相続登記を錯誤により更正する|登記の前後により方法が違う

法定相続分で相続登記をしたが、何らかの事情で相続人が違うことはないですか。

実際、法定相続分で登記をした後に、相続登記を更正するのは珍しくありません。

ただし、常に更正登記が認められるわけではありません。別の方法で登記を直すこともあります。

今回の記事では、相続登記を錯誤により更正する方法について説明しているので、相続登記に問題がある場合は参考にしてください。

1.更正登記が認められるには条件がある

相続登記を錯誤により更正登記するには条件があります。

分かりやすく説明すると以下の2つです。

  • 相続登記の時点で間違っている
  • 更正登記の前後で同一性がある

上記2つを満たす場合は、相続登記を錯誤により更正登記できます。

1-1.相続登記の時点で間違っている

1つ目の条件は、相続登記の時点で間違っているです。

当然ですが、相続登記の時点で正しければ、更正登記をすることはできません。

相続登記よりも後に起こった事情により、相続登記の内容が実際の相続と違う場合は、別の方法で登記を直すことになります。

1-2.更正登記の前後で同一性がある

2つ目の条件は、更正登記の前後で同一性があるです。

分かりやすく説明するなら、更正登記の前後で同じ相続人が存在するかで判断します。

同じ相続人が存在する

同じ相続人が存在するとは、以下のような場合です。

相続人A単独で相続登記したものを、相続人AとBの共有に更正する。

または、相続人AとBの共有で相続登記したものを、相続人A単独に更正する。

更正の前後で同一性がある

どちらの登記も相続人Aが存在しているので、更正登記の前後で同一性があります。

同じ相続人が存在しない

相続人が共通していないとは、以下のような場合です。

相続人A単独で相続登記したものを、相続人B単独に更正する。

あるいは、相続人AとBの共有で相続登記したものを、相続人CとDの共有に更正する。

更正の前後で同一性がない

どちらの登記も更正の前後で、同じ相続人が存在していないので更正登記は申請できません。相続登記を抹消したうえで、登記をやり直すことになります。

 

2.相続登記した後に遺言書が見つかった場合

法定相続分で登記した後に、相続人の1人に相続させる旨の遺言書が見つかった場合です。

遺言書の効力は死亡と同時に発生しているので、相続登記をした時点で間違っていたことになります。

(遺言の効力の発生時期)
第九百八十五条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

出典:e-Govウェブサイト(民法985条)

例えば、亡くなった人がAで、相続人がBとCの2人だとします。

法定相続分でBとCの共同名義にした後に、「Bに相続させる」という内容の遺言書が見つかった場合。

初めからB単独名義にするところを、BとCの共有名義にしているので、C持分の登記は間違っていることになります。

よって、B単独名義に直すため、所有権の更正登記を申請します。

  • 登記の目的:〇番所有権更正
  • 登記原因:錯誤
  • 登記権利者:B
  • 登記義務者:C
  • 登録免許税:1,000円

所有権更正登記は共同申請です。登記を失う相続人が登記義務者となります。

以下は不動産登記簿の記載例です。

不動産の登記記録例
順位
番号
登記の目的受付年月日
受付番号
権利者その他の事項
(省略)(省略)所有者
A
所有権移転(省略)原因 年月日相続
共有者
持分2分の1 B
2分の1 C
付記1号2番所有権更正(省略)原因 錯誤
所有者
B

法定相続分で登記する前に、遺言書が無いかどうかの確認はしておいてください。

 

3.相続登記と遺産分割協議の内容が違う場合

相続登記と遺産分割協議の内容が違う場合です。

遺産分割協議と相続登記の前後により、必要となる登記が違います。

  • 遺産分割協議が先なら更正登記
  • 遺産分割協議が後なら持分移転登記

3-1.遺産分割協議が先なら更正登記

法定相続分の登記より前に遺産分割協議をしている場合は、法定相続分の登記をした時点で間違っていたことになります。

例えば、相続人がBとCの2人で、Bが不動産を相続するという遺産分割協議をしている場合。

遺産分割協議の後に法定相続分で登記すると、初めからC持分の登記は間違っていることになります。

よって、B単独名義に直すため、所有権の更正登記を申請します。

3-2.遺産分割協議が後なら持分移転登記

法定相続分の登記より後に遺産分割協議をした場合、法定相続分の登記をした時点では間違っていません。

そのため、更正登記を申請することはできません。

では、どうするかというと、「遺産分割」を登記原因として所有権移転登記を申請します。

  • 登記の目的:〇〇持分全部移転
  • 登記原因:遺産分割
  • 登記権利者:B
  • 登記義務者:C
  • 登録免許税:課税価格×0.4%

登録免許税は相続と同じく課税価格×0.4%です。

以下は不動産登記簿の記載例です。

不動産の登記記録例
順位
番号
登記の目的受付年月日
受付番号
権利者その他の事項
(省略)(省略)所有者
A
所有権移転(省略)原因 年月日相続
共有者
持分2分の1 B
2分の1 C
C持分全部移転(省略)原因 年月日遺産分割
所有者
持分2分の1 B

法定相続分の登記をした後に遺産分割協議をすると、登記の回数が増えるので余計な費用も増えます。

できる限り早めに遺産分割協議を済ませて、初めから単独名義にする方が良いです。

 

4.相続登記をしたが相続放棄した人がいる場合

法定相続分で登記をしたが、相続放棄した相続人がいる場合です。

相続放棄と相続登記の前後により、必要となる登記が違います。

  • 相続放棄が先なら更正登記
  • 相続放棄が後なら持分移転登記

4-1.相続放棄が先なら更正登記

他の相続人が相続放棄していることを知らずに、法定相続分の登記をした場合です。

相続放棄をすると初めから相続人ではないので、相続登記をした時点で間違っていることになります。

例えば、相続人がBとCの2人で、Cに連絡が取れないので法定相続分の登記をしたが、Cは相続放棄をしていた場合です。

C持分の登記は初めから間違っているので、B単独名義に直すため所有権の更正登記を申請します。

4-2.相続放棄が後なら持分移転登記

他の相続人が法定相続分で登記をした後に、相続放棄をした場合です。

相続放棄をすると初めから相続人ではないのですが、相続登記の時点では間違っていません。

ですので、更正登記を申請することはできません。

では、どうするかというと、「真正な登記名義の回復」を登記原因として所有権移転登記を申請します。

  • 登記の目的:〇〇持分全部移転
  • 登記原因:真正な登記名義の回復
  • 登記権利者:B
  • 登記義務者:C
  • 登録免許税:課税価格×2%

登録免許税は通常の所有権移転登記と同じく課税価格×2%です。

以下は不動産登記簿の記載例です。

不動産の登記記録例
順位
番号
登記の目的受付年月日
受付番号
権利者その他の事項
(省略)(省略)所有者
A
所有権移転(省略)原因 年月日相続
共有者
持分2分の1 B
2分の1 C
C持分全部移転(省略)原因 真正な登記名義の回復
所有者
持分2分の1 B

法定相続分の登記をした後に、他の相続人が相続放棄すると、登録免許税が増えてしまいます。

相続の開始を知らない相続人がいる場合は、法定相続分の登記をするのは避けた方がいいです。

 

5.法定相続分の登記にはリスクがある

法定相続分の登記は、相続人の1人から申請できるので便利です。

ただし、遺産分割協議をする前に登記した場合や、他の相続人に連絡を取らずに登記すると、後から追加で登記をする可能性があります。

できる限り法定相続分での登記は避けた方がいいです。

遺産分割協議をしてから相続登記するや、他の相続人に相続放棄の確認をするなどの対策をしておきましょう。

 

6.さいごに

相続登記をした後で、更正登記をすることはあります。

ただし、常に更正登記ができるわけではなく、条件を満たしている場合のみです。

  • 相続登記の時点で間違っている
  • 更正登記の前後で同一性がある

上記以外の場合は、更正登記以外の方法で相続登記を直すことになります。

更正登記の登録免許税は1,000円なのですが、それ以外の方法は登録免許税が課税価格×0.4%または2%発生します。

余計な登記を増やさないように、相続登記をする前には確認をしておきましょう。

相続登記を検討している場合は、下記より料金等を確認することができます。

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