養子縁組に関することも、法律により定められています。
- 養子縁組の要件:792条~801条
- 養子縁組の取消し・無効:802条~808条
- 養子縁組の効力:809条・810条
- 養子縁組の離縁:811条~817条
養子縁組には同意や許可が必要なケースも多いですが、条文にすべて記載されています。
また、養子縁組の取消しができるのは、条文の規定に該当する場合のみです。
今回の記事では、養子縁組の法律について説明しているので、養子縁組等を調べているなら参考にしてください。
養子縁組の要件(792条~801条)
民法792条から801条では、養子縁組の要件について定めています。
養子縁組には年齢要件や同意要件があるので、しっかりと確認しておきましょう。
養親の年齢は20歳以上(民法792条)
民法792条では、養親の年齢について定めています。
以下は、民法の条文です。
(養親となる者の年齢)
第七百九十二条 二十歳に達した者は、養子をすることができる。
養子縁組により養親になれるのは、20歳に達している人です。20歳未満は養親になれません。
成人年齢(18歳)とは違うので、養子縁組を検討しているなら注意してください。
尊属・年長者は養子にできない(民法793条)
民法793条では、養子にできない人を定めています。
以下は、民法の条文です。
(尊属又は年長者を養子とすることの禁止)
第七百九十三条 尊属又は年長者は、これを養子とすることができない。
尊属または年長者は、養子にできません。
- 尊属
- 自分よりも世代が上の血族のこと
例えば、叔父や叔母が自分より年下でも、尊属に該当するので養子にできないです。
養子縁組を検討する際は、年齢だけでなく親族関係も確認しておきましょう。
後見人が被後見人を養子(民法794条)
民法794条では、後見人が被後見人を養子にする縁組について定めています。
以下は、民法の条文です。
(後見人が被後見人を養子とする縁組)
第七百九十四条 後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。
後見人が被後見人を養子にする場合、家庭裁判所の許可が必要です。
また、後見人の任務終了後、管理の計算が終わらない間も同様となります。
配偶者と未成年者の養子(民法795条)
民法795条では、配偶者のいる人が未成年者を養子にする縁組について定めています。
以下は、民法の条文です。
(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)
第七百九十五条 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
配偶者のいる人が未成年者を養子にするなら、配偶者も一緒に養子縁組する必要があります。
例えば、祖父が未成年の孫を養子にする場合、祖母も孫と養子縁組が必要です。
ただし、配偶者が意思表示できない場合等は除きます。
養子縁組には配偶者の同意(民法796条)
民法796条では、配偶者の同意について定めています。
以下は、民法の条文です。
(配偶者のある者の縁組)
第七百九十六条 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
配偶者のいる人が養子縁組をするには、配偶者の同意を得る必要があります。
なぜかというと、養子縁組により相続や扶養が発生するので、配偶者にも関係があるからです。
ただし、配偶者も一緒に養子縁組を結ぶ場合や、配偶者が意思表示できない場合は除きます。
養子の年齢が15歳未満(民法797条)
民法797条では、15歳未満を養子にする場合について定めています。
以下は、民法の条文です。
(十五歳未満の者を養子とする縁組)
第七百九十七条 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
15歳未満を養子にする場合、養子の法定代理人(親権者等)が代わりに承諾できます。
ただし、養子の父母で監護者が他にいる場合は、監護者の同意も必要です。
養子が未成年だと家庭裁判所の許可(民法798条)
民法798条では、未成年を養子にする場合について定めています。
以下は、民法の条文です。
(未成年者を養子とする縁組)
第七百九十八条 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
未成年者を養子にする場合、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子にする場合は除きます。
例えば、叔父が未成年の甥(姪)を養子にするなら、家庭裁判所の許可が必要です。
一方、祖父が未成年の孫を養子にするなら、家庭裁判所の許可は不要です。
未成年者を養子にする場合は、家庭裁判所の許可が必要か確認しておきましょう。
関連記事を読む『未成年との養子縁組【原則として家庭裁判所の許可】』
養子縁組に婚姻の規定を準用(民法799条)
民法799条では、婚姻規定の準用について定めています。
以下は、民法の条文です。
(婚姻の規定の準用)
第七百九十九条 第七百三十八条及び第七百三十九条の規定は、縁組について準用する。
- 民法738条:成年後見人の同意は不要
- 民法739条:届出により効力発生
民法738条および739条の規定を、養子縁組に準用すると以下のようになります。
成年被後見人が養子縁組をするには、その成年後見人の同意を要しない。
養子縁組は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
当時者に養子縁組をする意思があっても、養子縁組届を提出しなければ、養子縁組の効力は発生しません。
養子縁組届の受理(民法800条)
民法800条では、養子縁組届の受理について定めています。
以下は、民法の条文です。
(縁組の届出の受理)
第八百条 縁組の届出は、その縁組が第七百九十二条から前条までの規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
養子縁組の届出は、年齢要件や配偶者の同意等を確認した後でなければ、受理できません。
外国で日本人間の養子縁組(民法801条)
民法801条では、外国で日本人同士が養子縁組する場合について定めています。
以下は、民法の条文です。
(外国に在る日本人間の縁組の方式)
第八百一条 外国に在る日本人間で縁組をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、第七百九十九条において準用する第七百三十九条の規定及び前条の規定を準用する。
外国で日本人同士が養子年組をする場合、日本大使館や領事館に届出ができます。
そして、日本大使館や領事館への届出により、養子縁組の効力が発生します。
養子縁組の無効・取消し(民法802条~808条)
民法802条から808条では、養子縁組の無効・取消しについて定めています。
養子縁組の無効(民法802条)
民法802条では、養子縁組の無効について定めています。
以下は、民法の条文です。
(縁組の無効)
第八百二条 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。
養子縁組が無効になるのは、2つのケースに限られます。
当事者間に縁組の意思が無ければ無効
養子縁組届が提出されていても、当事者間に縁組の意思が無ければ無効になります。
例えば、当事者の一方が認知症等で判断能力を失っているのに、養子縁組届が提出されている場合。
当時者の一方に縁組を理解する判断能力が残っていなければ、縁組の意思は無いので無効です。
当時者の一方に無断で縁組の届出をしても無効
当時者の一方に無断で養子縁組届を作成して提出しても、養子縁組は無効になります。
ただし、養子縁組届に証人2人の署名が無くても、養子縁組は有効です。
関連記事を読む『【養子縁組の無効に関する判例】争いが多いので事例も多い』
養子縁組の取消し(民法803条~808条)
民法803条から808条では、養子縁組の取消しについて定めています。
以下は、民法の条文です。
(縁組の取消し)
第八百三条 縁組は、次条から第八百八条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
養子縁組が取り消せるのは、804条から808条までに該当した場合のみです。
20歳未満が養親になっている
20歳未満が縁組により養親になっている場合、家庭裁判所に取消しを請求できます。
以下は、民法の条文です。
(養親が二十歳未満の者である場合の縁組の取消し)
第八百四条 第七百九十二条の規定に違反した縁組は、養親又はその法定代理人から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養親が、二十歳に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
養親が20歳に達した後、6ヶ月経過または追認したときは、養子縁組を取消せません。
結果として、20歳になってから養子縁組を結んだのと同じだからです。
尊属または年長者が養子になっている
尊属または年長者縁組により養子になっている場合、家庭裁判所に取消しを請求できます。
以下は、民法の条文です。
(養子が尊属又は年長者である場合の縁組の取消し)
第八百五条 第七百九十三条の規定に違反した縁組は、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
養親や養子だけでなく、親族も縁組の取消しを請求できます。
後見人と被後見人が無許可で縁組している
後見人と被後見人が無許可で養子縁組している場合、家庭裁判所に取消しを請求できます。
以下は、民法の条文です。
(後見人と被後見人との間の無許可縁組の取消し)
第八百六条 第七百九十四条の規定に違反した縁組は、養子又はその実方の親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、管理の計算が終わった後、養子が追認をし、又は六箇月を経過したときは、この限りでない。
2 前項ただし書の追認は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した後にしなければ、その効力を生じない。
3 養子が、成年に達せず、又は行為能力を回復しない間に、管理の計算が終わった場合には、第一項ただし書の期間は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した時から起算する。
養子または実方の親族は、家庭裁判所に縁組の取消しを請求できます。
ただし、以下に該当すると、取消しを請求できません。
- 管理の計算終了後に養子が追認した
- 管理の計算終了後から6ヶ月経過した
養子の追認は、成年に達した後または行為能力の回復後でなければ、効力が発生しません。
養子が成年に達する前または行為能力の回復前に管理の計算が終了した場合、成年に達した時または行為能力の回復時から6ヶ月の期間はスタートします。
配偶者の同意を得ずに縁組している
配偶者の同意を得ずに養子縁組している場合、家庭裁判所に取消しを請求できます。
以下は、民法の条文です。
(配偶者の同意のない縁組等の取消し)
第八百六条の二 第七百九十六条の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が、縁組を知った後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
2 詐欺又は強迫によって第七百九十六条の同意をした者は、その縁組の取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
縁組に同意していない配偶者は、養子縁組の取消しを家庭裁判所に請求できます。
ただし、配偶者が養子縁組を知ってから6ヶ月経過、または追認したときは除きます。
子の監護者から同意を得ずに縁組している
子の監護者の同意を得ずに養子縁組をしている場合、家庭裁判所に取消しを請求できます。
以下は、民法の条文です。
(子の監護をすべき者の同意のない縁組等の取消し)
第八百六条の三 第七百九十七条第二項の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が追認をしたとき、又は養子が十五歳に達した後六箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、この限りでない。
2 前条第二項の規定は、詐欺又は強迫によって第七百九十七条第二項の同意をした者について準用する。
縁組に同意していない子の監護者は、養子縁組の取消しを家庭裁判所に請求できます。
ただし、以下に該当すると、取消しを請求できません。
- 監護者が追認したとき
- 養子が15歳到に達してから6ヶ月経過
- 養子が15歳到達後に追認したとき
養子が追認したときも監護者は取消しできないです。
未成年者と無許可で縁組している
家庭裁判所の許可を得ずに未成年者と養子縁組している場合、家庭裁判所に取消しを請求できます。
以下は、民法の条文です。
(養子が未成年者である場合の無許可縁組の取消し)
第八百七条 第七百九十八条の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族又は養子に代わって縁組の承諾をした者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養子が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
養子、実方の親族または養子に代わって縁組を承諾した人から、養子縁組の取消しを家庭裁判所に請求できます。
ただし、養子が成年に達した後6ヶ月経過、または追認したときは除きます。
婚姻の取消し規定を準用
民法808条では、婚姻の取消し規定を準用しています。
以下は、民法の条文です。
(婚姻の取消し等の規定の準用)
第八百八条 第七百四十七条及び第七百四十八条の規定は、縁組について準用する。この場合において、第七百四十七条第二項中「三箇月」とあるのは、「六箇月」と読み替えるものとする。
2 第七百六十九条及び第八百十六条の規定は、縁組の取消しについて準用する。
民法747条・748条の規定を準用
民法747条および748条の規定を、養子縁組の取消しに準用すると以下のようになります。
詐欺又は強迫によって養子縁組をした者は、その養子縁組の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
当該取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後6ヶ月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
養子縁組の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
養子縁組の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、養子縁組によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
養子縁組の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、養子縁組によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。
養子縁組の取消しは無効と違い、将来に向かってのみ効力を発生します。
養子縁組時に取消し原因を知らなかった当事者が、養子縁組により財産を得た場合、現に利益を受けている限度で返還します。
それに対して、養子縁組時に取消し原因を知っていた当時者は、養子縁組により得た利益の全部を返還する義務があります。
民法769条・816条の規定を準用
民法769条および816条の規定を、養子縁組の取消しに準用すると以下のようになります。
養子縁組によって氏を改めた養子が、祭祀に関する権利を承継した後、養子縁組の取消しをしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、祭祀に関する権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
養子は、養子縁組の取消しによって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと養子縁組の取消しをした場合は、この限りでない。
養子縁組の日から七年を経過した後に、養子縁組の取消しにより縁組前の氏に復した者は、取消しの日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、取消しの際に称していた氏を称することができる。
養子が祭祀に関する権利を承継した後で、養子縁組の取消しをしたときは、権利を承継する人を定めなければなりません。
養子縁組を取消した場合、養子の名字は元に戻ります。
ただし、養子縁組の期間が7年以上で、かつ、取消しの日から3ヶ月以内に届出をすると、養親の名字を使用できます。
養子縁組の効力(民法809条・810条)
民法809条と810条では、養子縁組の効力について定めています。
養子縁組により嫡出子となる(民法809条)
民法809条では、養子縁組と嫡出子について定めています。
以下は、民法の条文です。
(嫡出子の身分の取得)
第八百九条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
養子縁組により、養子は養親の嫡出子となります。
養親が亡くなると、養子も嫡出子として相続人です。
関連記事を読む『養子縁組をすると相続に重大な変更が発生!当事者以外にも影響』
養子は養親の氏を称する(民法810条)
民法810条では、養子の氏を定めています。
以下は、民法の条文です。
(養子の氏)
第八百十条 養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
養子縁組が成立すると、養子は養親の名字に変わります。
たとえ養子が成人していても、養親の名字に変わるので注意してください。
ただし、養子が婚姻していて、配偶者の名字を使用している場合は除きます。
関連記事を読む『養子縁組と苗字の関係について図を用いて分かりやすく説明』
養子縁組の離縁(民法811条~817条)
民法811条から817条では、養子縁組の離縁(解消)について定めています。
協議による養子離縁(民法811条)
民法811条では、協議による養子縁組の離縁について定めています。
以下は、民法の条文です。
(協議上の離縁等)
第八百十一条 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2 養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
3 前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
4 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
5 第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
6 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
協議により養子縁組を解消
養親と養子は協議により、養子縁組を解消できます。
ただし、養子離縁届を提出しなければ、養子離縁の効力は発生しません。
※民法812条で説明。
関連記事を読む『協議離縁とは養親と養子の話し合いで離縁すること』
養子が15歳未満なら法定代理人が協議
養子が15歳未満の場合、離縁後に養子の法定代理人になる人が、養親と離縁の協議をします。
法定代理人になる人がいない場合は、未成年後見を選任してください。
死後離縁には家庭裁判所の許可
当時者の一方が亡くなった後に養子離縁する場合、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
ちなみに、当事者の両方が亡くなっているなら、養子離縁できません。
関連記事を読む『死後離縁とは亡くなった後に養子縁組を解消する方法』
夫婦である養親が未成年者と離縁(民法811条の2)
民法811条の2では、夫婦である養親と未成年者の離縁について定めています。
以下は、民法の条文です。
(夫婦である養親と未成年者との離縁)
第八百十一条の二 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
夫婦で養親になっている場合、未成年者と離縁するには夫婦が共に離縁する必要があります。
ただし、夫婦の一方が意思表示できないときは除きます。
養子離縁に婚姻の規定を準用(民法812条)
民法812条では、婚姻の規定を養子離縁に準用する部分について定めています。
以下は、民法の条文です。
(婚姻の規定の準用)
第八百十二条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離縁について準用する。この場合において、同条第二項中「三箇月」とあるのは、「六箇月」と読み替えるものとする。
- 民法738条:成年後見人の同意は不要
- 民法739条:届出により効力発生
- 民法747条:詐欺・脅迫による取消し
民法738条、739条および747条の規定を、養子離縁に準用すると以下のようになります。
成年被後見人が離縁をするには、その成年後見人の同意を要しない。
離縁は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
詐欺又は強迫によって離縁をした者は、その離縁の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後6ヶ月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
当時者に養子離縁をする意思があっても、養子離縁届を提出しなければ、養子離縁の効力は発生しません。
養子離縁届の受理(民法813条)
民法813条では、養子離縁届の受理について定めています。
以下は、民法の条文です。
(離縁の届出の受理)
第八百十三条 離縁の届出は、その離縁が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定並びに第八百十一条及び第八百十一条の二の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離縁の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離縁は、そのためにその効力を妨げられない。
養子離縁の届出は、未成年者の規定等を確認した後でなければ、受理できません。
ただし、規定等に違反している養子離縁届を受理した場合でも、離縁の効力は発生します。
訴訟による養子離縁(民法814条)
民法814条では、訴訟による離縁について定めています。
以下は、民法の条文です。
(裁判上の離縁)
第八百十四条 縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
一 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
二 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。
三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
2 第七百七十条第二項の規定は、前項第一号及び第二号に掲げる場合について準用する。
離縁訴訟を提起できるケースは限られており、以下に該当する場合のみ、離縁の訴えを提起できます。
- 当時者の一方から悪意で遺棄された
- 当事者の一方が3年以上生死不明
- その他縁組を継続し難い重大な事由がある
ただし、裁判所は上記に該当する場合でも、一切の事情を考慮して請求を棄却できます。
養子が15歳未満の訴訟離縁(民法815条)
民法815条では、養子が15歳未満の訴訟離縁について定めています。
以下は、民法の条文です。
(養子が十五歳未満である場合の離縁の訴えの当事者)
第八百十五条 養子が十五歳に達しない間は、第八百十一条の規定により養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して、離縁の訴えを提起することができる。
養子が15歳未満の場合、離縁訴訟は民法811条で定める人からできます。
例えば、養子に実親が存在するなら、実親から養親に離縁訴訟を提起可能です。
養子が15歳未満なら、法定代理人を確認してください。
離縁による養子の名字変更(民法816条)
民法816条では、離縁による苗字の変更について定めています。
以下は、民法の条文です。
(離縁による復氏等)
第八百十六条 養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2 縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
原則として縁組前の名字に戻る
養子縁組を解消すると、養子の名字は縁組前に戻ります。
ただし、養親の一方のみと離縁した場合、養子の名字は変わりません。
条件を満たせば離縁前の名字を使用できる
民法816条2項では、離縁前の名字を使用する条件を定めています。
- 養子縁組の期間が7年以上
- 離縁日から3ヶ月以内に届出
上記を2つとも満たすと、離縁前の名字を使用できます。
関連記事を読む『【離縁の際に称していた氏を称する届】苗字の使用条件は2つ』
離縁による祭祀承継者の変更(民法817条)
民法817条では、769条(祭祀に関する権利の承継)の規定を準用しています。
以下は、民法の条文です。
(離縁による復氏の際の権利の承継)
第八百十七条 第七百六十九条の規定は、離縁について準用する。
民法769条の規定は、養子離縁に準用すると以下のようになります。
養子縁組によって氏を改めた養子が、祭祀に関する権利を承継した後、離縁をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、祭祀に関する権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
祭祀に関する権利を承継した後で、養子離縁をしたときは、協議により権利承継者を定める必要があります。
まとめ
今回の記事では「養子縁組の法律」について説明しました。
養子縁組に関する規定は、民法792条から817条に記載されています。
※特別養子縁組を除く。
- 養子縁組の要件:792条~801条
- 養子縁組の取消し・無効:802条~808条
- 養子縁組の効力:809条・810条
- 養子縁組の離縁:811条~817条
養子縁組は相続にも関係するので、一度は条文を読んでおきましょう。