生死不明者を死亡とする制度には、認定死亡と失踪宣告の2つがあります。
どちらの制度であっても、戸籍に死亡が記載されるので相続も発生します。
ただし、生死不明者を死亡とする点は同じですが、その他の点は違う部分が多いです。
- 根拠法令
- 判断機関
- 生死不明期間
- 取消方法
今回の記事では、認定死亡と失踪宣告の違いを4つ説明しているので、生死不明者がいるなら参考にしてください。
1.認定死亡と失踪宣告では根拠となる法令が違う
認定死亡と失踪宣告の違い1つ目は、根拠となる法令です。
- 認定死亡:戸籍法89条が根拠法令
- 失踪宣告:民法30条が根拠法令
それぞれ簡単に説明していきます。
1-1.認定死亡は戸籍法89条が根拠
認定死亡は戸籍法89条が根拠となります。
以下は、戸籍法の条文です。
条文を読むと分かりますが、認定死亡と直接は記載していません。あくまでも、認定死亡の根拠となる条文です。
1-2.失踪宣告は民法30条が根拠
失踪宣告は民法30条が根拠となります。
以下は、民法の条文です。
失踪宣告は民法に直接記載されています。
失踪宣告に関する条文は、30条・31条・32条だけなので、失踪宣告を検討しているなら一度は目を通しておきましょう。
関連記事を読む『失踪宣告に関する民法の条文は30条・31条・32条を確認』
2.認定死亡と失踪宣告では死亡を判断する機関が違う
認定死亡と失踪宣告の違い2つ目は、死亡を判断する機関です。
- 認定死亡:行政機関が判断
- 失踪宣告:家庭裁判所が判断
生死不明者を死亡と判断する機関は、それぞれ違うので説明していきます。
2-1.認定死亡は行政機関が判断する
認定死亡を判断するのは各行政機関です。
例えば、船に乗っていた人が海難事故にあい、遺体が見つからなかった場合です。
海難事故に関しては海上保安庁が認定機関なので、死亡していると判断した場合は市役所等に死亡の報告をします。
以下は、海上保安庁の判断基準です。
認行方不明者が亡くなっていると判断できなければ、海上保安庁は認定死亡をしません。
認定死亡の方が失踪宣告よりも、死亡の判断基準が厳しいです。
2-2.失踪宣告は家庭裁判所が判断する
失踪宣告を判断するのは家庭裁判所です。
失踪宣告の申し立てを受けた家庭裁判所は、登録機関に生死不明者の記録が残っていないか調査します。調査しても生死が不明であれば、家庭裁判所の審判により死亡とみなされます。
認定死亡とは違い、失踪宣告は生死不明の期間が一定以上あれば問題ありません。普通失踪と特別失踪で期間が違うのですが、詳しくは次章をお読みください。
関連記事を読む『【失踪宣告の調査は2つある】それぞれ微妙に目的が違う』
3.認定死亡と失踪宣告では生死不明の期間が違う
認定死亡と失踪宣告の違い3つ目は、生死不明の期間です。
- 認定死亡:行政機関により違う
- 失踪宣告:普通失踪と特別失踪で違う
認定死亡と失踪宣告では、前提となる生死不明の期間が違います。
3-1.海上保安庁が認定死亡するには3ヶ月以上
認定死亡に必要な生死不明の期間は、行政機関(担当機関)により違います。
海上保安庁(海難事故)に関しては、死亡認定事務取扱規定で海難発生時から3ヶ月以上と決まっています。
例えば、乗船していた漁船から転落して、3ヶ月以上経っても遺体が見つからない場合です。
海上保安庁が死亡の可能性が高いと判断すると、生死不明者は死亡認定されます。
3-2.家庭裁判所の失踪宣告は原因により期間が違う
失踪宣告に必要な生死不明の期間は、生死不明になった原因により違います。
- 普通失踪:原因は問わず生死不明が7年以上
- 特別失踪:危難に遭遇して生死不明が1年以上
普通失踪は生死不明になってから7年以上必要です。一方、特別失踪なら危難が去ってから1年以上で可能になります。
例えば、乗船していた漁船から転落して、1年以上経っても遺体が見つからなければ、失踪宣告の申し立てが可能です。
生死不明になった原因が同じでも、認定死亡と特別失踪では期間が違うので注意してください。
4.認定死亡と失踪宣告では取消しの方法が違う
認定死亡と失踪宣告の違い4つ目は、取消しの方法です。
認定死亡または失踪宣告が認められても、後から本人が見つかることもあります。
- 認定死亡:生存の確認で取消し
- 失踪宣告:取消しの審判が必要
本人が生きていた場合、認定死亡と失踪宣告では死亡を取り消す方法が違います。
4-1.認定死亡は生存が確認できれば取り消される
認定死亡により死亡とされた人が生存していた場合、本人の生存が確認できれば戸籍の記載は訂正されます。
生存を確認した行政機関が戸籍の訂正手続きをするので、本人や家族がするのは生存を証明するだけになります。
ただし、具体的にどのような証明をするのかは不明です。
4-2.失踪宣告を取り消すには家庭裁判所の審判
失踪宣告により死亡とみなされた人が生存していた場合、本人の生存を証明するだけでは戸籍の記載は訂正されません。
なぜなら、失踪宣告は家庭裁判所の審判により認められているからです。失踪宣告を取り消すにも、家庭裁判書の審判が必要になります。
失踪宣告の取り消しは、本人または利害関係人が申立人です。
失踪宣告の取消の審判が確定したら、申立人が市役所等に取消の届出をします。
関連記事を読む『失踪宣告を取消すには家庭裁判所の手続きが必要』
5.さいごに
今回の記事では「認定死亡と失踪宣告の違い」について説明しました。
認定死亡と失踪宣告は、生死不明者を死亡とする点は同じですが、その他の部分は違う点が多いです。
認定死亡 | 失踪宣告 | |
---|---|---|
根拠法令 | 戸籍法89条 | 民法30条 |
判断機関 | 行政機関 | 家庭裁判所 |
生死不明 | 行政機関により違う ※海難事故は3ヶ月 | 普通失踪:7年 特別失踪:1年 |
取消し | 生存の証明 | 取消の審判 |
認定死亡と失踪宣告では違う点が多いので、生死不明者がいるなら確認しておいてください。