公正証書遺言を作成しても、遺留分を請求される可能性はあります。
なぜなら、遺言書を公正証書で作成しても、相続人の遺留分は存在するからです。
遺言書の内容が相続人の遺留分を侵害していれば、公正証書遺言であっても侵害額を請求できます。
遺言書の種類と遺留分は無関係です。
今回の記事では、公正証書遺言と遺留分について説明しているので、相続の参考にしてください。
目次
1.公正証書遺言にしても遺留分は存在する
遺言書を公正証書で作成しても、遺留分は存在します。
遺留分は相続人に保障された最低限の相続分なので、公正証書遺言の有無では変わりません。
1-1.公正証書遺言の有無と遺留分は無関係
公正証書遺言の有無と遺留分は無関係です。
遺言書を公正証書で作成しても、相続人の遺留分には何の影響もありません。
【事例1】
配偶者と子ども(1人)が相続人の場合。
公正証書遺言
遺言者は、遺言者の有する全財産を知人○○(生年月日、住所)に遺贈する。
上記のような公正証書遺言を作成しても、相続人には遺留分が存在します。
- 配偶者|4分の1
- 子ども|4分の1
配偶者と子どもは遺留分侵害額を請求できます。
【事例2】
子ども(長男・二男・三男)が相続人の場合。
公正証書遺言
遺言者は、遺言者の有する全財産を長男○○(生年月日)に相続させる。
上記のような公正証書遺言を作成しても、相続人には遺留分が存在します。
- 二男|6分の1
- 三男|6分の1
子どもは遺留分侵害額を請求できます。
遺言書を公正証書で作成しても、遺留分は存在するので気を付けてください。
関連記事を読む『遺留分の割合|9つの組み合わせを覚えておこう』
1-2.遺言書とは関係なく兄弟姉妹に遺留分は無い
勘違いしている人も多いですが、兄弟姉妹に遺留分はありません。
遺言書を公正証書で作成したから遺留分が無くなるのではなく、そもそも遺留分が存在しません。
したがって、全財産を第3者に遺贈しても、遺留分の侵害は発生しないです。
相続人が兄弟姉妹の場合は、遺留分を気にする必要がありません。
2.遺留分侵害なら公正証書遺言でも請求可能
すでに説明したとおり、公正証書遺言を作成しても、遺留分は存在します。
そして、遺言書の内容が遺留分を侵害しているなら、遺言書が公正証書であっても侵害額を請求できます。
2-1.遺留分侵害額請求権の行使は相続人の自由
公正証書遺言の内容が遺留分を侵害しているなら、相続人は遺留分侵害額請求権を行使できます。
【事例】
配偶者と子ども(1人)が相続人で、財産額が1億円の場合。
公正証書遺言
遺言者は、遺言者の有する全財産を知人○○(生年月日、住所)に遺贈する。
上記のような公正証書遺言を作成しても、相続人は遺留分侵害額を請求できます。
- 配偶者|4分の1(2,500万円)
- 子ども|4分の1(2,500万円)
相続人は遺留分侵害額を、受遺者である知人に請求可能です。
公正証書遺言で遺贈しても、遺留分侵害額請求は可能なので、勘違いしないように注意してください。
関連記事を読む『遺留分侵害額請求権とは金銭を請求する権利』
2-2.公正証書に請求禁止を記載しても効力は無い
公正証書遺言に遺留分侵害額請求の禁止を記載しても、法的効力はありません。
遺留分侵害額請求をするかは、相続人(遺留分権利者)の自由です。
【事例】
子ども(長男・二男・三男)が相続人で、財産額が1億2,000万円の場合。
公正証書遺言
遺言者は、遺言者の有する全財産を長男○○(生年月日)に相続させる。
二男および三男の遺留分侵害額請求を禁止する。
上記のような公正証書遺言を作成しても、相続人は遺留分侵害額を請求できます。
- 二男|6分の1(2,000万円)
- 三男|6分の1(2,000万円)
遺留分侵害額を請求するかは、相続人が決めます。
遺留分侵害額請求について記載しても、法的効力は無いので注意してください。
3.遺留分の規定は公正証書遺言にすべて適用
遺留分に関する規定は、公正証書遺言にもすべて適用されます。
上記の規定は、遺言書が自筆証書遺言でも公正証書遺言でも同じです。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
---|---|---|
権利者 | 配偶者 子ども 直系尊属 |
配偶者 子ども 直系尊属 |
割合 | 法定相続分の 2分の1 |
法定相続分の 2分の1 |
放棄 | 生前は許可 死後は自由 |
生前は許可 死後は自由 |
時効 | 知ってから1年 相続開始から10年 |
知ってから1年 相続開始から10年 |
遺言書を公正証書で作成しても、遺留分権利者は存在します。
遺留分の割合は変化しません。遺留分の時効期間も同じです。
遺言書の種類で、遺留分の有利・不利は発生しません。
4.公正証書遺言の価値は遺留分以外の部分
遺言書を公正証書で作成しても、遺留分が同じなら意味が無いと思ったかもしれません。
あるいは、公証人手数料がもったいないから、自筆証書で作成しようと考える人もいるでしょう。
ですが、公正証書遺言の価値(メリット)は、遺留分以外の部分です。
- 自分で書く必要がない
- 無効になる可能性が低い
- 原本が保管される
- 検認が不要
遺言書を公正証書にするのは、遺留分のためではなく、その他の部分にメリットが多いからです。
遺留分対策は遺言書の種類ではなく、別の方法でする必要があります。
5.まとめ
今回の記事では「公正証書遺言と遺留分」について説明しました。
遺言を公正証書で作成しても、相続人の遺留分は存在します。
ですので、遺言書の内容が遺留分を侵害していれば、遺留分権利者は侵害額を請求できます。
遺留分の規定は、公正証書遺言と自筆証書遺言どちらにも適用されます。
公正証書遺言なら遺留分を請求されないと、勘違いしないように注意してください。
公正証書遺言と遺留分に関するQ&A
- Q.遺言書が公正証書でも遺留分は請求できますか?
- A.できます。遺言書の種類は関係ありません。
- Q.公正証書遺言と自筆証書遺言で遺留分に違いはありますか?
- A.ありません。どちらでも同じです。