相続登記は相続放棄した人がいると受理証明書も必要になる

相続登記と相続放棄
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相続人の中に相続放棄した人がいると、相続登記を申請する際に「相続放棄を証明する書類」を添付する必要があります。

なぜなら、法務局の登記官は誰が相続放棄しているか分からないからです。

以下の相続登記を申請する場合は、相続放棄を証明する書類を添付してください。

  • 相続放棄した人以外が遺産分割協議により登記
  • 相続放棄した人以外が法定相続分で登記
  • 先順位の相続放棄により後順位が登記

相続放棄した人は相続登記に関係しませんが、添付書類は必要になるので注意してください。

今回の記事では、相続登記と相続放棄で起きやすい問題についても説明しているので、しっかりと確認しておいてください。

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目次

1.相続放棄が関係する相続登記は3つ

相続放棄が関係する相続登記は3つ

相続放棄が関係する相続登記は3つあります。

  • 相続放棄した人以外が遺産分割協議により登記
  • 相続放棄した人以外が法定相続分で登記
  • 相続放棄により後順位相続人が相続登記

上記の相続登記を申請する際には、相続放棄を証明する書類を添付します。

2-1.相続放棄した人以外の遺産分割協議により登記

遺産分割協議により相続登記を申請

相続放棄が関係する相続登記の1つ目は、相続放棄した人以外の遺産分割協議による登記です。

遺産分割協議の成立には相続人全員の参加・同意が必要ですが、相続放棄した人は関係ありません。

なぜなら、相続放棄した人は相続人ではないからです。


亡くなった人の相続人が3人で1人が相続放棄したので2人で遺産分割協議したケース

▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男、二男、三男
相続放棄|三男

▼相続財産

不動産|建物、宅地
預貯金|500万円

▼遺産分割

長男|建物、宅地
二男|預貯金

父親には相続人が3人(長男、二男、三男)いたが、三男は相続する気がないので相続放棄した。

長男と二男の遺産分割協議により、不動産は長男が相続すると決めた。

遺産分割協議書には長男と二男が署名捺印(実印)するので、相続登記には長男と二男の印鑑証明書が必要になります。


相続放棄した人は遺産分割協議に参加しないので、遺産分割協議書への署名捺印も不要です。当然ですが印鑑証明書も必要ありません。

2-2.相続放棄した人以外が法定相続分で登記

法定相続分の割合により相続登記

相続放棄が関係する相続登記の2つ目は、相続放棄した人以外が法定相続分で登記する場合です。

相続放棄した人がいると、法定相続分に変更があるので、相続登記を申請する前に計算し直す必要があります。


亡くなった人の相続人が3人で1人が相続放棄した場合を表した図

▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男、二男、三男
相続放棄|三男

▼相続財産

不動産|建物、宅地

父親には相続人が3人(長男、二男、三男)いたが、三男は相続する気がないので相続放棄した。

不動産を巡って長男と二男の主張は平行線となり、とりあえず法定相続分で相続登記すると決めた。

相続人変更前変更後
長男3分の12分の1
二男3分の12分の1
三男3分の1

三男は相続放棄しているので、法定相続分は長男と二男が各2分の1となります。


相続人の中に相続放棄した人がいると、法定相続分の割合が変わります。

相続登記の申請書には持分を記載するので、必ず法定相続分を計算し直してください。
※不動産の取得者が単独になる場合を除く。

法定相続分で相続登記する場合については、下記の記事で詳しく説明しています。

2-3.相続放棄により後順位相続人が相続登記

先順位相続人の相続放棄により後順位相続人が相続登記

相続放棄が関係する相続登記の3つ目は、相続放棄により後順位相続人が登記する場合です。

先順位相続人が全員相続放棄すると、相続は後順位相続人に移ります。

そして、後順位相続人が遺産分割協議や法定相続分により相続登記する場合は、先順位相続人の相続放棄を証明する必要があります。


▼家族構成

被相続人  |父親
先順位相続人|長男、二男、三男
相続放棄  |長男、二男、三男
後順位相続人|叔父(父親の弟)

父親には子が3人いましたが、全員相続放棄しました。直系尊属はすでに亡くなっているので、父親の弟が不動産を相続します。

叔父が相続登記を申請する際には、自分が相続人であること(先順位相続人の相続放棄)を証明する必要があります。


後順位相続人が複数人存在する場合は、遺産分割協議により不動産の取得者を決めることも可能です。

2.遺言書による相続だと相続放棄は関係しない

相続放棄が関係しない相続登記

遺言書により不動産を相続する場合、相続放棄は相続登記に関係しません。

なぜなら、遺言書の効力により、相続発生と同時に不動産は相続人に移転しているからです。

不動産を相続する相続人以外が相続放棄しても、相続登記には影響がありません。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男、二男、三男
相続放棄|三男

▼相続財産

不動産|建物、宅地
預貯金|500万円

▼遺言書

長男|建物、宅地
二男|預貯金

父親の遺言により、相続発生と同時に不動産(建物・宅地)は長男に移転しています。

相続登記は長男が単独で申請でき、三男の相続放棄を証明する書類も不要です。


相続人の中に相続放棄した人がいても、遺言書により不動産を相続する場合、相続登記に相続放棄は関係しません。

遺言書により相続登記を申請するケースについては、下記の記事で詳しく説明しています。

3.相続登記の添付書類で相続放棄を証明する

相続放棄を証明する書類は主に2つある

相続放棄が相続登記に関係する場合、「相続放棄を証明する書類」を相続登記の添付書類として提出する必要があります。

なぜなら、家庭裁判所と法務局は連動していないので、相続放棄の有無が法務局に伝わってないからです。

「相続放棄を証明する書類」を添付しなければ、法定相続分の割合や遺産分割協議の参加者に間違いがあると判断されます。

以下の2つが、相続放棄を証明する主な添付書類です。

  • 相続放棄申述受理証明書
  • 相続放棄申述受理通知書

それぞれ説明していきます。

3-1.相続放棄申述受理証明書を添付する

相続放棄申述受理証明書で相続放棄を証明する

通常、相続登記を申請する際には、「相続放棄申述受理証明書」を相続放棄を証明する書類として添付します。

相続放棄申述受理証明書

家庭裁判所で取得できる相続放棄を証明する書面

相続放棄申述受理証明書には、以下のような情報が記載されています。
※死亡日や最後の住所も記載される家庭裁判所もある。

  • 申述人の氏名
  • 被相続人の氏名
  • 被相続人の本籍

法務局は相続放棄申述受理証明書と戸籍を照らし合わせて、相続人が相続放棄しているか確認します。

証明書は相続放棄した人だけでなく、相続登記の申請者(不動産の相続人)も利害関係人として取得可能です。

相続放棄申述受理証明書の取得方法については、下記の記事を参考にしてください。

3-2.相続放棄申述受理通知書も内容によっては可能

相続放棄申述受理通知書の記載内容によっては相続放棄を証明する書類になる

「相続放棄申述受理通知書」も相続放棄を証明する添付書面になり得ます。

相続放棄申述受理通知書

相続放棄の申述が受理されると家庭裁判所から送られる書面

かつては、相続放棄を証明する添付書面として、受理通知書は認められませんでした。

ですが、取り扱いの変更により受理通知書でも可能になっています。

相続を原因とする所有権の移転の登記の申請において、相続放棄等の申述有無についての照会に対する家庭裁判所からの回答書や相続放棄申述受理通知書を登記原因を証する情報の一部とすることができる。

出典:(登記研究808号 平成27年6月号 質疑応答より)

ただし、受理通知書の記載内容によっては、相続放棄を証明する書類として認められないようです。

家庭裁判所によって受理通知書の記載内容が違うので、前もって提出先の法務局に確認しておく必要があります。

相続放棄申述受理通知書については、下記の記事で詳しく説明しています。

4.相続登記と相続放棄で起きやすい問題

相続放棄が関係する相続登記で起きやすい問題

相続放棄した人がいると相続登記で起きやすい問題を3つ説明します。

  • 相続放棄した人が事件番号を教えてくれない
  • 相続放棄を知らずに法定相続分で登記した
  • 遺言執行者が相続放棄を確認せずに登記した

上記は、実際に私が相談を受けた事例なので、しっかりと確認しておいてください。

4-1.相続放棄した人が事件番号を教えてくれない

不動産の相続人が利害関係人として受理証明書を取得する場合、相続放棄の事件番号を請求書に記載する必要があります。

ですが、相続放棄した人が教えてくれず、事件番号が分からないケースも多いです。

事件番号が分からない場合は、先に「相続放棄申述有無照会」で事件番号を調べる必要があります。

相続放棄申述有無照会

被相続人に対する相続放棄の有無だけでなく事件番号も照会できる

  1. 有無照会で事件番号を確認
  2. 家庭裁判所に受理証明書を請求
  3. 受理証明書を添付して相続登記を申請

事件番号が分からない場合は、上記の流れで相続登記を申請してください。

4-2.相続放棄を知らずに法定相続分で登記した

法定相続分での相続登記は、他の相続人に連絡をしなくても可能です。

ただし、他の相続人に連絡をしなかった場合、相続放棄を知らずに相続登記するケースがあります。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男、二男
相続放棄|二男

▼相続登記

長男|2分の1※申請人
二男|2分の1

長男は二男と疎遠だったので、二男に連絡せず法定相続分で相続登記をした。

しかし、二男は相続放棄しているので、相続登記の内容は間違っており、更正する必要があります。


法定相続分での相続登記は単独でも申請できますが、相続放棄の有無は確認しておいた方が良いでしょう。

もし相続放棄に気付かず相続登記をした場合は、所有権更正登記を申請して正しい状態にしてください。

所有権更正登記については、下記の記事で詳しく説明しています。

3-3.遺言執行者が相続放棄を確認せずに登記した

亡くなった人が遺言書で不動産の相続人を決めていた場合でも、相続人(指定された人)は相続放棄を選べます。

しかし、遺言執行者が相続放棄の意思を確認せずに、相続登記を申請するケースが存在します。

以下は、実際にあったケースです。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長女(前妻の子)、二女(後妻の子)

▼遺言書

長女|田畑、山林
二女|建物、宅地、雑種地(駐車場)
遺言執行者|A弁護士

▼相続登記

遺言執行者であるA弁護士は、長女の意思を確認せずに相続登記を済ませていた。
※遺言執行者も相続登記を申請できる。

▼相続放棄

長女は田畑や山林が不要なので、父親の死亡を知ってから3ヶ月以内に相続放棄した。

長女の相続放棄により、遺言書(田畑・山林の部分)の効力は無効になるので、田畑・山林は二女が相続します。その後、A弁護士は二女に事情を説明して、所有権更正登記を申請した。


遺言書で遺言執行者を指定している場合、遺言執行者も相続登記を申請できます。

しかし、相続人の意向を確認しておかないと、相続放棄により余計な登記が発生する可能性があるので注意してください。

5.相続登記と相続放棄に関するQ&A

相続登記と相続放棄に関して、よくある質問と回答を説明します。

遺産分割により相続登記を申請する場合、相続放棄した人の印鑑証明書は必要ですか?

不要です。相続放棄した人は遺産分割協議に参加しないので、遺産分割協議書にも署名捺印しません。

遺産分割協議書に相続放棄した人は記載するのか?

受理証明書を利害関係人が取得する場合、相続放棄した人の同意は必要ですか?

不要です。利害関係人(不動産の相続人)も権利者として取得できます。

相続登記に添付した受理証明書(受理通知書)は原本還付できますか?

原本還付できます。受理証明書(通知書)は相続登記以外でも使用できるので、原本還付しておきましょう。

ただし、写しに署名捺印する等の条件を満たす必要があります。

相続登記で原本還付できる書面は他の手続きでも使用する

相続放棄した人の戸籍は相続登記の申請に必要ですか?

原則として必要です。相続放棄した人が法定相続人だと確認するため。

相続登記の戸籍謄本は相続の内容を証明するために添付する

6.まとめ

相続登記と相続放棄に関するまとめ画像

今回の記事では「相続登記と相続放棄」について説明しました。

相続人の中に相続放棄をした人がいると、相続登記をする際に「相続放棄を証明する書類」を添付する必要があります。

  • 相続放棄した人以外が遺産分割協議により登記
  • 相続放棄した人以外が法定相続分で登記
  • 先順位の相続放棄により後順位が登記

具体的には、以下の書面が添付書類です。

  • 相続放棄申述受理証明書
  • 相続放棄申述受理通知書
    ※記載内容による

相続放棄申述受理証明書を添付しておけば間違いありません。

相続登記の相続放棄が関係する場合、しっかりと確認してから進めないと、問題が起きやすいので注意してください。

目次