現在の法律では不在者財産管理人が金銭を供託できるか不明です。
そのため、不在者の金銭が無くなるまで、不在者財産管理人の業務が続いています。
ですが、法改正により供託の規定が新たに設けられるので、不在者財産管理人も金銭を供託できるようになります。
法律の施行は令和5年4月1日になりますが、不在者財産管理人と供託について前もって確認しておきましょう。
目次
1.現在の法律では不在者財産管理人が供託できるか不明
まず初めに、現在の法律では不在者財産管理人が、不在者の金銭を供託できるのか不明になっています。
なぜなら、法律で不在者財産管理人の供託について規定されていないからです。
一般的には、不在者の行方が分かるまで、不在者財産管理人の報酬に財産(金銭)が充当され続けます。
不在者の財産を管理するために不在者財産管理人を選任しているのに、結果として財産を減らす存在になっているのです。
不在者の財産(金銭)を供託できれば、財産管理する必要がないので管理人も不要となります。不在者財産管理人が不要になれば、報酬を支払う必要もありません。
上記の問題を解決するため、家事事件手続法を改正して、不在者財産管理人と供託について新たな規定が設けられます。
関連記事を読む『不在者財産管理人の法律【民法25条から民法29条】』
2.不在者財産管理人の供託について規定が設けられる
家事事件手続法の改正により、不在者財産管理人は金銭を供託できるようになります。
ただし、改正家事事件手続法は令和5年4月1日施行です。
- 施行
- 成立した法令の効力を発生させること
以下は、改正後(令和5年4月1日施行)の家事事件手続法になります。
改正後の家事事件手続法では、不在者財産管理人が金銭を供託できると明記されています。
2-1.遺産分割や不動産売却等により金銭が生じる
不在者の財産に金銭が生じるケースとしては、主に以下の2つがあります。
- 遺産分割協議により金銭を相続
- 不動産売却により金銭を取得
遺産分割協議や不動産売却により金銭が生じたときは、不在者のために金銭を供託できます。
司法書士から一言遺産分割協議や不動産売却は選任申立の理由としても多いです。
2-2.不在者の金銭は供託所に供託できる
不在者の金銭をどこに供託するかというと、家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託できます。
詳しい供託の手順については、法改正後に追加で記載しますのでお待ちください。
3.供託により管理財産が無くなれば業務終了
不在者財産管理人の終了事由は決まっています。
- 不在者が見つかる
- 財産管理人が選任された
- 管理財産が無くなった
- 不在者の死亡が確認された
- 不在者に失踪宣告がされた
上記のどれかに該当すると、不在者財産管理人の業務は終了します。
改正後の家事事件手続法では、供託により管理財産が無くなれば、不在者財産管理人の業務は終了となります。
以下は、改正後(令和5年4月1日施行)の家事事件手続法です。
例えば、遺産分割協議のために不在者財産管理人を選任したとします。不在者が金銭だけを相続した場合、遺産分割協議後に金銭を供託すれば業務は終了となります。
法改正前であれば、相続した金銭が実際に無くなるまで、不在者財産管理人の業務は続いていました。
不在者の金銭が供託できるようになれば、不在者財産管理人の業務も短くなります。業務が短くなれば支払う報酬も少なくなるので、予納金の額も少なくなる可能性があります。
※不在者の財産が少ない場合は予納金で補っています。
関連記事を読む『不在者財産管理人の終了はいつなのか|5つの事由を知っておこう』
4.さいごに
家事事件手続法の改正により、不在者財産管理人が不在者の金銭を供託できるようになります。
ただし、実際に供託できるようになるのは、令和5年4月1日からです。
不在者の金銭を供託して管理財産が無くなれば、不在者財産管理人の業務は終了となります。不在者財産管理人の業務期間が短くなれば、不在者の財産も残りやすいです。
令和5年4月1日からは、不在者財産管理人の金銭管理が大きく変わります。
不在者財産管理人の選任を検討しているなら、法改正後の規定も知っておきましょう。