不在者財産管理人が辞任するなら方法は取消しと改任の2つ

不在者財産管理人の辞任
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原則として、不在者財産管理人は辞任できませんが、辞める方法は2つあります。

  • 不在者財産管理人の取消し
  • 不在者財産管理人の改任

不在者財産管理人の終了事由に該当しているなら、選任の取消しを請求してください。

一方、終了事由に該当していない場合は、改任の請求を検討してください。

今回の記事では、不在者財産管理人の辞任について説明しているので、辞めたい人は参考にしてください。

目次

1.原則として不在者財産管理人は辞任できない

申立ての目的が達成できたので、不在者財産管理人を辞めたいと考える人もいます。

管理人

遺産分割協議が成立したので辞めたい

管理人

不動産が売却できたので辞めたい

ですが、不在者財産管理人の辞任は、原則として認められません。

辞任

自らの意思で不在者財産管理人を辞めること

なぜなら、不在者財産管理人が自由に辞任できると、不在者の財産を管理する人がいなくなるからです。

不在者の財産を保存・管理するのが目的なので、申立人の目的が達成できても仕事は続きます。

どうしても辞めたい場合は、以下の方法を検討してください。

  • 不在者財産管理人の取消し
  • 不在者財産管理人の改任

管理する財産の有無によって、辞める方法が違います。

2.不在者財産管理人の選任を取り消す

不在者財産管理人の選任取消し

1つ目の辞める方法は、不在者財産管理人の選任取消しです。

不在者財産管理人の終了事由に該当しているなら、家庭裁判所に選任取消しを請求してください。

以下は、家事事件手続法の条文です。

(処分の取消し) 第百四十七条 家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったとき(家庭裁判所が選任した管理人が管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。
出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法147条)

不在者の財産管理を継続する必要がなければ、不在者財産管理人の選任は取消しになります。

ただし、不在者財産管理人の終了事由は限られるので、あなたのケースに該当するか確認してください。

2-1.不在者財産管理人の終了事由は限られる

不在者財産管理人の終了事由

不在者財産管理人の主な終了事由は、以下になります。

  • 不在者が財産を管理できる
  • 委任管理人が選任された
  • 管理する財産がなくなった
  • 不在者の死亡が確認された
  • 不在者に失踪宣告がされた

不在者が見つかれば不在者財産管理人は終了ですし、管理する財産がなくなった場合も終了になります。

また、不在者の死亡が確認されたり、失踪宣告により死亡とみなされると、相続人の財産になるので終了となります。

不在者財産管理人の終了事由に該当するなら、辞めることができます。

2-2.遺産分割協議の成立や不動産売却では終了しない

申立目的を達成しても不在者財産管理人の仕事は続く

原則として、「遺産分割協議の成立」や「不在者の不動産売却」では、終了事由に該当しません。

なぜなら、管理すべき不在者の財産が存在するからです。

【遺産分割協議】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男(不在者)
相続財産|定期預金(1,200万円)
分割方法|法定相続分で分割

遺産分割協議により三男(不在者)は400万円を取得するので、不在者財産管理人は400万円を管理する必要があります。

【不動産売却】

所有者 |夫(不在者)
売却金額|500万円
売却理由|配偶者(妻)の生活費を捻出

不動産の売却により夫(不在者)は500万円を取得するので、不在者財産管理人は500万円を管理する必要があります。

申立人の目的が達成できても、終了事由に該当するとは限らないので、申立前に確認しておいてください。

終了事由に該当しない場合は、2つ目の方法を検討しましょう。

3.不在者財産管理人の辞任ではなく改任

不在者財産管理人の改任

2つ目の辞める方法は、不在者財産管理人の改任です。

不在者財産管理人の終了事由に該当しない場合は、家庭裁判所への改任請求を検討してください。

改任

現在の管理人を退任させて、新しい管理人を選任する

以下は、家事事件手続法の条文です。

(管理人の改任等)
第百四十六条 家庭裁判所は、いつでも、民法第二十五条第一項の規定により選任し、又は同法第二十六条の規定により改任した管理人を改任することができる。
出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法146条1項)

家庭裁判所が現在の不在者財産管理人を不適当だと判断すれば、新しい不在者財産管理人を選任します。

つまり、あなたが不適当だと家庭裁判所に判断してもらう必要があります。

管理人

自分は不在者財産管理人に相応しくありません

家庭裁判所

別の人を不在者財産管理人に選任します

3-1.家庭裁判所に上申書を提出する

不在者財産管理人を続けれない理由があれば、上申書にその旨を記載して提出してください。

仕事で韓国に転勤が決まりました。

不在者財産管理人の職務を継続することが難しいので、改任の手続きを求めます。

体調を崩して入院しており、来月には手術の予定があります。

不在者財産管理人の職務を継続することが難しいので、改任の手続きを求めます。

あくまでも、やむを得ない事情が必要なので、面倒だから辞めたいは理由にならないです。

家庭裁判所に改任を求めるなら、理由を考えておきましょう。

司法書士から一言辞める理由が何であれ、最終的には改任されるはずです。

3-2.親族や専門家を候補者として推薦

現在の不在者財産管理人が親族であれば、別の親族や専門家を候補者として推薦できます。

ただし、候補者が選ばれるとは限りません。

選任申立時は候補者が選ばれた場合でも、改任時は候補者以外を選ぶかもしれません。改任請求の理由によっては、親族が避けられる可能性もあります。

候補者を推薦するなら改任請求の前に、家庭裁判所と話し合っておきましょう。

3-3.新しい不在者財産管理人が選任される

家庭裁判所が改任請求を認めると、新しい不在者財産管理人が選任されます。

管理財産を引き渡す必要があるので、保管物や資料等を準備しておいてください。

新しい不在者財産管理人への引継ぎが終われば、管理人としての仕事は終了です。

4.まとめ

不在者財産管理人を辞める方法は2つ

今回の記事では「不在者財産管理人の辞任」について説明しました。

原則として、不在者財産管理人は辞任できません。自由に辞めれると、不在者の財産管理に支障があるからです。

ただし、不在者財産管理人が辞める方法は2つあります。

  • 不在者財産管理人の取消し
  • 不在者財産管理人の改任

不在者財産管理人の終了事由に該当しているなら、選任取消しを請求してください。

一方、終了事由に該当しない場合は、改任を請求しましょう。新しい不在者財産管理人が選任されます。

親族を不在者財産管理人にする場合は、自由に辞任できない旨を説明しておきましょう。

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