原則として、不在者財産管理人は辞任できませんが、辞める方法は2つあります。
- 不在者財産管理人の取消し
- 不在者財産管理人の改任
不在者財産管理人の終了事由に該当しているなら、選任の取消しを請求してください。
一方、終了事由に該当していない場合は、改任の請求を検討してください。
今回の記事では、不在者財産管理人の辞任について説明しているので、辞めたい人は参考にしてください。
1.原則として不在者財産管理人は辞任できない
申立ての目的が達成できたので、不在者財産管理人を辞めたいと考える人もいます。
遺産分割協議が成立したので辞めたい
不動産が売却できたので辞めたい
ですが、不在者財産管理人の辞任は、原則として認められません。
なぜなら、不在者財産管理人が自由に辞任できると、不在者の財産を管理する人がいなくなるからです。
不在者の財産を保存・管理するのが目的なので、申立人の目的が達成できても仕事は続きます。
どうしても辞めたい場合は、以下の方法を検討してください。
- 不在者財産管理人の取消し
- 不在者財産管理人の改任
管理する財産の有無によって、辞める方法が違います。
2.不在者財産管理人の選任を取り消す
1つ目の辞める方法は、不在者財産管理人の選任取消しです。
不在者財産管理人の終了事由に該当しているなら、家庭裁判所に選任取消しを請求してください。
以下は、家事事件手続法の条文です。
不在者の財産管理を継続する必要がなければ、不在者財産管理人の選任は取消しになります。
ただし、不在者財産管理人の終了事由は限られるので、あなたのケースに該当するか確認してください。
2-1.不在者財産管理人の終了事由は限られる
不在者財産管理人の主な終了事由は、以下になります。
- 不在者が財産を管理できる
- 委任管理人が選任された
- 管理する財産がなくなった
- 不在者の死亡が確認された
- 不在者に失踪宣告がされた
不在者が見つかれば不在者財産管理人は終了ですし、管理する財産がなくなった場合も終了になります。
また、不在者の死亡が確認されたり、失踪宣告により死亡とみなされると、相続人の財産になるので終了となります。
不在者財産管理人の終了事由に該当するなら、辞めることができます。
関連記事を読む『不在者財産管理人の終了はいつなのか|5つの事由を知っておこう 』
2-2.遺産分割協議の成立や不動産売却では終了しない
原則として、「遺産分割協議の成立」や「不在者の不動産売却」では、終了事由に該当しません。
なぜなら、管理すべき不在者の財産が存在するからです。
【遺産分割協議】
被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男(不在者)
相続財産|定期預金(1,200万円)
分割方法|法定相続分で分割
遺産分割協議により三男(不在者)は400万円を取得するので、不在者財産管理人は400万円を管理する必要があります。
【不動産売却】
所有者 |夫(不在者)
売却金額|500万円
売却理由|配偶者(妻)の生活費を捻出
不動産の売却により夫(不在者)は500万円を取得するので、不在者財産管理人は500万円を管理する必要があります。
申立人の目的が達成できても、終了事由に該当するとは限らないので、申立前に確認しておいてください。
終了事由に該当しない場合は、2つ目の方法を検討しましょう。
3.不在者財産管理人の辞任ではなく改任
2つ目の辞める方法は、不在者財産管理人の改任です。
不在者財産管理人の終了事由に該当しない場合は、家庭裁判所への改任請求を検討してください。
以下は、家事事件手続法の条文です。
家庭裁判所が現在の不在者財産管理人を不適当だと判断すれば、新しい不在者財産管理人を選任します。
つまり、あなたが不適当だと家庭裁判所に判断してもらう必要があります。
自分は不在者財産管理人に相応しくありません
別の人を不在者財産管理人に選任します
3-1.家庭裁判所に上申書を提出する
不在者財産管理人を続けれない理由があれば、上申書にその旨を記載して提出してください。
仕事で韓国に転勤が決まりました。
不在者財産管理人の職務を継続することが難しいので、改任の手続きを求めます。
体調を崩して入院しており、来月には手術の予定があります。
不在者財産管理人の職務を継続することが難しいので、改任の手続きを求めます。
あくまでも、やむを得ない事情が必要なので、面倒だから辞めたいは理由にならないです。
家庭裁判所に改任を求めるなら、理由を考えておきましょう。
3-2.親族や専門家を候補者として推薦
現在の不在者財産管理人が親族であれば、別の親族や専門家を候補者として推薦できます。
ただし、候補者が選ばれるとは限りません。
選任申立時は候補者が選ばれた場合でも、改任時は候補者以外を選ぶかもしれません。改任請求の理由によっては、親族が避けられる可能性もあります。
候補者を推薦するなら改任請求の前に、家庭裁判所と話し合っておきましょう。
関連記事を読む『不在者財産管理人に推薦した候補者は選ばれるのか? 』
3-3.新しい不在者財産管理人が選任される
家庭裁判所が改任請求を認めると、新しい不在者財産管理人が選任されます。
管理財産を引き渡す必要があるので、保管物や資料等を準備しておいてください。
新しい不在者財産管理人への引継ぎが終われば、管理人としての仕事は終了です。
4.まとめ
今回の記事では「不在者財産管理人の辞任」について説明しました。
原則として、不在者財産管理人は辞任できません。自由に辞めれると、不在者の財産管理に支障があるからです。
ただし、不在者財産管理人が辞める方法は2つあります。
- 不在者財産管理人の取消し
- 不在者財産管理人の改任
不在者財産管理人の終了事由に該当しているなら、選任取消しを請求してください。
一方、終了事由に該当しない場合は、改任を請求しましょう。新しい不在者財産管理人が選任されます。
親族を不在者財産管理人にする場合は、自由に辞任できない旨を説明しておきましょう。