不在者財産管理人に関することも民法で定められています。
具体的には、民法25条から民法29条までが該当条文です。
- 民法25条|不在者の財産管理
- 民法26条|委任財産管理人の改任
- 民法27条|不在者財産管理人の職務
- 民法28条|不在者財産管理人の権限
- 民法29条|不在者財産管理人の担保及び報酬
不在者財産管理人の選任要件や権限も、民法により定められています。
今回の記事では、不在者財産管理人と民法の条文について説明しているので、一度は目を通しておきましょう。
\無料相談/
\不在者の代理人/
不在者の財産管理(民法25条)
![民法25条](https://souzoku-mikachi.com/wp-content/uploads/2023/11/民法25条.png)
民法25条では、不在者の財産管理について定めています。
以下は、民法の条文です。
(不在者の財産の管理)
第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
簡単に説明するなら、どのような状態であれば、不在者財産管理人を選任できるか書いています。
関連記事を読む『不在者財産管理人の選任申立て【手続きには数ヶ月かかる】』
不在者財産管理人の選任要件(民法25条1項)
不在者財産管理人を選任するには、3つの要件を満たす必要があります。
- 行方不明、かつ、容易に帰る見込みがない
- 委任財産管理人を置いていない
- 利害関係人等からの申立て
それぞれ簡単に説明します。
①行方不明、かつ、容易に帰る見込みがない
民法25条では従来の住所(居所)を去った者としか記載されていませんが、容易に帰る見込みがないという要件も必要になります。
例えば、海外に半年ぐらい旅行に行くと言い残していれば、所在不明であっても不在者財産管理人を選任するのは難しいです。少なくとも半年が経過するまでは、帰ってくる見込みがあります。
不在者財産管理人の選任要件に、不在者の生死不明は含まれていません。
②委任財産管理人を置いていない
不在者であっても、委任財産管理人がいれば申立てはできません。
なぜなら、本人から委任を受けた管理人がいれば、委任財産管理人が手続きをすれば済むからです。
③利害関係人等からの選任申立て
不在者がいても利害関係人から請求(申立て)がなければ、不在者財産管理人は選任されません。
例えば、共同相続人の1人が不在者だった場合。他の相続人は遺産分割協議をするため、不在者財産管理人の選任申立てができます。
不在者財産管理人が必要であれば、選任申立てをしましょう。
関連記事を読む『不在者財産管理人の利害関係人に該当するのは誰なのか? 』
委任財産管理人を選任したら取消し(民法25条2項)
不在者財産管理人の選任後に、本人が委任財産管理人を置くことも可能です。
委任財産管理人が選任されたら、請求により不在者財産管理人の選任を取消します。
ただし、実際には本人の行方が分かった時点で、不在者財産管理人を終了させるはずです。
委任財産管理人の改任(民法26条)
![民法26条](https://souzoku-mikachi.com/wp-content/uploads/2023/11/民法26条.png)
民法26条では、委任財産管理人の改任について定めています。
以下は、民法の条文です。
(管理人の改任)
第二十六条 不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
不在者が委任財産管理人を置いていれば、代理人として手続きを行います。
ただし、不在者の生死が不明であれば、利害関係人は家庭裁判所に改任を請求できます。
![管理人の改任](https://souzoku-mikachi.com/wp-content/uploads/2023/11/管理人の改任.png)
不在者の生死が不明のまま、委任財産管理人が管理行為を続けると問題も発生します。
そのため、利害関係人は家庭裁判所に管理人の改任を請求できます。
不在者財産管理人の職務(民法27条)
![民法27条](https://souzoku-mikachi.com/wp-content/uploads/2023/11/民法27条.png)
民法27条では、不在者財産管理人の職務について定めています。
以下は、民法の条文です。
(管理人の職務)
第二十七条 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
民法27条1項では財産目録の作成、民法27条3項では処分命令について定めています。
※民法27条2項は委任財産管理人の規定。
不在者の財産目録を作成(民法27条1項)
家庭裁判所に選任された不在者財産管理人は、不在者の財産目録を作成する必要があります。
財産目録の作成費用は、不在者の財産から支払います。
不在者財産管理人に処分の命令(民法27条3項)
家庭裁判所は不在者財産管理人に対して、財産保存に必要な処分を命令できます。
どのような処分命令があるかは、不在者の財産によって違います。
不在者財産管理人の権限(民法28条)
![民法28条](https://souzoku-mikachi.com/wp-content/uploads/2023/11/民法28条.png)
民法28条では、不在者財産管理人の権限について定めています。
以下は、民法の条文です。
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。第百三条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
不在者財産管理人の権限は限られており、法律で定められた行為しかできません。
不在者財産管理人が民法103条(保存行為・管理行為)以外の行為をするには、家庭裁判所の許可が必要になります。
主な権限外行為には以下があります。
家庭裁判所の許可を得るには、不在者財産管理人の権限外行為の申立てが必要です。
関連記事を読む『不在者財産管理人の権限外行為許可とは?』
不在者財産管理人の担保提供及び報酬(民法29条)
![民法29条](https://souzoku-mikachi.com/wp-content/uploads/2023/11/民法29条.png)
民法29条では、不在者財産管理人の担保提供と報酬について定めています。
以下は、民法の条文です。
(管理人の担保提供及び報酬)
第二十九条 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
民法29条1項では担保提供、民法29条2項では報酬を定めています。
不在者財産管理人の担保提供(民法29条1項)
家庭裁判所は不在者財産管理人に担保を立てさせることができます。
ただし、実際に担保提供したという事例を知らないので、どのような状況であれば担保提供するのか分からないです。
ちなみに、家事事件手続法には管理人の不動産等に抵当権(担保)を設定する際の規定があります。
不在者財産管理人の報酬(民法29条2項)
家庭裁判所は不在者の財産から、不在者財産管理人に報酬を与えることができます。
民法の条文には「与えることができる」と記載されていますが、報酬は不在者財産管理人が請求しなければ支払われません。
報酬が必要な場合は、忘れずに報酬付与の申立てをしてください。
関連記事を読む『不在者財産管理人の報酬は不在者の財産から支払われる』
まとめ
今回の記事では「不在者財産管理人と民法の条文」について説明しました。
不在者財産管理人に関することは、民法25条~29条に定められています。
- 民法25条|不在者の財産管理
- 民法26条|委任財産管理人の改任
- 民法27条|不在者財産管理人の職務
- 民法28条|不在者財産管理人の権限
- 民法29条|不在者財産管理人の担保及び報酬
不在者財産管理人の職務や権限も条文に記載されているので、申立てを検討しているなら一度は目を通しておきましょう。