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【養子縁組の無効に関する判例】争いが多いので事例も多い

養子縁組の判例
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養子縁組をすると相続に変更があるので、親族間で争いになることが多いです。

そのため、養子縁組の無効に関する判例も多く残っています。

  • 第3者が養子縁組無効を提起する法律上の利益
  • 当事者間の養子縁組をする意思
  • 養子縁組の届出に関すること
  • 配偶者の養子縁組が無効になった

今回の記事では、養子縁組の無効に関する判例について説明しているので、養子縁組を結ぶ際の参考にしてください。

1.養子縁組無効の訴えをする法律上の利益に関する判例

養子縁組無効の訴えを提起できる人は限られています。

  • 養子縁組の当事者(養親・養子)
  • 法律上の利益を有する第3者

上記以外の人が養子縁組無効の訴えを提起しても却下されます。

重要なのは、訴えを提起する法律上の利益を有しているかです。

1-1.養親の実子は養子縁組無効の訴えを提起できる

養親の実子は、養子縁組無効の訴えを提起する法律上の利益を有しています。

養親の実子は、養親死亡後養子を相手方として養子縁組無効の訴を提起する訴の利益を有する。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和43年12月20日最高裁判所第二小法廷判決)

養親の実子は養子縁組が無効になると、相続人として直接影響を受ける立場にいます。

ですので、養親の実子は法律上の利益を有する第3者に該当します。

1-2.包括受遺者が法律上の利益を否定された判例

養親から全財産を包括遺贈された人は、養子縁組無効の訴えを提起する法律上の利益を有しないと判断された判例があります。

養子縁組の無効の訴えを提起する者は,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえない。

出典:裁判所ウェブサイト(平成31年3月5日最高裁判所第三小法廷判決)

養子縁組が無効になれば、包括受遺者は養子から遺留分侵害額請求を受けなくてすみます。

ただし、包括受遺者は財産を遺贈されているだけなので、養子縁組が無効になっても身分関係には影響がありません。

以下は、別の判例です。

第三者の提起する養子縁組無効の訴えは、養子縁組が無効であることによりその者が自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けないときは、訴えの利益を欠く。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和63年3月1日最高裁判所第三小法廷判決)

第3者が養子縁組無効の訴えを提起するには、養子縁組の無効により身分関係に直接影響を受ける立場である必要があります。

 

2.当事者間の養子縁組をする意思に関する判例

当事者間に養子縁組をする意思が無ければ、養子縁組は無効となります。

2-1.養親子関係を成立させる意思が無ければ養子縁組は無効

たとえ養子縁組の届出自体には問題が無くても、養親子関係の成立を望んでいなければ、養子縁組は無効となります。

旧民法第八五一条第一号(新民法第八〇二条第一号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は、効力を生じない。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和23年12月23日最高裁判所第一小法廷判決)

例えば、他の目的を達成するために養子縁組を利用する点では当事者の意思が一致していても、養親子関係を成立させる意思が無い場合です。

養親子関係を成立させる意思が無ければ、養子縁組は当然に無効となります。

2-2.節税対策と養子縁組をする意思は併存するとした判例

相続税の節税対策のために養子縁組をしても、直ちに養子縁組が無効になるわけではありません。

専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。

出典:裁判所ウェブサイト(平成29年1月31日最高裁判所第三小法廷判決)

養子縁組のキッカケが節税対策だったとしても、当事者間に養子縁組をする意思があれば、養子縁組は有効に成立します。

ちなみに、節税対策のために養子縁組をするのは、相続税の基礎控除額が増えるからです。

注意相続税を不当に減少させていると国税庁に判断されると、養子はカウントされないので注意しましょう。

 

3.養子縁組の届出に関する判例

養子縁組の届出に関する判例も複数あります。

3-1.当事者が意識を失っていても有効とした判例

養子縁組の届出を委託した当事者が届出時に意識を失っていも、特段の事情がない限り養子縁組は有効です。

当事者間において養子縁組の合意が成立しており、かつ、その当事者から他人に対し右縁組の届出の委託がなされていたときは、届出が受理された当時当事者が意識を失つていたとしても、その受理の前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届出の受理により養子縁組は有効に成立する。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和45年11月24日最高裁判所第三小法廷判決)

養子縁組をする意思に問題がなければ、届出の際に意識を失っていても、養子縁組は有効に成立します。

3-2.養子縁組届出書の記載を欠いていても有効とした判例

養子縁組届出書に代書の事由を記載していなくても、受理された養子縁組は有効に成立します。

養子縁組届書に届出人氏名代書の事由の記載を欠いていても、その届出が受理された以上、縁組は有効に成立する。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和37年1月18日最高裁判所第一小法廷判決)

養子縁組届出書の氏名を代筆した場合、届出書には代筆の事由を記載します。

ただし、代筆の事由を記載していない届出書であっても、役所に受理されているなら養子縁組は有効に成立しています。

 

4.配偶者の養子縁組が無効になった場合の判例

配偶者のいる人が未成年者を養子にする場合、配偶者も養子縁組をする必要があります。

そのため、配偶者の養子縁組が無効になると、他方の養子縁組も無効になるのが原則です。

夫婦が共同して養子縁組をするものとして届出がされたところ、その一方に縁組をする意思がなかつた場合には、原則として、縁組の意思のある他方の配偶者についても縁組は無効であるが、その他方と縁組の相手方との間に単独でも親子関係を成立させることが民法七九五条本文の趣旨にもとるものではないと認められる特段の事情がある場合には、縁組の意思を欠く当事者の縁組のみを無効とし、縁組の意思を有する他方の配偶者と相手方との間の縁組は有効に成立したものと認めることを妨げない。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和48年4月12日最高裁判所第一小法廷判決)

配偶者の養子縁組が無効になると他方の養子縁組も無効

他方の養子縁組だけを認める特段の事情があれば、配偶者の養子縁組が無効になっても、他方の養子縁組は有効に成立します。

 

5.さいごに

養子縁組は相続に関係するので、昔から家族間で争いになることが多いです。

そのため、養子縁組に関する判例を複数参考にすることができます。

養子縁組で一番重要なのは、当事者間に養子縁組を成立させる意思があるかどうかです。

当事者間に養子縁組を成立させる意思がなければ、たとえ届出書を提出しても養子縁組は無効となります。

養子縁組をするのは当事者の自由ですが、死後に争いにならないように気を付けてください。