亡くなった人が配偶者に財産を残さなかった場合でも、配偶者には遺留分があるので安心してください。
なぜなら、侵害された遺留分については、財産取得者に請求できるからです。
配偶者の遺留分は、相続人の組み合わせで決まります。組み合わせにより遺留分の割合が違うので、請求する際は注意してください。
今回の記事では、配偶者の遺留分について説明しているので、しっかりと確認しておきましょう。
1.配偶者の遺留分は組み合わせで決まる
配偶者の遺留分は、相続人の組み合わせで決まります。
主な組み合わせは、以下の4つです。
- 配偶者のみ
- 配偶者と子ども
- 配偶者と直系尊属
- 配偶者と兄弟姉妹
相続人の組み合わせにより、配偶者の遺留分が違うので注意してください。
関連記事を読む『遺留分の割合|9つの組み合わせを覚えておこう』
1-1.相続人が配偶者のみなら2分の1
まずは、相続人が配偶者だけの場合を説明します。
相続人が配偶者のみであれば、遺留分は相続財産の2分の1です。
【事例1】
相続財産が1,000万円で、第3者に全財産を遺贈した場合。
※配偶者の取得金額は0円。
1,000万円×2分の1=500万円(遺留分)
500万円ー0円=500万円(侵害額)
配偶者は第3者に500万円を請求できます。
【事例2】
相続財産が1,000万円で、第3者に800万円を遺贈した場合。
※配偶者の取得金額は200万円。
1,000万円×2分の1=500万円(遺留分)
500万円-200万円=300万円(侵害額)
配偶者は第3者に300万円を請求できます。
相続人が配偶者のみであれば、遺留分は2分の1です。
1-2.相続人が配偶者と子なら4分の1
次に、相続人が配偶者と子の場合を説明します。
相続人が配偶者と子であれば、配偶者の遺留分は4分の1です。
【事例1】
相続財産が1,000万円で、第3者に全財産を遺贈した場合。
※配偶者の取得金額は0円。
1,000万円×4分の1=250万円(遺留分)
250万円ー0円=250万円(侵害額)
配偶者は第3者に250万円を請求できます。
【事例2】
相続財産が1,000万円で、配偶者に100万円、子どもに900万円相続させた場合。
※配偶者の取得金額は100万円。
1,000万円×4分の1=250万円(遺留分)
250万円-100万円=150万円(侵害額)
配偶者は子どもに150万円を請求できます。
子どもの人数に関わらず、配偶者の遺留分は4分の1です。
関連記事を読む『子供には遺留分が認められる|割合は子の人数によって違う』
1-3.相続人が配偶者と直系尊属なら3分の1
続いて、相続人が配偶者と直系尊属の場合を説明します。
相続人が配偶者と直系尊属であれば、配偶者の遺留分は3分の1です。
【事例1】
相続財産が1,200万円で、第3者に全財産を遺贈した場合。
※配偶者の取得金額は0円。
1,200万円×3分の1=400万円(遺留分)
400万円ー0円=400万円(侵害額)
配偶者は第3者に400万円を請求できます。
【事例2】
相続財産が1,200万円で、配偶者に200万円、直系尊属に1,000万円相続させた場合。
※配偶者の取得金額は200万円。
1,200万円×3分の1=400万円(遺留分)
400万円-200万円=200万円(侵害額)
配偶者は直系尊属に200万円を請求できます。
直系尊属の人数に関わらず、配偶者の遺留分は3分の1です。
関連記事を読む『【遺留分は直系尊属にもある】父母や祖父母が健在なら注意!』
1-4.相続人が配偶者と兄弟姉妹なら2分の1
最後に、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合を説明します。
相続人が配偶者と兄弟姉妹であれば、配偶者の遺留分は2分の1です。兄弟姉妹には遺留分がありません。
【事例1】
相続財産が1,000万円で、第3者に全財産を遺贈した場合。
※配偶者の取得金額は0円。
1,000万円×2分の1=500万円(遺留分)
500万円ー0円=500万円(侵害額)
配偶者は第3者に500万円を請求できます。
【事例2】
相続財産が1,000万円で、配偶者に200万円、子どもに800万円相続させた場合。
※配偶者の取得金額は200万円。
1,000万円×2分の1=500万円(遺留分)
500万円-200万円=300万円(侵害額)
配偶者は兄弟姉妹に300万円を請求できます。
兄弟姉妹の人数に関わらず、配偶者の遺留分は2分の1です。
関連記事を読む『兄弟姉妹に遺留分は認められない!他に相続人がいなくても同じ』
2.遺留分があるのは法律上の配偶者
配偶者には遺留分があります。
ただし、遺留分があるのは、法律上の配偶者です。法律上の配偶者以外には遺留分がありません。
配偶者 | 遺留分 |
---|---|
別居中の配偶者 | ○ |
離婚調停中の配偶者 | ○ |
離婚した元配偶者 | × |
事実上の配偶者 | × |
同性パートナー | × |
関連記事を読む『配偶者は常に相続人|法定相続人は配偶者と血族相続人の組み合わせ』
2-1.離婚調停中の配偶者にも遺留分が認めらる
離婚調停中(訴訟中含む)に亡くなった場合でも、配偶者に遺留分は認められます。
なぜなら、離婚が成立するまでは、法律上の配偶者だからです。
たとえ婚姻生活が破綻していても、配偶者は相続人となります。相続人なので遺留分も発生します。
離婚調停中であっても、遺留分は請求可能なので、勘違いしないように注意してください。
2-2.事実婚の配偶者には遺留分が認められない
事実婚の配偶者は、法律上の配偶者ではありません。
法律上の配偶者ではないので、事実婚の配偶者は相続人ではないです。当然ですが、遺留分もありません。
たとえ婚姻期間が何十年あっても、相続分も遺留分も発生しません。
法律婚ではなく事実婚を選ぶなら、必ず遺言書を書いてもらいましょう。
関連記事を読む『事実婚では遺言書の作成が重要!配偶者に財産を残すなら書くべき』
3.配偶者が相続人でなければ遺留分も無い
通常、配偶者には遺留分があります。
ただし、法律上の配偶者であっても、遺留分が無いケースもあります。
- 配偶者が相続放棄している
- 配偶者が相続欠格に該当する
それぞれ簡単に説明していきます。
3-1.相続放棄した配偶者に遺留分は無い
配偶者に遺留分があるのは、相続人であることが前提です。
したがって、配偶者が相続放棄しているなら、遺留分もありません。
【例題】
亡くなった人に借金があったので、相続放棄したうえで遺留分を請求しようとした場合。
相続放棄しているので、配偶者は借金は相続しません。
ですが、相続人ではないので、遺留分は請求できません。
配偶者が相続放棄すると相続人ではないので、遺留分も請求できなくなります。
関連記事を読む『配偶者は相続放棄しても取得できる権利がある』
3-2.相続欠格に該当した配偶者に遺留分は無い
配偶者が相続欠格に該当すると、相続人ではないので遺留分もありません。
相続欠格は複数ありますが、遺言書の破棄も含まれるので注意してください。
【例題】
遺言書で第3者に遺贈していたので、配偶者が遺言書を破棄した場合。
亡くなった人の遺言書を配偶者が破棄すると、配偶者は相続欠格に該当します。
相続欠格に該当すると相続人ではないので、配偶者に遺留分はありません。
遺言書の内容が配偶者に不利だったとしても、破棄するのは止めておきましょう。
関連記事を読む『【遺言書の破棄】誰が破棄したかによって効果が違う』
4.配偶者は遺留分を請求される側にもなる
配偶者は遺留分を請求する側だけでなく、請求される側にもなります。
亡くなった人が配偶者に全財産を残しても、他の相続人は遺留分を請求できるからです。
配偶者に全財産を残すのは自由ですが、相続人は遺留分を請求できます。
【配偶者と子ども1人】
相続財産が1,000万円で、配偶者に全財産を相続させた場合。
- 配偶者の遺留分|4分の1
- 子どもの遺留分|4分の1
1,000万円×4分の1=250万円(遺留分)
250万円ー0円=250万円(侵害額)
子どもは配偶者に遺留分侵害額として、250万円を請求できます。
【配偶者と子ども2人】
相続財産が1,000万円で、配偶者に全財産を相続させた場合。
- 配偶者の遺留分|4分の1
- 子どもの遺留分|8分の1
- 子どもの遺留分|8分の1
1,000万円×8分の1=125万円(遺留分)
125万円ー0円=125万円(侵害額)
子どもは配偶者に遺留分侵害額として、一人当たり125万円を請求できます。
配偶者に全財産を残す場合は、遺留分対策を忘れずにしておきましょう。
5.まとめ
今回の記事では「配偶者の遺留分」について説明しました。
配偶者には遺留分があるので、遺留分を侵害された場合、侵害額を財産取得者に請求できます。
配偶者の遺留分は、相続人の組み合わせで決まっています。
相続人の組合せ | 配偶者の遺留分 |
---|---|
配偶者のみ | 2分の1 |
配偶者と子ども | 4分の1 |
配偶者と直系尊属 | 3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 2分の1 |
法律上の配偶者には遺留分があるので、離婚調停中(訴訟中)でも遺留分はあります。
それに対して、事実婚や同性パートナーには遺留分がありません。
配偶者は遺留分を請求される側にもなるので、曖昧な知識のまま放置せずにしっかりと確認しておきましょう。