遺族年金を請求せずに放置しておくと、受給権も時効により消滅します。
遺族年金の権利は「基本権」と「支分権」の2つあり、いずれの権利も5年が時効期間です。
ただし、基本権に関しては、やむを得ない事情があれば、5年経過していても消滅しません。
今回の記事では、遺族年金の消滅時効について説明しているので、請求を忘れている場合は確認してください。
目次
1.遺族年金は5年経過で消滅時効となる
遺族年金の受給権にも、消滅時効が定められています。
- 消滅時効
- 一定期間を経過すると権利が消滅すること
以下は、国民年金法の条文です。
以下は、厚生年金保険法の条文です。
国民年金法は遺族基礎年金、厚生年金保険法は遺族厚生年金に関する法律です。
それぞれの条文では、遺族年金に関する2つの権利について、消滅時効を定めています。
- 基本権:遺族年金の給付を受ける権利
- 支分権:支払期月ごとに支給を受ける権利
どちらの権利も5年経過すると、時効により消滅します。
ただし、基本権と支分権で、消滅時効の起算日(いつから)が違います。
2.遺族年金に関する消滅時効の起算日
遺族年金の時効期間を計算する際は、起算日がいつなのかを確認してください。
2-1.遺族年金の基本権は死亡日の翌日から5年で時効
遺族年金の基本権は、死亡日の翌日から消滅時効が起算されます。
例えば、死亡日が令和5年5月23日であれば、翌日の令和5年5月24日が消滅時効の起算日です。
遺族年金の基本権が消滅すると、遺族年金は受給できなくなります。
ただし、【3.5年経過してから遺族年金を請求】で説明していますが、事情があれば5年経過しても基本権は消滅しません。
2-2.遺族年金の支分権は個別に時効がスタート
遺族年金の支分権は、支払日の翌月の初日が起算日です。
- 遺族年金の支払い日
- 偶数月(2・4・6・8・10・12)の15日
年6回の支給分について、個別に消滅時効がスタートします。
例えば、令和5年4月15日に支給される遺族年金の消滅時効は、令和5年5月1日からスタートします。
同じく、令和5年6月15日に支給される遺族年金であれば、令和5年7月1日からスタートです。
支分権は2ヶ月ごとに消滅していくので、請求忘れに気付いたらすぐに請求してください。
3.5年経過してから遺族年金を請求
遺族年金を請求せずに5年経過していても、諦めるのは早いです。
なぜなら、請求できなかった事情がある場合、基本権は消滅しない取り扱いだからです。
3-1.事情があれば遺族年金の基本権は消滅しない
遺族年金を受給する権利(基本権)は、死亡日の翌日から5年経過すると消滅時効が成立します。
ただし、やむを得ない事情により、時効完成前(5年経過まで)に請求できなかった場合は、時効消滅しない取り扱いになっています。
日本年金機構のホームページでは、以下のような理由が用意されています。
- 遺族年金を請求できると知らなかった
- 年金制度を理解していなかった
遺族年金の基本権に関しては、理由を説明すれば5年経過していても消滅しません。
3-2.遺族年金の支分権は5年経過ごとに消滅していく
遺族年金の支分権は基本権と違い、5年経過すると時効により消滅します。
例えば、死亡日の翌日から10年経過後に、遺族年金を請求した場合。
やむを得ない事情(知らなかった等)があれば、基本権は消滅しません。
ですが、支分権は5年経過ごとに消滅するので、遡って請求できる遺族年金は5年分です。
※遡って5年間は時効が完成していない。
遺族年金に気付いた場合は、すぐに請求手続きをしてください。
4.失踪宣告と遺族年金に関する消滅時効
失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、受給要件を満たしていれば、遺族年金は受給できます。
ただし、消滅時効の起算日には注意が必要です。
失踪宣告により遺族年金が発生する場合、消滅時効の起算日は「死亡とみなされた日の翌日」となります。審判確定日ではありません。
つまり、失踪宣告の審判が確定した時点で、すでに消滅時効はスタートしています。
死亡とみなされた日の翌日から5年経過していなければ、遡って遺族年金を請求できる点は同じです。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡でも遺族年金は受給できる』
5.遺族年金と死亡一時金は時効期間が違う
遺族年金と死亡一時金は、どちらも遺族に対する給付になります。
ただし、遺族年金の時効期間(5年)と違い、死亡一時金の時効期間は2年です。
遺族年金なら後から気付いても、遡って5年分は請求できます。
ですが、死亡一時金を請求せずに2年経過すると、時効により消滅します。年金と違って一時金なので、権利が消滅すると受給できません。
消滅時効に関しては、死亡一時金の方が厳しいので、1号被保険者が亡くなったら必ず確認しておきましょう。
関連記事を読む『【死亡一時金の時効は2年】死亡日の翌日からスタートする』
6.まとめ
今回の記事では「遺族年金の消滅時効」について説明しました。
遺族年金も権利なので、5年間請求しなければ時効により消滅します。
遺族年金は2つの権利に分かれているので、消滅時効の起算日もそれぞれ違います。
- 基本権:死亡日の翌日から起算
- 支分権:支払い日の翌月の初日から起算
ただし、基本権に関しては、請求できなかった事情があれば、5年経過しても消滅しない取り扱いです。