同性カップルにとって遺言書を書くことは重要です。
なぜなら、正しい遺言書を書けば、同性パートナーに財産を残すことができるからです。
遺言書を書く際に同性婚ならではの注意点があります。特に気を付けるべきポイントは7つです。すでに遺言書を書いている場合は確認してみてください。
遺言書は正しく書くだけで、同性パートナーに財産を残すことができます。まだ書いていない場合は必ず書いておきましょう。
目次
1.遺言書は自筆と公正証書の2択
1つ目のポイントは、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶかです。
どちらの遺言書にも、メリット・デメリットがあります。
同性カップルにとって一番大事なことは、無事にパートナーへ財産が残せるかどうかだと思います。
ですので、遺言書を選ぶ際に重要視するのも安全性ではないでしょうか。
安全性は公正証書遺言の方が高いです。
実際、「どちらの遺言書が良いですか?」と聞かれたら、公正証書遺言と答えています。
もちろん、家族構成や相続財産等を考慮したうえで、自筆証書遺言を勧めるケースもあります。費用面でも差があるので作成のタイミングによっても変わります。
関連記事を読む『同性カップルが選ぶ遺言書|どちらが良いのかを考える』
2.遺留分を過度に恐れる必要はない
2つ目のポイントは、遺留分を過度に恐れる必要はないです。
遺留分とは、相続人に保障されている最低限の相続分です。
そして、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。
同性婚の遺言書で遺留分が問題になるのは、現実的には親の遺留分です。なぜなら、兄弟姉妹には遺留分がないからです。
親だけが相続人なら遺留分は全体の3分の1です。
3分の2まではパートナーに遺贈しても、遺留分の侵害にはなりません。
両親が健在の場合は遺留分を意識して、亡くなっている場合は全部遺贈しても大丈夫です。正しく書いた遺言書が残っていれば、財産を取られることはありません。
関連記事を読む『同性婚と遺留分|パートナーにとって迷惑な制度』
3.遺留分侵害額請求に備える
3つ目のポイントは、遺留分侵害額請求に備えるです。
遺留分侵害額請求に、どのように備えるかは2通りの考え方があります。
3-1.遺留分に気を付けて遺言書を書く
遺言書を書くときに、遺留分を計算して遺贈するという考え方です。
遺留分を侵害していない限り、相続人は遺言書の内容に納得するしかありません。
昔は遺留分に気を付けて遺言書を書く方法が多かったはずです。
3-2.遺留分を侵害しても全部遺贈する
遺言書で全部遺贈して、遺留分侵害額請求が来たらお金を払うという考え方です。
遺留分侵害額請求権は金銭請求権です。したがって、現金さえ準備できていれば請求されても問題ありません。
遺留分侵害額請求をするかどうかは、権利者(親)の気持ち次第なので請求されない場合もあります。
どちらが正しいではなく、親子関係などを考えて選んだほうがいいです。
4.遺贈の記載に注意する
4つ目のポイントは、遺贈の記載に注意するです。
同性パートナー遺贈する場合は、遺言書の記載に注意が必要です。
4-1.遺贈は特定遺贈と包括遺贈の2つ
遺贈は2種類あります。
特定遺贈とは相続財産を、具体的に特定して遺贈することです。
〇〇銀行〇〇支店の預金を遺贈する。
包括遺贈とは、財産の全部または一部を遺贈するなどの割合で、遺贈することです。
- 財産を全部遺贈する(全部包括遺贈)
- 財産の2分の1を遺贈する(一部包括遺贈)
同じ遺贈でも違う部分が多いので、遺言書を作成する際は気を付けてください。
関連記事を読む『特定遺贈と包括遺贈の違いを5つの項目で比較』
4-2.相続発生後の手続きが違う
同じ遺贈ですが、相続発生後の手続きが違ってきます。
一部包括遺贈の場合は、財産の内容によっては遺産分割協議が必要です。残されたパートナーと家族が、具体的な相続財産の分け方について話し合いをします。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判になります。
パートナーと家族が話し合いをすることにより、余計なトラブルを招く恐れがあります。遺贈は特定遺贈か全部包括遺贈にするべきです。
関連記事を読む『同性パートナーに遺贈|記載に気を付けないとトラブル発生』
5.遺言執行者を指定する
5つ目のポイントは、遺言執行者を指定するです。
遺言書で遺言執行者を指名することができます。遺言執行者とは、遺言を実現するために行動する人です。
相続手続の中には、遺言執行者を指名しておかなければ、不便になることがあります。
5-1.遺言執行者がいないと不便
不動産を遺贈した場合は、相続人と受贈者(パートナー)が共同で登記をします。遺言執行者がいる場合は、遺言執行者が受贈者と共同で登記します。
銀行口座の解約手続きでは、遺言書があっても相続人全員の印鑑等を求めてくる銀行もあります。遺言執行者がいる場合は相続人の印鑑は不要です。
5-2.誰を遺言執行者に指名するか
パートナーを遺言執行者に指名しておけば、相続人の関与を受けることなく相続手続きを進めることができます。受贈者を遺言執行者に指名しても大丈夫です。
相続で揉めそうな場合は、専門家を遺言執行者に指名します。そうすることで、パートナーを矢面に立たせず守ることができます。
6.祭祀主宰者を指定する
6つ目のポイントは、祭祀主宰者を指定するです。
祭祀財産を受け継ぐ人を祭祀主宰者といいます。
祭祀財産とは、亡くなった人の位牌、仏壇、墓石等です。パートナーの遺骨も祭祀財産に含まれます。
祭祀財産は相続財産とは区別されるので、相続で引き継ぐわけではありません。
パートナーに祭祀財産を引き継いでもらいたい場合は、遺言書で祭祀主宰者に指定しておきましょう。
祭祀主宰者を生前に指定することもできますが、公正証書等の書面にしてください。口約束では第3者に証明するのが難しいです。
関連記事を読む『同性カップルでお墓を買う|パートナーと一緒に眠る準備』
7.付言事項を書く
7つ目のポイントは、付言事項を書くです。
遺言書には付言事項を書くことができます。
付言事項には法的拘束力はありませんが、トラブルを防ぐ効果があると言われています。
家族に同性パートナーのことを話していない場合、付言事項で記載している人もいます。
なぜなら、付言事項を書くことにより遺贈の理由が分かるので、遺贈に納得する人もいるからです。
司法書士から一言家族に秘密にしておく場合は、遺贈の理由を別に考えておく必要があります。
8.さいごに
同性婚の遺言書において、特に気を付けるべきポイントを7つ説明しました。
遺言執行者や祭祀主催者など聞きなれない言葉もありますが、同性カップルの遺言書では重要ですので覚えておいてください。
遺言書を書くタイミングは、パートナーに財産を残したいと思ったときです。遺言書を書くのに早すぎるということはないです。
遺言書は何度でも書き直すことができます。法改正があり同性婚が認められたときは、配偶者として書き直しをすれば大丈夫です。
残されるパートナーのためにも遺言書は書くべきです。遺言書を書く権利は平等に認められています。