相続放棄の費用がいくら必要なのか調べているが、事務所により金額に違いがあり困っていませんか。
あるいは、総額でいくら必要なのか記載されておらず、金額計算ができなくて困っていませんか。
相続放棄に必要な費用は、大きく分けると2つです。
- 相続放棄の実費
- 専門家の報酬
相続放棄の実費とは、戸籍謄本等の取得費用や申述に必要な収入印紙等のことです。相続放棄の実費は誰が相続放棄するかで違います。
それに対して、専門家の報酬とは、相続放棄に関する相談料や申述書作成の依頼料のことです。専門家報酬は事務所により違います。
今回の記事では、実費の内訳なども詳しく説明しているので、専門家に依頼するか迷われているなら参考にしてください。
目次
1.誰が相続放棄するかで費用が違う
相続放棄をする人によって、必要書類が違うので費用も違います。
相続放棄をする人は、一般的には配偶者・子ども・親・兄弟姉妹です。さらに、孫・祖父母・甥姪も関係することがあります。
亡くなった人の配偶者や子どもは集める書類も少ないですが、関係が離れるほど書類の数も増えていきます。
関係が離れるほど書類が増える理由は、先順位相続人がいないことを証明するためです
たとえば、親が相続人になるのは、亡くなった人に子どもがいない場合です。子どもがいないことを、亡くなった人の戸籍謄本等で証明する必要があります。
子どもがいないことを証明するには、亡くなった人の「生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等」を集める必要があります。
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 亡くなった人の住民票(除票)
- 本人の戸籍謄本
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等は、亡くなった年齢や婚姻歴あるいは転籍の回数によって違いますが、平均すると3枚から5枚ぐらいになります。
亡くなった人との関係性によって費用は増えていきます。
関連記事を読む『相続放棄に必要な戸籍謄本等|取得枚数は相続人ごとに違う』
2.戸籍謄本や住民票の取得費用
相続放棄を申請する際に必要な書面は限られています。
戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、住民票(除票)または戸籍の附票です。
戸籍謄本 | 450円 |
除籍謄本 | 750円 |
改製原戸籍謄本 | 750円 |
住民票(除票) 戸籍の附票 | 約300円 |
住民票(除票)・戸籍の附票は、市区町村によって取得費用が違います。大阪市であれば300円です。
2-1.郵送で取得する場合は追加費用発生
窓口で取得する場合は上記の料金です。
ただし、郵送で取得する場合は、定額小為替を購入する必要があります。定額小為替を現金の代わりに封筒に入れて送ります。
役所への請求用封筒の切手代と返送用封筒の切手代も必要です。
たとえば、自分の戸籍謄本を郵送で取得する場合。
450円+200円+84円+84円=818円が必要です。
- 戸籍謄本(450円)
- 定額小為替発行手数料(200円)
- 請求用封筒の切手代(84円)
- 返送用封筒の切手代(84円)
家に封筒が無ければ、封筒も用意する必要があります。
注意定額小為替を購入する際に、一枚につき200円の手数料が発生します。
2-2.本籍地が分からないと取得費用が増える
亡くなった人の本籍地が不明な場合、亡くなった人の住所を知っているかで方法が変わります。
亡くなった人の住所を知っている
亡くなった人の本籍地が分からないときは、本籍地記載の住民票を取得すると確認できます。
- 亡くなった人の住民票(除票)を取得
- 住民票で本籍地を確認
- 亡くなった人の戸籍謄本を取得
住民票を取得する分だけ、相続放棄の費用が増えます。
注意住民票(除票)を取得する際は、本籍地記載にチェックを入れておいてください。チェックを入れなければ、本籍地は省略されて発行されます。
亡くなった人の住所を知らない
亡くなった人の本籍地も住所も分からない場合は、自分の戸籍から辿っていくしかありません。
例えば、亡くなったのが兄弟姉妹の場合です。
- 自分の戸籍謄本を取得
- 親の戸籍謄本を取得
- 親の戸籍謄本から兄弟姉妹の本籍地を確認
- 兄弟姉妹の戸籍謄本を取得
親の戸籍謄本から兄弟姉妹が除籍していると、転出先の本籍地が記載されています。
亡くなった兄弟姉妹が独身であれば、親の戸籍謄本に一緒に入っていることもあります。
司法書士から一言自分の戸籍から辿る場合は時間がかかるので、期間の経過には気をつけてください。
3.家庭裁判所へ提出する費用
家庭裁判所に相続放棄の申述書を、提出するのにも費用が発生します。
- 相続放棄申述書に貼る収入印紙代800円
- 家庭裁判所との連絡用切手代約500円
- 郵送で提出する場合は切手代
家庭裁判所により連絡用切手代は違うので、管轄家庭裁判所に電話して確認してください。
以下は大阪家庭裁判所の予納郵券です。
【大阪家庭裁判所】
- 84円切手×5枚
- 10円切手×5枚
切手の内訳も指定されているので、購入する際はご注意ください。
家庭裁判所が遠方であれば、郵送で提出することになります。郵送方法に指定は無いのですが、書留やレターパックなどで送る方が安全です。
家庭裁判所に提出するのに、約1,300円+郵送料が必要です。
関連記事を読む『相続放棄に必要な収入印紙と予納郵券を用意しよう』
4.専門家報酬は事務所により違う
自分ですべて行う場合は必要ありませんが、専門家に依頼すると報酬を支払うことになります。
司法書士や弁護士の報酬は自由設定となっていますので、事務所により報酬額は違います。
4-1.依頼内容により決まる
相続放棄の申述書の書き方や、戸籍謄本の集め方だけ教えて貰う場合は、報酬額が1万円ぐらいの事務所もあります。相談が有料の事務所は、相談時間内で教えて貰うことも可能です。
すべて依頼する場合は、3万円から5万円ぐらいが多いです。報酬には消費税(10%)が課税されます。
報酬額は自由に決めることができるので、事務所によってバラバラです。人件費や事務所の家賃等で変わると思います。
事務所によっては料金表示が分かりにくいので、私なら総額でいくら必要か聞きます。安く表示しておいて、オプション料金で追加させる方法を取る事務所も存在するからです。
4-2.依頼人の事情により増額
依頼人の事情により増額する場合があります。
- 残り期間が短い
- 期間を過ぎている
- 相続財産を使っている
①残り期間が短い
相続放棄ができるのは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。
戸籍謄本等を集めるのに時間がかかるので、残り期間が短い場合には料金を割り増しにしている事務所が多いです。目安としては1ヶ月を切ると割増しにしています。
例えば、「残り1ヶ月を切っているなら1万円追加」などの事務所が多いです。
②期間を過ぎている
何らかの事情で期間を過ぎている場合でも、事情によっては相続放棄が認められることがあります。
事務所によっては、料金を割り増しにして依頼を受けています。
例えば、「3ヶ月過ぎていても大丈夫。料金は要相談」などの表示があります。
関連記事を読む『相続放棄は後から借金に気付いても認められるのか?』
③相続財産を使っている
原則として相続財産を使ってしまうと、相続放棄は認められません。
事務所によっては詳しい話を聞いたうえで、料金を割り増しにして受けています。
5.相続放棄の費用を安くする方法
相続放棄の費用を安くするなら、自分で手続きをするか専門家報酬を安くするかです。
5-1.相続放棄の手続きを自分でする
相続放棄の費用を安くする方法で、最初に思い付くのは自分で手続きをするです。自分で手続きをすれば実費だけになります。
ただし、以下の2つを満たしている人でなければ厳しいです。
- 時間に余裕がある
- 自分で調べることができる
当然ですが、時間に余裕が無ければ専門家に依頼した方が安全です。3カ月が経過すると相続が確定します。
自分で調べることが難しければ、専門家の力を借りた方が早いです。
有料相談を利用する
自分で手続きを進めたいが専門家に相談だけしたい場合は、有料相談の利用をお勧めします。
なぜかというと、無料相談に行って「自分で相続放棄をしたいのでやり方を教えてください」と言っても、本気で教える専門家は少ないからです。
無料相談を何カ所も利用した結果、時間が足りなくなって専門家に依頼した人もいます。
最初から有料相談を利用した方が、結果的には費用が安く済むと思います。
5-2.専門家報酬を安くする方法は4つ
専門家報酬(費用)を安くする方法を4つ記載しておくので、専門家に依頼する際の参考にしてください。
- 早く依頼する
- 同じ事務所に依頼する
- 戸籍謄本を取得しておく
- 不要なサービスは依頼しない
①専門家に早く依頼する
厳密には安くするではなく、高くしない方法になります。
専門家に依頼するなら、相続の開始を知った日から早い方が良いです。
なぜなら、【4-2.依頼人の事情により増額】でも説明したとおり、後回しにすると依頼料が増えるからです。
残り期間が1ヶ月を切っていると、1万円追加にしている事務所が多くなります。
※事務所によっては依頼を断られます。
ですので、早く依頼する方が費用は安くなります。
②同じ事務所に依頼する
相続放棄をする相続人が複数人いるなら、同じ事務所に依頼すると2人目以降は安くなります。
安くなる理由は、同じ戸籍謄本は1枚しか要らないのと、申述書の作成も楽になるからです。
事務所によって安くなる金額は違いますが、1人につき5,000円ぐらいは費用が割安にります。
③戸籍謄本を取得しておく
相続放棄に必要な戸籍謄本を自分で取得しておくと、専門家報酬は安くなります。
勘違いしている人も多いですが、戸籍謄本の取得を依頼できるのであり、自分で取得しても問題ありません。
戸籍謄本の取得も専門家報酬に含まれているので、自分で取得しておけば割引になるはずです。
実際、当事務所でも戸籍謄本1枚につき1,000円引きにしています。
④不要なサービスは依頼しない
相続放棄を専門家に依頼するなら、不要なサービスは依頼しないことです。
- 債権者への連絡
- 次順位相続人への連絡
- 相続放棄申述受理証明書の取得
上記のサービスは基本的に不要です。
債権者に連絡をする法律上の義務はありません。次順位相続人に関しても同じです。
相続放棄申述受理証明書は、相続登記や銀行の窓口等での相続手続をする場合のみ取得します。
※相続人は自分で取得できます。
関連記事を読む『相続放棄を連絡する必要はあるのか?』
6.さいごに
相続放棄費用とは、必ず発生する実費と専門家報酬です。必ず発生する実費も、誰が相続放棄をするかによって違います
自分で申請する場合は、アドバイスだけ専門家に貰うなどすると上手くいきやすいです。
すべてを専門家に依頼する場合は、早く依頼する方が安くなります。遅くなれば割増料金になることが多いです。
相続放棄は時間との勝負になるので、できるだけ早めに取り掛かってください。