同性パートナーに財産を残したいなら、遺言書を作成してください。
あなたの意思表示(遺言書)は、法定相続人よりも優先されるからです。
ただし、遺留分権利者が存在すると、パートナーに金銭を請求する可能性はあります。
同性カップルにとって遺言書は重要なので、今回の記事をしっかりと確認しておいてください。
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1.遺言書は同性パートナーに残す意思表示
遺言書とは、あなたの意思表示です。
そして、意思表示(遺言書)は、相続人よりも優先されます。
意思表示が無いと相続人が財産取得
あなたの意思表示(遺言書)が有れば、相続財産はパートナーに残せます。
一方、意思表示が無ければ、法律にしたがって法定相続人が取得します。
同性パートナーに財産を残したいのであれば、遺言書を作成してください。
遺言書以外の意思表示では残せない
同性パートナーに財産を残す意思表示を、口頭や書面で表しても効力は発生しません。
※死因贈与契約は除く。
家族に対して口頭で財産を残す意思表示をしても、遺言書を作成していなければ、パートナに財産は移らないです。
また、単なる書面(遺言書の要件を満たしていない)では、パートナに財産は移りません。
2.同性パートナーに財産を遺贈する
遺言書でパートナーに財産を残すことを遺贈と言います。
遺贈は2種類あり違う部分も多いので、遺言書を作成する前に確認しておいてください。
関連記事を読む『特定遺贈と包括遺贈の違いを5つの項目で比較』
2-1.特定の財産だけ残すなら特定遺贈
特定遺贈とは、同性パートナーに特定の財産だけを残す遺贈です。
遺言書を作成する際は、誰が読んでも分かるように、具体的に記載します。
遺言者は、下記の金融資産を、パートナーである○○○○(生年月日、住所)に遺贈する。
記
〇〇銀行〇〇支店
普通預金
名義人 〇〇
口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
ゆうちょ銀行の通常貯金
名義人 〇〇
記号 〇〇〇〇〇 番号 〇〇〇〇〇〇〇〇
遺言者は、下記の不動産を、パートナーである○○○○(生年月日、住所)に遺贈する。
記
(土地の表示)
所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
地 番 〇〇番
地 目 宅地
地 積 100.00㎡
(建物の表示)
所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地
家屋番号 〇〇番
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺1階建
床面積 80.00㎡
不動産の場合は登記簿を取り寄せて、不動産登記簿と同じように記載します。
*住所表記と登記簿上の表記は違うので注意してください。
関連記事を読む『【遺言書で遺贈】文例を交えて「誰に」「何を」が分かる書き方を説明』
特定遺贈だと不動産取得税が発生
不動産を特定遺贈で残すと、パートナーに不動産取得税が課税されます。
一方、包括遺贈だと、不動産取得税は課税されません。
同性パートナーに不動産を遺贈で残す場合は、不動産取得税に気を付けてください。
関連記事を読む『同性カップルと不動産|買うのも大変だが残すのも大変』
2-2.すべての財産を残すなら包括遺贈
包括遺贈とは、同性パートナーに割合で財産を残す遺贈です。
- 全部包括遺贈
- 一部包括遺贈
同性パートナーに全財産を残す場合は、全部包括遺贈となります。
遺言者は、全財産を、パートナーである○○○○(生年月日、住所)に包括遺贈する。
特定遺贈よりも文字数が少ないので、自筆証書遺言にするなら楽です。
同性パートナーに一部包括遺贈は危険
同性パートナーに一部包括遺贈するのは、トラブルの元になるので止めた方が良いです。
遺言者は、全財産の2分の1を、パートナーである○○○○(生年月日、住所)に包括遺贈する。
上記のような遺言書を作成すると、同性パートナーと相続人で遺産分割協議が必要になります。
相続人が協力的であれば別ですが、揉めてしまうと相続手続きが進みません。
同性パートナーに財産を残すなら、特定遺贈または全部包括遺贈にするべきです。
3.同性カップルの遺言書よりも遺留分が優先
同性パートナーのために遺言書を作成しても、遺留分の方が優先されます。
- 遺留分
-
相続人に保障された相続分
たとえ全財産を同性パートナーに遺贈しても、遺留分権利者は遺留分を請求できます。
したがって、遺言書を作成する際は、遺留分にも注意してください。
3-1.兄弟姉妹は遺留分権利者に含まれない
相続人すべてが遺留分権利者ではなく、兄弟姉妹は除かれています。
- 配偶者
- 子ども
- 直系尊属(親)
同性パートナーの相続人が兄弟姉妹だけであれば、遺言書を作成する際に遺留分を気にする必要はないです。
一方、子ども・直系尊属がいる場合は、遺留分を気にしてください。
3-2.同性パートナーが請求されるのは金銭
遺留分を侵害された相続人は、財産の取得者(同性パートナー)に遺留分侵害額請求ができます。
ただし、請求できるのは金銭であり、遺贈の対象物は請求できないです。
支払いに充てる現金が用意できているのなら、遺言書でパートナーに全部遺贈しても問題ありません。
3-3.親族の遺留分侵害額請求に備える
同性パートナーの相続人に遺留分権利者がいるなら、遺留分侵害額請求に備える必要があります。
- 遺留分を侵害しないように遺言書を書く
- 請求時の支払い用に現金を用意しておく
遺留分を侵害しないように遺言書を書く
遺言書を作成する際に、遺留分を侵害しない内容にするという対策です。
同性パートナーに財産を遺贈しても、遺留分を侵害していなければ、相続人は納得するしかありません。
請求時の支払い用に現金を用意しておく
遺留分を気にせず遺贈して、請求が来たら金銭を支払うという対策です。
あらかじめ、遺留分の支払い用に現金を用意できていれば、請求されても特に問題はありません。
ちなみに、相続人から請求がなければ、金銭を支払う必要はないです。
4.同性カップルにとって重要な遺言事項
同性カップルが作成する遺言書には、遺贈以外にも重要なポイントがあります。
- 遺言執行者の指定
- 祭祀承継者の指定
それぞれ説明していきます。
4-1.遺言執行者がいないとパートナーが困る
同性カップルが遺言書を作成する場合、遺言執行者が重要になります。
- 遺言執行者
-
遺言書の内容を実現するために手続きをする人
同性パートナーに財産を遺贈する場合、遺言執行者がいないと面倒な事態になります。
遺言執行者がいないと手間がかかる
遺言書で遺言執行者が指定されていないと、同性パートナーへの財産移転に手間がかかります。
不動産の遺贈登記は、相続人と受贈者(パートナー)で共同申請です。
また、銀行によっては、口座の手続きをするのに、相続人全員の署名捺印を求めてくるケースもあります。
遺言執行者が指定されていないと、相続手続きに手間がかかるので、注意してください。
誰を遺言執行者に指名するか
パートナーを遺言執行者に指名しておけば、相続人の関与を受けることなく相続手続きを進めることができます。受贈者を遺言執行者に指名しても大丈夫です。
ただし、相続で揉めそうな場合は、専門家を遺言執行者に指定します。パートナを矢面に立たせない配慮です。
4-2.お墓をパートナーに残すなら祭祀承継者
祭祀財産を受け継ぐ人を祭祀主宰者といいます。
- 祭祀財産
-
亡くなった人の位牌、仏壇、墓石等のこと
祭祀財産は相続財産とは区別されるので、相続で引き継ぐわけではありません。
パートナーに祭祀財産を引き継いでもらう場合は、遺言書で祭祀主宰者に指定しておきましょう。
もし、生前に祭祀主宰者を指定するなら、公正証書等の書面にしてください。口約束では第3者に証明するのが難しいです。
関連記事を読む『同性カップルでお墓を買う|パートナーと一緒に眠る準備』
5.同性カップルが選ぶ遺言書はどっち
同性パートナーのために遺言書は作成したいが、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選べば良いのか判断できず、後回しになっている人は多いです。
- 自筆証書遺言
-
自分で作成する遺言書
- 公正証書遺言
-
公証人が作成する遺言書
どちらの遺言書も法的な効力は変わりません。ですが、効力以外は違う部分が多いです。
5-1.自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
簡単にですが、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて、以下の表にまとめています。
自筆証書 | 公正証書 | |
---|---|---|
作成者 | 本人 | 公証人 |
費用 | 少ない | 多い |
手間 | 少ない | 多い |
不備 | ある | ない |
紛失 | ある | ない |
検認 | 必要 | 不要 |
遺言書の作成費用や手間は、公証人が関わるので公正証書遺言の方が多いです。
一方、作成した遺言書の不備や紛失は、公正証書遺言なら完全に防げます。
遺言書を相続手続きに使用する場合、自筆証書遺言は検認が必要ですが、公正証書遺言なら不要です。
どちらの遺言書にも、メリット・デメリットがあるので、理解したうえで選んでください。
5-2.親族と揉めそうなら公正証書遺言
同性カップルが遺言書を作成するなら、亡くなった後に揉めるかどうかも考慮してください。
- カミングアウトの有無
- 家族の同性愛に対する考え方
- 法定相続人の有無
遺言書の信頼性が高いのは公正証書遺言なので、揉めそうなら公正証書遺言を選ぶべきです。
一方、法定相続人が1人もいないのであれば、揉める可能性も少ないので自筆証書遺言でも問題ないです。
ちなみに、法定相続人が1人もいないからといって、特別縁故者制度を当てにするのは止めておきましょう。本人の知らない相続人が存在する可能性はあるからです。
5-3.緊急なら自筆証書遺言を先に作成する
同性パートナーが体調を崩して病院に行くと、死期が遠くないと診断されるケースもあります。
もし、遺言書を作成していないなら、先に自筆証書遺言を作成してください。
なぜかというと、公正証書遺言の準備をしている間に、亡くなる人もいるからです。
※実際に相談を受けた経験があります。
万が一、公正証書遺言の作成が間に合わない可能性を考慮して、簡単な内容でも良いので自筆証書遺言を作成します。
遺言書
遺言者は、全財産をパートナーである○○○○(生年月日・住所)に遺贈する。
公正証書遺言の準備をしていますが、念のため自筆証書遺言も作成しておきます。
令和○年○月○日
○○○○ ㊞
上記のような内容であっても、法律上は有効に成立します。
公正証書遺言の作成が間に合えば、上記の自筆証書遺言を撤回すればよいです。
6.同性カップルが遺言書を作成する時期
最後に、同性カップルが遺言書を作成する時期について、私の考えを説明しておきます。
まずは、以下の質問に答えてください。
今、あなたが亡くなった場合、パートナーは財産が取得できなくて困りますか?
パートナーが困るのであれば遺言書を作成してください。
逆に、あなたの財産が取得できなくても、困らないなら無理して作成する必要もないでしょう。
遺言書を作成する理由は複数ありますが、パートナーのためという部分が一番大きいはずです。
したがって、パートナーが困るのであれば、今すぐ作成してください。
7.まとめ
今回の記事では「同性カップルの遺言書」について説明しました。
同性パートナーは相続人ではないので、財産を残すには相続対策(遺言書等)が必須です。
遺言書の効力は、自筆証書遺言と公正証書遺言どちらを選んでも同じですが。安全性を考慮すると公正証書遺言となります。
ただし、金銭的に余裕が無い場合や、緊急時には自筆証書遺言を作成してください。
遺言書を作成する時期に決まりはありません。ただし、あなたが亡くなってパートナーが困るなら、今すぐ作成しましょう。