【遺言書の破棄】誰が破棄したかによって効果が違う

遺言書の破棄
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誰が遺言書を破棄したかによって、効果に違いがあります。

遺言者本人が遺言書を破棄すれば、遺言の撤回とみなされます。

それに対して、相続人が遺言書を破棄すると、相続の欠格事由に該当します。

今回の記事では、遺言書の破棄について説明しているので、遺言書を作成しているなら参考にしてください。

1.遺言者が遺言書を破棄すると撤回とみなす

遺言者が遺言書を破棄すると撤回とみなす

まずは、遺言者が遺言書を破棄した場合について説明します。

遺言者(本人)が遺言書を破棄すると、遺言を撤回したとみなされます。

以下は、民法の条文です。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第千二十四条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。(後略)

出典:e-Govウェブサイト(民法1024条)

簡単にいえば、遺言書を破って捨てれば、遺言書の破棄です。

1-1.自筆証書遺言等の原本は破棄できる

自筆証書遺言等の原本を本人が破棄すれば、遺言は撤回したとみなされます。

例えば、自筆証書遺言を破って捨てれば遺言の撤回です。撤回の意思表示がなくても、撤回とみなされます。

簡単に遺言を撤回したいなら、自分で遺言書を破棄しましょう。

ただし、遺言書のコピーを破棄しても、遺言の撤回にはならないので、原本を破棄してください。

1-2.公正証書遺言の原本は破棄できない

公正証書遺言はその他の遺言書と違い、破棄による撤回はありません。

なぜなら、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されており、遺言者が原本を破棄できないからです。

「公証人から遺言書を渡されている」と思ったかもしれません。ですが、公正証書遺言の作成後に遺言者に渡されるのは、遺言書の正本(謄本)になります。

あくまでも、正本(謄本)は原本のコピーなので、破棄しても撤回にはなりません。

 

2.相続人が遺言書を破棄すると相続できない

相続人が遺言書を破棄すると相続欠格に該当する

次に、相続人が遺言書を破棄した場合について説明します。

相続人が遺言書を破棄すると、欠格事由に該当するので相続人になれません。

以下は、民法の条文です。

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
(省略)
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

出典:e-Govウェブサイト(民法891条5号)

遺言書の内容が自分に不利だからといって、破棄してはいけません。相続人の資格を失ってしまいます。

ただし、遺言書の破棄でも、代襲相続の規定は適用されます。

2-1.遺言書の破棄でも代襲相続は発生する

相続人が遺言書の破棄により欠格事由に該当した場合でも、代襲相続は発生します。

代襲相続
相続人の子どもが代わりに相続すること

遺言書を破棄した相続人に子どもがいれば、子どもが代わりに相続人となります。

【事例】
遺言者に子が2人いて、子の1人が遺言書を破棄した場合。

相続人が遺言書を破棄した場合でも代襲相続は発生する

遺言書を破棄した子どもは欠格事由に該当しますが、代わりに子ども(孫)が代襲相続人です。

  1. 配偶者
  2. 子ども
  3. 孫(代襲相続人)

上記の3人が、遺言者の相続人となります。

相続人が遺言書を破棄した場合は、代襲相続人の有無を確認してください。

関連記事を読む代襲相続の発生条件は3パターン|死亡以外でも発生します

2-2.遺言書を破棄した目的によっては例外あり

相続人が遺言書を破棄すると、相続の欠格事由に該当します。

ただし、破棄した目的によっては、相続できるとした判例があります。

以下は、最高裁の判例です。

相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法八九一条五号所定の相続欠格者に当たらない。

出典:裁判所ウェブサイト(平成9年1月28日最高裁判所第三小法廷判決)

遺言書の破棄が不当な利益を目的としていなければ、相続人の欠格事由に該当しないと判断しています。

ただし、あくまでも例外なので、遺言者以外が遺言書を破棄するのは止めておきましょう。

 

3.遺言書を勝手に破棄すると罪になる

他人の遺言書を勝手に破棄すると、私用文書等毀棄罪しようぶんしょとうききざいに問われる可能性があります。

私用文書等毀棄罪
権利義務に関する他人の文書を毀棄した場合の罪

以下は、刑法の条文です。

(私用文書等毀棄)
第二百五十九条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。

出典:e-Govウェブサイト(刑法259条)

遺言書も権利義務に関する文書といえるので、勝手に破棄すると私用文書等毀棄罪に該当すると考えられます。

ただし、私用文書等毀棄罪は親告罪なので、遺言書の破棄で捕まる人は少ないでしょう。

親告罪
訴えがなければ捜査を開始しない罪

遺言書を破棄するのは親族だと考えられるので、親族内の話し合いで解決しているはずです。

 

4.まとめ

今回の記事では「遺言書の破棄」について説明しました。

遺言書を誰が破棄したかによって、効果に違いがあります。

  • 遺言者|遺言の撤回とみなされる
  • 相続人|相続の欠格事由に該当する

遺言者(本人)が遺言書を破棄すれば、遺言の撤回とみなされます。

それに対して、相続人が遺言書を破棄すれば、相続の欠格事由に該当します。相続できないので注意してください。

遺言書が破棄された場合は、誰が破棄したかを確認してください。