不在者財産管理人に関することも民法で定められています。
具体的には、民法25条から民法29条までが該当条文です。
日常生活で民法を確認することは少ないと思いますが、不在者財産管理人の選任を検討しているなら一度は目を通しておきましょう。
目次
不在者の財産管理(民法25条)
民法25条では、不在者の財産管理について定めています。
簡単に説明するなら、どのような状態であれば、不在者財産管理人を選任できるかが決められています。
以下は、民法の条文です。
(不在者の財産の管理)
第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
不在者財産管理人を選任するには2つの要件を満たす必要があります。
- 行方不明、かつ、容易に帰る見込みがない
- 委任管理人を置いていない
民法25条では従来の住所(居所)を去った者としか記載されていませんが、容易に帰る見込みがないという要件も必要になります。
例えば、海外に半年ぐらい旅行に行くと言い残していれば、所在不明であっても不在者財産管理人を選任するのは難しいです。少なくとも半年が経過するまでは、帰ってくる見込みがあります。
また、所在不明であっても、委任財産管理人がいれば申立てはできません。本人から委任を受けた管理人がいるのであれば、委任財産管理人が手続きをすればいいからです。
関連記事を読む『不在者財産管理人の選任申立て【手続きには数ヶ月かかる】』
委任財産管理人の改任(民法26条)
民法26条では、委任財産管理人の改任について定めています。
不在者が委任財産管理人を置いていれば、代理人として手続きを行ってくれます。
ただし、不在者の生死が明らかでなければ、利害関係人は家庭裁判所に改任を請求できます。
- 改任
- 委任管理人を解任して不在者財産管理人を選任する
以下は、民法の条文です。
(管理人の改任)
第二十六条 不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
不在者の生死が不明のまま、委任財産管理人が代理行為を続けると問題も発生します。
そのため、利害関係人は家庭裁判所に管理人の改任を請求できます。
不在者財産管理人の職務(民法27条)
民法27条では、不在者財産管理人の職務について定めています。
家庭裁判所に選任された不在者財産管理人は、不在者の財産目録を作成する必要があります。
以下は、民法の条文です。
(管理人の職務)
第二十七条 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
不在者の生死が明らかでない場合、家庭裁判所は委任財産管理人に対しても財産目録の作成を命ずることができます。
不在者財産管理人の権限(民法28条)
民法28条では、不在者財産管理人の権限について定めています。
不在者財産管理人は何でもできるわけではなく、法律で決められた行為しかできません。
以下は、民法の条文です。
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
不在者財産管理人が民法103条(保存行為・管理行為)以外の行為をするには、家庭裁判所の許可が必要になります。
主な権限外行為には以下があります。
家庭裁判所の許可を得るには、不在者財産管理人の権限外行為の申立てをします。
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不在者財産管理人の担保提供及び報酬(民法29条)
民法29条では、不在者財産管理人の担保提供と報酬について定めています。
以下は、民法の条文です。
(管理人の担保提供及び報酬)
第二十九条 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
家庭裁判所は不在者財産管理人に担保を立てさせることができます。
ただし、実際に担保提供したという事例を知らないので、どのような状況であれば担保提供するのか分からないです。
ちなみに、家事事件手続法には管理人の不動産等に抵当権(担保)を設定する際の規定があります。
不在者財産管理人の報酬(民法29条2項)
家庭裁判所は不在者財産から、不在者財産管理人に報酬を与えることができます。
間違えやすいのですが、報酬は不在者財産管理人が請求しなければ支払われません。
報酬を請求する場合は、家庭裁判所に報酬付与の申立てをしてください。
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さいごに
不在者財産管理人に関することは、民法により定められています。
民法25条から29条までが不在者財産管理人に関する部分です。
不在者財産管理人の職務や権限も定められているので、選任を検討しているなら一度は目を通しておきましょう。