不在者が財産管理人を置いていない場合、利害関係人は申立てができます。
利害には不在者の利益だけでなく、自分の利益が害される場合も含まれます。
ただし、不在者財産管理人が選任されても、利害関係人の要望が認められるかは別問題なので注意してください。
今回の記事では、不在者の利害関係人について説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。
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1.不在者財産に利害関係があれば申立人
不在者財産管理人の選任申立てができるのは、「利害関係人」と「検察官」のみです。
※検察官の説明は省略。
以下は、民法の条文です。
請求(申立て)がなければ、不在者財産管理人は選任されません。
1-1.申立てには法律上の利害関係が必要
条文には「利害関係人」としか記載されていませんが、法律上の利害関係が必要です。
したがって、不在者の友人や知人では、不在者財産管理人の申立人になれません。
例えば、不在者の家が放置されていても、友人には法律上の利害関係がありません。
※家が壊れても友人に損害が発生しない。
難しく考える必要はなく、自分に損害が発生するかどうかです。
1-2.自分の財産が目的でも申立ては可能
条文には「不在者の財産の管理」と記載されていますが、自分の財産が目的でも申立てはできます。
例えば、共同相続人が遺産分割協議のために申立てをするのは、自分の財産(相続財産)が目的です。
不在者財産管理人がいなければ、自分の利益が害される人も利害関係人となります。
2.不在者財産管理人の具体的な利害関係人
不在者財産の具体的な利害関係人としては、以下の人が挙げられます。
- 共同相続人
- 不動産の共有者
- 不在者の推定相続人
それぞれ直接・間接の利益を有しています。
2-1.共同相続人が不在だと遺産分割協議できない
遺産分割協議を成立させるには、相続人全員の同意が必要になります。
したがって、相続人に不在者が含まれると、遺産分割協議(相続手続き)できません。不在者を除外した合意は無効です。
不在者財産管理人が選任されると、相続手続きが進められるので、共同相続人は利害関係人となります。
関連記事を読む『不在者財産管理人が遺産分割協議に参加して署名捺印 』
2-2.不動産の共有者が不在だと処分できない
不動産を処分(売買・取り壊し)するには、共有者全員の同意が必要になります。
そのため、共有者が不在だと、不動産は処分できません。たとえ不在者の持分が少なくても、結論は同じです。
※共有持分を処分するのは自由。
不在者財産管理人が選任されると、同意を得ることも可能になるので、共有者は利害関係人となります。
関連記事を読む『不在者財産管理人が不動産を売却するには許可が必要』
2-3.推定相続人には財産を保全する利益
不在者の推定相続人には、財産を保全する利益があります。
- 不要な不動産の処分
- 債権の回収(不在者が債権者)
- 生命保険金の請求
不要な不動産を放置しておくと、固定資産税や修繕費が毎年発生します。また、債権の回収や生命保険金の請求をしなければ、消滅時効により権利が消滅します。
推定相続人にとって、不在者の財産が減る行為(状態)は、自分の利益が減少するのと同じです。
3.申立時に利害関係を証する書面が必要
不在者財産管理人の選任申立時には、利害関係を証する書類が必要です。
ただし、申立人の利害関係によって、用意する書面が違います。
- 共同相続人|相続関係を証する戸籍一式
- 共有者 |不動産登記事項証明書
- 配偶者 |戸籍謄本
- 推定相続人|推定相続人であると証する戸籍
- 債権者 |契約書等(債権の証明)
一般的には、戸籍で利害関係を証するケースがほとんどです。
不在者財産管理人の選任申立時には、利害関係を証する書類だけでなく、その他の書類も必要になります。申立てに関しては下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『不在者財産管理人の選任申立て【手続きには数ヶ月かかる】』
4.利害関係人の要望が認められるとは限らない
利害関係人は自分の目的を達成するために、不在者財産管理人の選任申立てをしています。
- 共同相続人|遺産分割協議を成立させたい
- 推定相続人|不動産を処分したい
- 配偶者 |財産を全部使いたい
ですが、不在者財産管理人が選任されたからといって、自分の要望が認められるとは限りません。
不在者財産管理人は不在者のために財産を管理するのが仕事です。
4-1.遺産分割協議で不在者の法定相続分を確保
原則として、遺産分割協議では不在者の法定相続分を確保する必要があります。
被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男(不在者)
相続財産|土地・建物
申立人 |長男
長男の目的が不動産の単独所有だったとしても、三男の法定相続分(3分の1)を確保する必要があります。
どうしても単独所有にしたい場合は、代償分割(長男が三男に金銭を支払う)にしてください。
通常、不在者財産管理人の選任申立時に、遺産分割協議の案を提出します。不在者の法定相続分が確保される内容でなければ、家庭裁判所から指摘されるはずです。
4-2.不動産を処分する必要性があるのか
利害関係人が不動産を処分したくても、家庭裁判所の許可を得られる保障はありません。
所有者 |不在者
申立人 |推定相続人
処分理由|不動産が値上がりしている
推定相続人は不動産の価格が上昇しているので、売却して利益を増やしたい。
ですが、売却が得であっても、許可が得られない可能性はあります。
不在者財産管理人の目的は財産の保全であり、財産を増やす(利益を得る)ことは要求されていません。
それに対して、不動産の保有がマイナスになる場合は、家庭裁判所の許可が得やすいです。
関連記事を読む『不在者財産管理人が不動産を売却するには許可が必要 』
4-3.配偶者が全部使えるわけではない
配偶者であっても、不在者の財産が全部使えるわけではないです。
【事例】
不在者|夫
申立人|妻(配偶者)
理由 |年金の支給を再開するため
夫が行方不明になり年金が支給停止になったので、年金事務所に相談したことろ、不在者財産管理人を選任したら支給を再開するとの説明だった。
実際、年金の支給は再開されましたが、不在者財産管理人からは一部しか配偶者に渡されませんでした。
不在者財産管理人は不在者の財産を保全するのが目的なので、配偶者に全財産を渡すとは限りません。
5.まとめ
今回の記事では「不在者財産管理人の利害関係人」について説明しました。
不在者財産管理人の申立人は、「利害関係人」と「検察官」に限られます。
- 共同相続人
- 不動産の共有者
- 推定相続人
共同相続人が遺産分割協議のために申立てるや、不動産の共有者が処分のために申立てる場合です。
ただし、無事に選任されても、利害関係人の要望が認められるとは限りません。不在者財産管理人は不在者の財産を保全するのが目的です。
利害関係人が申立てをする際は、申立後についても知っておきましょう。