養子縁組を養親と養子の話し合いで解消することを、協議離縁といいます。
有効に成立させた養子縁組であっても、事情の変化により解消することは珍しくありません。
ただし、協議離縁の成立には2つの要件があります。
- 養親と養子の同意
- 養子離縁届の届出
2つの要件を満たさなければ、協議離縁は成立していません。
今回の記事では、協議離縁について説明しているので、養子縁組の解消を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.養子縁組は解消(離縁)することができる
有効に成立させた養子縁組であっても、後になって事情が変わることもあります。
事情が変わったには、以下のようなケースが考えられます。
- 連れ子養子をしたが離婚した
- 婿養子をしたが娘夫婦が離婚した
- 後継者を養子にしたが会社が倒産した
例えば、結婚相手の連れ子と養子縁組していたが、離婚することになったので養子縁組を解消する。養子縁組を解消しなければ、離婚しても養子のままです。
養子縁組を解消しておかなければ、養親が亡くなると養子が相続人になります。
養子縁組を解消する方法は、大きく分けて3つあります。
- 協議離縁
- 裁判離縁
- 死後離縁
今回は、1つ目の協議離縁について説明していきます。
2.話し合いで解消するのが協議離縁
養子縁組の解消方法のうち、養親と養子の2人が話し合いで解消することを協議離縁といいます。
2人の話し合いなので、どちらか1人でも反対なら協議離縁は成立しません。
2-1.養子が15歳未満なら法定代理人が協議する
養子が未成年であっても15歳以上であれば、養親との話し合いで離縁することはできます。
ですが、養子が15歳未満の場合は、養親と養子の話し合いで離縁することはできません。
養子縁組を解消した後に養子の法定代理人になる人と、養親が話し合いで養子縁組を解消することになります。
実親が健在であれば、実親と養親が協議離縁をすることになります。
2-2.離縁協議書を作成しても効力は発生していない
養親と養子の話し合いが成立したことを証明するために、書面(離縁協議書)を作成することがあります。
ただし、離縁協議書に養親と養子が署名捺印をしても、養子縁組が解消されたわけではありません。
あくまでも、養親と養子が養子縁組を解消することに合意したことを、証拠として書面にしているだけです。
養子縁組を解消するには、市区町村役場に養子離縁届を提出しなければなりません。
3.届出をしなければ離縁の効力は発生しない
養親と養子の話し合いで養子縁組の解消を合意しても、養子離縁届を提出しなければ離縁の効力は発生しません。
養子縁組の解消を合意したら、忘れずに養子離縁届を提出しましょう。
3-1.市区町村役場への届出が必要
市区町村役場に届け出る前に、提出先と必要な書類等を確認しておいてください。
届出先の市区町村役場は複数から選べる
養子離縁届の提出先は、以下の市区町村役場のどれか一つで大丈夫です。
- 養親の本籍地
- 養親の所在地
- 養子の本籍地
- 養子の所在地
所在地の市区町村役場に届け出るときは、必要な書類が増えるので気を付けてください。
届出に必要な書類の準備
養子離縁届を提出する際に必要な書類も、前もって準備しておきましょう。
- 養子離縁届
- 養親および養子の戸籍謄本
- 届出人の印鑑
- 届出人の本人確認書類
養子離縁届出は提出先の市区町村役場の窓口で取得できます。ホームページからダウンロードすることもできますが、窓口に行って取得する方が分かりやすいです。
協議離縁の場合は、養子離縁届に証人2人の署名も必要となります。
届出先の市区町村役場が所在地であれば、戸籍謄本も取得しておきましょう。
3-2.条件を満たせば同じ苗字を使える
協議離縁により養子縁組を解消すると、養子縁組前の苗字に戻ります。
ただし、養子縁組の期間が7年以上であれば、養子離縁の日から3ヶ月以内に届出をすれば同じ苗字を使うことができます。
同じ苗字を称する届出とは、「離縁の際に称していた氏を称する届出」のことです。
何か特別な事情が無い限り、同じ苗字を使うなら養子離縁届と一緒に届出をしましょう。
関連記事を読む『【離縁の際に称していた氏を称する届】苗字の使用条件は2つ』
4.養子縁組を解消すると3つ影響がある
協議離縁により養子縁組を解消すると、3つ影響があります。
- 法定相続人ではなくなる
- 扶養義務がなくなる
- 名字が縁組前に戻る
それぞれ説明していきます。
4-1.養親が亡くなっても相続人ではない
養子縁組を解消すると養親(養子)ではなくなるので、解消後に養親が亡くなっても相続人にはなりません。
ただし、養子縁組を解消する前に発生していた相続には影響ありません。
養親と養子の関係が終了しているなら、早めに養子縁組を解消しておきましょう。
4-2.親族としての扶養義務がなくなる
養子縁組を解消すると、元養親と元養子となり法律上は無関係です。
ですので、親族としての扶養義務もなくなります。
養子縁組を解消していなければ、どちらかが亡くなった後も親族として扶養義務があります。
5.さいごに
養子縁組は養親と養子の話し合いで解消することができます。
協議離縁の成立要件は、以下の2つです。
- 養親と養子の同意
- 養子離縁届の届出
どちらか一方が勝手に届出をしても成立しませんし、2人が同意していても届出をしていなければ成立していません。
養子縁組を解消することで、法律上は無関係となります。親族としての扶養義務もなくなります。
話し合いで解決できる間に、養子縁組の問題は済ませておくことをお勧めします。