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【遺産分割協議書に債務を記載】債権者には対抗できない!

遺産分割協議書に債務を記載
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亡くなった人に債務(借金など)があれば、遺産分割協議で負担者を決めることもあります。

ただし、相続人同士の話し合いだけでは、債権者には対抗できません。債権者は法定相続分の割合で、各相続人に請求可能です。

債権者に対抗するには、債務の負担者(割合)変更について承諾を得る必要があります。

また、遺産分割協議で債務者を変更しても、相続人が支払う保障はありません。相続人が支払わなくても、遺産分割協議の解除はできないです。

今回の記事では、遺産分割協議書と債務について説明しているので、遺産分割協議をする際の参考にしてください。

目次

  1. 遺産分割協議書には債務も記載できる
    1. 債務の負担割合を変更した場合の書き方
    2. 債務を遺産分割協議書に記載しないのも自由
  2. 債務を遺産分割協議書に記載しても債権者に対抗できない
    1. 相続債務は法定相続分で当然に分割される
    2. 債権者に対抗するには債権者の承諾
    3. 債権者には対抗できないが相続人同士では有効
  3. 債務を遺産分割協議書に記載する際の注意点
    1. 後日判明した債務についても記載しておく
    2. 相続人が債務負担を守らなくても解除できない
  4. 遺産分割協議で債務の負担者を変更する場合の対策
    1. 負債を全額返済してから遺産分割
    2. 債権者の承諾を得てから遺産分割
    3. 財産を相続しないなら相続放棄
  5. さいごに

1.遺産分割協議書には債務も記載できる

亡くなった人の負債も相続財産として、相続人が引き継ぎます。

そして、相続財産の分割方法を決める遺産分割協議で、債務の負担割合について決めることも可能です。

1-1.債務の負担割合を変更した場合の書き方

遺産分割協議により債務の負担割合を変更した場合、遺産分割協議書に記載できます。

以下は、債務の負担割合を変更した場合の記載例です。

遺産分割協議書

(省略)

Aは、下記記載の被相続人の負債をすべて負担する。

貸付年月日:平成○年○月○日
貸付金額:○○万円
債権者:○○銀行
返済期限:令和○年○月○日
利息:年○%

負債を細かく記載するのは、後から相続人同士で揉めないようにするためです。曖昧な記載にすると、後から勘違いしていたと主張される可能性があります。

1-2.債務を遺産分割協議書に記載しないのも自由

相続債務を遺産分割協議書に記載するかは、相続人の自由なので決まりはありません。

法定相続分以外の割合で債務を負担するなら、遺産分割協議書に記載する意味があります。

それに対して、相続債務を法定相続分の割合で負担するなら、わざわざ遺産分割協議書に記載する意味もないです。

 

2.債務を遺産分割協議書に記載しても債権者に対抗できない

勘違いしている人も多いですが、債務の負担割合を遺産分割協議書に記載しても、債権者には対抗できません。

2-1.相続債務は法定相続分で当然に分割される

相続債務は相続発生時に、法定相続分で当然に分割されます。

以下は、最高裁の判例です。

債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきである

出典:裁判所ウェブサイト(昭和34年6月19日最高裁判所第二小法廷判決の全文から抜粋)

遺産分割協議書に法定相続分とは違う割合で債務負担を記載しても、債権者には一切関係ありません。相続人同士で勝手に決めているだけです。

遺産分割協議に関係なく債権者は法定相続分の割合で請求

債権者は遺産分割協議書の記載に関わらず、法定相続分の割合で各相続人に請求できます。

2-2.債権者に対抗するには債権者の承諾

債務を負担する相続人を変更するなら、債権者の承諾を得る必要があります。債権者が負担割合の変更に承諾すれば、債務を負担しない相続人は免除されます。

ただし、債権者が負担割合の変更を認める保障はありません。

例えば、100万円を3人にそれぞれ請求できる場合と、300万円を1人に請求できる場合です。

債務者が1人の方が貸し倒れのリスクが高い

100万円を3人にそれぞれ請求だと、1人が支払えなくなっても、200万円は回収できます。

一方、300万円を1人に請求だと、1人が支払えなくなると、全額回収できなくなります。

相続債務を相続人の1人が負担すると、回収不能になる可能性が高くなるので、債権者側に認めるメリットが少ないです。

2-3.債権者には対抗できないが相続人同士では有効

遺産分割協議書に債務の負担割合を記載しても、債権者には対抗できません。

ですが、相続人同士の間では有効なので、負債を支払う義務は発生します。

他の相続人(債務を負担しない人)が債務を支払った場合、相続人(債務を負担する人)に対して請求できます。

例えば、相続人が3人(A・B・C)で借金が300万円、遺産分割協議によりAが債務を全額負担した場合です。

遺産分割協議で定めた債務負担も相続人同士では有効

Aが債務を支払わないので、Bが債権者の請求により債務を支払った場合、BはAに対して支払った額を請求できます。

債権者の承諾を得ていないくても、相続人同士では有効なので注意してください。

 

3.債務を遺産分割協議書に記載する際の注意点

相続債務を遺産分割協議書に記載するなら、注意点もあるので確認しておきましょう。

  • 後日判明した債務についても記載
  • 記載しても相続人が守る保障はない

3-1.後日判明した債務についても記載しておく

遺産分割協議書に債務負担者を記載するなら、後から判明した債務についても記載しておきましょう。

なぜなら、後から判明した債務を誰が負担するかで揉めやすいからです。

【例題】
相続人は3人(A・B・C)で、預貯金が500万円、借金が300万円。

相続人Aが借金を負担する代わりに、預貯金を全部相続するという遺産分割協議書を作成済みです。

ところが、後になって借金が追加で100万円見つかりました。

相続人B・Cは、相続人Aが追加の100万円も負担すると主張します。

一方、相続人Aは、追加の100万円は遺産分割協議書に記載されていないので、法定相続分で負担すると主張します。

相続人同士の主張が違うので、債務負担で揉める可能性が高いです。

上記の場合、相続人が100万円を支払わなければ、債権者は法定相続分の割合で相続人に請求します。

相続人同士で揉めないためにも、負債が後から判明した場合についても記載しましょう。

3-2.相続人が債務負担を守らなくても解除できない

遺産分割協議書に債務の負担割合を記載しても、相続人が守るかどうかは別問題です。

たとえ遺産分割協議で決めた負担割合を守らなくても、債務不履行を原因に遺産分割協議は解除(やり直し)できません。
※全員が合意するなら可能。

債務が支払われなければ、債権者は法定相続分の割合で各相続人に請求します。

遺産分割協議で債務の負担割合を決めるのは自由ですが、相続人が守る保障はありません。

 

4.遺産分割協議で債務の負担者を変更する場合の対策

遺産分割協議で債務の負担者(割合)を変更するなら、安全のために対策も考えておきましょう。

  • 負債を全額返済してから遺産分割
  • 債権者の承諾を得てから遺産分割
  • 相続しないなら相続放棄

それぞれ説明していきます。

4-1.負債を全額返済してから遺産分割

負債の負担割合を変更するよりも、負債を全額返済してから遺産分割する方が安全です。

例えば、預貯金が500万円で借金が400万円だったら、400万円を返済して残額100万円を相続人で分割します。

相続債務を返済してから遺産分割

債務を返済してから分割するので、相続人の債務不履行は起こらないです。

ただし、相続財産の内容によっては、遺産分割前に負債を全額返済するのが難しいでしょう。

4-2.債権者の承諾を得てから遺産分割

遺産分割協議で債務の負担割合を変更するなら、前もって債権者の承諾(確認)を得ておきましょう。

債権者の承諾を得てから遺産分割協議

債権者の承諾が得れるのであれば、遺産分割協議で債務の負担割合を変更しても、問題が起こる可能性は低いでしょう。

ただし、債権者の承諾が得れる保障はないので、得れない場合にどうするのか考える必要があります。

4-3.財産を相続しないなら相続放棄

負債だけでなく財産(現金や預貯金)も相続しないなら、遺産分割ではなく相続放棄も検討しましょう。

相続放棄をすれば相続人ではないので、負債を請求される可能性も無くなります。財産を相続するつもりがなければ、相続放棄した方が安全です。

ただし、相続順位の変更には注意してください。相続人の組み合わせによっては、相続放棄により相続人が変わります。

 

5.さいごに

今回の記事では「遺産分割協議書と債務」について説明しました。

亡くなった人の負債は法定相続分の割合で相続されますが、遺産分割協議で債務の負担割合を変更するのは自由です。

ただし、相続人同士で債務の負担割合を変更しても、債権者には対抗できません。債権者の承諾を得なければ、法定相続分の割合で請求されます。

遺産分割協議で決めた債務負担を守らなくても、遺産分割協議の解約はできません。遺産分割協議で債務の負担割合を変更するなら、対応策も考えておきましょう。