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相続財産管理人の利害関係人には誰が該当するのか

相続財産管理人の利害関係人
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相続財産管理人の選任申立てについて、誰が利害関係人に該当するかご存知でしょうか。

相続財産管理人の選任申立てができるのは、法律上の利害関係を有する人です。

イメージとしては、相続財産管理人が選任されないと、手続きを進めることができない人のこと。

主な利害関係人には、以下の人が挙げられます。

  • 特別縁故者
  • 相続債権者
  • 相続財産を管理している人

今回の記事では、相続財産管理人の利害関係人について説明しているので、誰が該当するのか参考にしてください。

司法書士から一言令和5年4月1日に相続財産管理人から相続財産清算人へ名称変更。

1.法律上の利害関係で判断する

相続財産管理人の選任申立てができる人は、法律で定められています。

(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法952条)

利害関係人とは、申立てに法律上の利害関係がある人のこと。

イメージとしては、相続財産管理人が選任されていないと、手続きを進めることができない人です。

主な法律上の利害関係人には、以下の人が挙げられます。

  • 特別縁故者
  • 相続債権者
  • 相続財産を管理している人
  • 地方自治体
  • 不動産の共有者

それぞれ説明していきます。

 

2.特別縁故者の申立てをする人

亡くなった人の特別縁故者も、相続財産管理人申立ての利害関係人です。

なぜなら、特別縁故者に対する財産分与の申立てをするには、相続財産管理人が選任されている必要があるからです。

相続財産管理人が選任されていなければ、相続人不存在が確定しません。相続人不存在が確定しなければ、特別縁故者の申立てをすることができません。

ですので、特別縁故者は相続財産管理人の申立てをする、法律上の利害関係があります。

 

3.亡くなった人に対する債権を有する人

相続債権者も、相続財産管理人申立ての利害関係人です。

亡くなった人に財産があっても、そのままでは債権を回収することはできません。相続人がいれば権利義務を引き継ぐので、相続人から債権を回収します。

ですが、相続人が存在しなければ権利義務を引き継ぐ人がいないので、債権者であっても勝手に回収することはできません。

債権を回収するには、相続財産管理人が必要になります。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法957条)

選任された相続財産管理人は、相続債権者や受遺者に対して請求申出の公告をします。

そして、相続債権者が申し出ることで、相続財産から弁済の手続きが行われます。

 

4.亡くなった人の財産を管理している人

亡くなった人の財産を管理している人も、相続財産管理人申立ての利害関係人です。

なぜなら、相続財産管理人が選任されなければ、管理している財産を引き渡すことができないからです。

4-1.相続放棄をした相続人

相続放棄をした相続人も、相続財産管理人申立ての利害関係になります。

なぜなら、相続財産管理人が選任されなければ、管理を継続しなければならないからです。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法940条)

相続人がいれば問題ないのですが、全員が相続放棄すると管理を引き継ぐ人がいなくなります。

相続財産管理人を選任することで、管理義務を引き継いでもらうことができます。

4-2.亡くなった人の後見人等

亡くなった人の後見人等も、相続財産管理人申立ての利害関係人です。

被後見人(後見を受けていた人)が亡くなると、後見人は相続人に財産を引き渡すのですが、相続人が存在しなければ引き渡すことができません。

相続財産管理人を選任することで、財産を引き渡すことができます。

 

5.地方自治体も利害関係人になる

地方自治体も相続財産管理人申立ての利害関係人となります。

典型的な例としては、空き家問題や所有者不明土地の問題を解決するのに、相続財産管理人の申立てが必要となります。

なぜなら、所有者が存在しない空き家であっても、自治体が勝手に取り壊すことはできないからです。

選任された相続財産管理人が手続きをすることで、最終的に国庫へ不動産が帰属することになります。

(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

出典:e-Govウェブサイト(民法959条)

不動産が国庫に帰属してから、空き家を取り壊すなどの行為を行います。

 

6.不動産の共有者も利害関係を有する

亡くなった人と不動産を共有していた人も、相続財産管理人選任申立ての利害関係人になります。

亡くなった人に相続人が存在しなければ、最終的に国庫に帰属するのですが、共有持分に関しては共有者に帰属することになります。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

出典:e-Govウェブサイト(民法255条)

共有者の持分を取得するには相続財産管理人が必要なので、共有者には法律上の利害関係があります。

 

7.包括受遺者が存在すれば相続財産管理人は不要

亡くなった人が財産を全部遺贈している場合は、相続財産管理人を選任することができません。

なぜなら、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するので、相続財産管理人を選任する必要がないからです。

包括受遺者
遺言書により相続財産を割合で遺贈された人のこと

以下は、最高裁判所の判例です。

遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、民法九五一条にいう「相続人のあることが明かでないとき」に当たらない。

出典:最高裁判所判例集(平成9年9月12日)

全部包括受遺者が存在すれば、相続人が存在するのと同じことなので、相続財産管理人は不要となります。

包括受遺者が遺贈を放棄すると、相続財産管理人の選任が必要となります。

 

8.さいごに

相続財産管理人の選任申立てができるのは、法律上の利害関係人です。

  • 特別縁故者
  • 相続債権者
  • 財産を管理している人
  • 地方自治体

利害関係人のイメージとしては、相続財産管理人が選任されないと、手続きを進めることができない人です。

例えば、特別縁故者は相続財産管理人が選任されなければ、財産分与の申立てをすることができません。相続債権者は相続財産管理人が選任されなければ、債権を回収することができません。

手続きを進めるのに相続財産管理人が必要であれば、選任申立てを検討しましょう。