した養子縁組を解消するには、孫の同意も必要なので注意してください。