相続財産清算人の申立てから国庫帰属までの流れは、大きく6つに分かれています。
- 相続財産清算人の選任申立て
- 相続財産清算人の選任
- 相続債権者等に請求申出の催告
- 相続債権者等に支払い
- 相続人の不存在確定
- 相続財産の国庫帰属
民法改正により、相続財産清算人の流れにも変更がありました。官報公告の回数や不存在確定までの期間に違いがあります。
今回の記事では、相続財産清算人の流れを6つの項目に分けて説明しているので、申立てを検討しているなら参考にしてください。
司法書士から一言令和5年4月1日に相続財産管理人から相続財産清算人へ名称変更。
\無料相談/
\申立てが必要/
1.相続財産清算人の流れ1つ目は申立て
相続財産清算人の流れ1つ目は、家庭裁判所への選任申立てです。
亡くなった人に相続人が存在しない場合であっても、申立てがなければ相続財産清算人は選任されません。
以下は、民法の条文です。
相続財産清算人が必要であれば、利害関係人または検察官が請求(申立て)をする必要があります。
関連記事を読む『相続財産管理人の選任申立てをするなら手順を確認しよう』
1-1.利害関係人が相続財産清算人の申立て
相続財産清算人の利害関係人とは、主に以下の人が該当します。
- 特別縁故者
- 相続債権者
- 相続財産の管理者
- 地方自治体
- 不動産の共有者
上記の人は、相続財産清算人が選任されることに、法律上の利害関係があります。
例えば、特別縁故者の財産分与の申立てをするには、前提として相続人の不存在確定が条件となります。
そして、相続人の不存在を確定させるには、相続財産清算人の選任が必要です。
したがって、特別縁故者は利害関係人に該当します。
相続財産清算人が必要であれば、利害関係人は選任申立てをしましょう。
関連記事を読む『相続財産清算人の利害関係人には誰が該当するのか』
1-2.相続財産清算人の申立てが認められない
相続財産清算人の選任申立てが、認められない場合もあります。
例えば、相続人は存在しないが、全部包括受遺者がいる場合です。全部包括受遺者は相続人と同一の権利・義務を有しているので、相続財産清算人は選任できません。
相続財産清算人の選任申立てが認められるとは限らないので、申立てをする前に確認しておいてください。
関連記事を読む『相続財産清算人が選任されない場合を5つ説明』
2.相続財産清算人の流れ2つ目は選任
相続財産清算人の流れ2つ目は、相続財産清算人の選任です。
家庭裁判所への選任申立てが認められると、相続財産清算人が選任されます。
そして、相続財産清算人が選任されたら、公告をする必要があります。
以下は、民法の条文です。
相続財産清算人に関する公告は、官報に掲載して行います。
- 官報
-
国が発行している新聞のようなもの
相続財産清算人の選任および相続人の捜索を兼ねています。
相続財産清算人の官報公告は、法改正により変更されています。詳しくは下記の記事をお読み下さい。
関連記事を読む『相続財産清算人の官報公告は2回あり目的が違う【法改正で変更】』
3.相続財産清算人の流れ3つ目は請求申出
相続財産清算人の流れ3つ目は、相続債権者等に請求申出の催告です。
相続財産清算人は相続債権者および受遺者に対して、請求申出の催告をする必要があります。
以下は、民法の条文です。
相続債権者と受遺者に対する請求申出は、2つに分かれています。
- すべての相続債権者等に対する官報公告
- 知れている相続債権者等には個別に連絡
両方する必要があるので、相続財産清算人は注意してください。
3-1.すべての相続債権者等に対する官報公告
相続財産清算人が把握できていない、相続債権者や受遺者も存在するでしょう。
ですので、把握できていない相続債権者等を探すため、官報公告により請求申出の催告をします。
官報には申出期間が記載されており、期間内に申出がなければ除斥される旨も記載されています。
3-2.知れている相続債権者等には個別に連絡
相続債権者等に対する官報公告をしても、知れている相続債権者等には個別に連絡が必要です。
初めから知れている場合もありますし、相続財産の調査をしている途中で気付くこともあります。
個別に請求申出の催告をしなければ、弁済手続きから除斥できません。
4.相続財産清算人の流れ4つ目は支払い
相続財産清算人の流れ4つ目は、相続債権者等に対する支払いです。
相続債権者等に対する官報公告で定めた期間(2ヶ月以上)が満了すれば、相続財産清算人は相続債権者等に支払いをします。
相続債権者等に対する支払いには、2つの決まりがあります。
- 相続債権者に支払った後で受遺者に遺贈
- 債務超過であれば債権額で按分して支払い
それぞれ説明していきます。
4-1.相続債権者に支払った後で受遺者に遺贈
相続債権者と受遺者が両方とも存在する場合、先に相続債権者へ支払います。
相続債権者に支払った後で、受遺者へ遺贈をするという流れです。
したがって、相続財産が残らなければ、受遺者への遺贈は行われません。
たとえ相続財産清算人の申立人が受遺者だったとしても、例外規定はないので注意してください。
4-2.債務超過であれば債権額で按分して支払い
相続財産よりも負債の方が多ければ、債権額で按分して支払います。
【事例】
相続財産が500万円。債権者Aの債権が800万円、債権者Bの債権が200万円だとします。
相続財産500万円から、債権者Aに400万円、債権者Bに100万円が支払われます。
相続財産があるからといって、全額弁済される保障はないので、債権者は注意してください。
5.相続財産清算人の流れ5つ目は不存在確定
相続財産清算人の流れ5つ目は、相続人の不存在確定です。
相続財産清算人の選任後にする官報公告の期間(6ヶ月以上)が満了しても、相続人の権利を主張する人がいない場合、相続人の不存在が確定します。
以下は、民法の条文です。
たとえ相続人がいたとしても、相続人としての権利は主張できません。
5-1.特別縁故者に対する財産分与
相続人の不存在が確定したからといって、特別縁故者に財産分与されるわけではありません。
特別縁故者は相続人の不存在が確定してから3ヶ月以内に、財産分与の申立をする必要があります。
家庭裁判所が特別縁故者の財産分与を認めた場合、相続財産清算人は特別縁故者に相続財産を引き渡します。
関連記事を読む『特別縁故者の申立期間は3ヶ月なので確認を忘れずに』
5-2.不動産の共有者に持分移転
亡くなった人に特別縁故者が存在しない場合、不動産の共有持分は共有者に移転します。
以下は、民法の条文です。
相続財産に不動産の共有持分がある場合、共有者に移転することを覚えておいてください。
6.相続財産清算人の流れ6つ目は国庫帰属
相続財産清算人の流れ6つ目は、相続財産の国庫帰属です。
すべての手続きを終えても相続財産が残っていれば、最後は国に帰属して終了となります。
以下は、民法の条文です。
相続財産清算人は報酬付与の申立てを忘れずにしましょう。報酬額は清算業務の手間等を考慮して家庭裁判所が決めます。
清算業務の終了報告書を提出すれば、相続財産清算人の業務は終了です。
7.まとめ
今回の記事では「相続財産清算人の流れ」について説明しました。
相続財産清算人の流れは、6つに分けることができます。
- 相続財産清算人の選任申立て
- 相続財産清算人の選任
- 相続債権者等に請求申出の催告
- 相続債権者等に支払い
- 相続人の不存在確定
- 相続財産の国庫帰属
申立てをする理由はさまざまですが、流れを知っておけば、目的達成までの期間も把握しやすくなります。
民法改正により、相続財産清算人の流れも変わっているので、あらためて確認しておいてください。