不動産の共有名義人が死亡すると持分はどうなるのか?

共有名義人が死亡
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不動産の共有名義人が死亡すると、共有持分がどうなるのかはご存知でしょうか。

共有持分も相続財産になるので、共有名義人の相続人が相続することになります。あるいは、遺言書で遺贈していれば、受遺者が取得することになります。

今回の記事では、不動産の共有名義人が死亡した場合について説明しているので、不動産が共有状態であれば参考にしてください。

1.不動産の共有持分も相続の対象

不動産の共有持分も相続の対象となるので、不動産の共有名義人が死亡すると共有持分は法定相続人が相続します。

ですが、法定相続人が相続することにより、さまざまな問題が発生する可能性があります。

1-1.共有者が際限なく増えてしまう

不動産の共有者の人数に制限はありません。

そのため、共有持分を相続した人が死亡すると、さらに相続が発生して共有者が増えていくことになります。

実際、土地の所有者が不明なので調べると、相続が複数回発生していて共有者が50人ぐらいの土地もあるそうです。

共有名義人を増やさないためにも、できる限り早めに共有状態は解消した方が良いです。

1-2.不動産の処分には全員の同意が必要

共有不動産を処分するには、共有者全員の同意が必要です。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法251条)

共有持分を相続人が取得すると、共有不動産を処分するのに相続人の同意も得る必要があります。

また、行方不明の相続人がいれば、同意が得られないので処分することができません。
不在者財産管理人を検討します。

不動産の共有者が増えるほど、共有者全員の同意を得るのが難しくなります。

2.遺言書で共有持分を遺贈できる

不動産の共有名義人が死亡しても、遺言書で遺贈している場合は受遺者が共有持分を取得します。

共有持分も遺贈することができるので、共有者が相続人以外であっても遺贈することで持分の分散を防ぐことができます。

2-1.遺贈は遺言執行者を指定した方が便利

遺言書で共有持分を遺贈するなら、遺言執行者を指定した方が便利です。

なぜなら、遺言執行者が指定されていなければ、亡くなった人の相続人全員が遺贈義務者となるからです。

遺贈による所有権移転登記は、受遺者と遺贈義務者の共同申請となります。つまり、受遺者と相続人全員の共同申請です。

ですが、遺言執行者が存在すれば、受遺者と遺言執行者で遺贈の登記を済ませることが可能です。

受遺者を遺言執行者に指定しておけば、1人で遺贈登記を申請することもできます。

2-2.共有持分を取得すると税金も発生

遺贈により不動産の共有持分を取得すると、複数の税金が課税される可能性があります。

  • 相続税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税

相続人以外も相続税

遺贈は相続税

相続人以外の人が遺贈を受けた場合も相続税の課税対象です。

相続税が発生するかどうかは、相続財産の総額と基礎控除額によって決まります。

共有持分の評価額だけで判断せず、あらかじめ共有者に確認しておいてください。

遺贈を登記するのに登録免許税

遺贈登記に登録免許税

遺贈により不動産の共有持分を取得しても、登記しなければ第3者に取得を対抗することはできません。

遺贈による持分移転登記の登録免許税は課税価格×2%です。
*相続人以外が取得した場合。

不動産を取得すると不動産取得税

特定遺贈なら不動産取得税

遺贈により相続人以外が不動産の共有持分を取得すると、遺贈の種類によっては不動産取得税が課税されます。

  • 包括遺贈:非課税
  • 特定遺贈:課税

包括遺贈なら非課税ですが、特定遺贈で共有持分を取得する課税されます。

3.亡くなった共有者に相続人がいない

亡くなった共有者に相続人が存在せず、かつ、遺言書も残していなければ、共有持分は共有者に移転します。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

出典:e-Govウェブサイト(民法255条)

ただし、共有者に共有持分が移転するには、条件が2つあります。

  • 相続人の不存在が確定している
  • 特別縁故者が財産を取得していない

3-1.相続人の不存在を確定させる

共有者に持分を移転させるには、相続人の不存在を確定させる必要があります。

そして、相続人の不存在を確定させるには、相続財産管理人の選任申立てをする必要があります。

選任された相続財産管理人が手続きを進めると、相続人の不存在が確定します。

3-2.特別縁故者が財産を取得していない

亡くなった共有者の相続人不存在が確定しても、特別縁故者が財産を取得する可能性があります。

 共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法九五八条の三に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法二五五条により他の共有者に帰属する。

出典:最高裁判所判例集(平成元年11月24日最高裁判所第二小法廷)

共有者に法定相続人が存在しない場合でも、特別縁故者が共有持分を取得する場合があります。

共有名義人の持分は特別縁故者に対する財産分与の対象となるので、特別縁故者が取得しなければ共有者に帰属します。

共有者が共有持分を取得

4.さいごに

不動産の共有名義人が死亡すると、共有持分も相続財産なので相続されます。相続人が複数人であれば、共有持分は分散することになります。

亡くなった共有名義人が遺言書で共有持分を遺贈していれば、相続人以外が持分を取得することもできます。

亡くなった共有名義人に相続人が存在せず、かつ、遺言書も残していなければ共有者が共有持分を取得します。

ただし、相続財産管理人を選任したうえで、特別縁故者が財産を取得しなければという条件付きです。

不動産の共有状態は、できる限り生前に解消しておきましょう。