誰が遺言書を破棄したかによって、効果に違いがあります。
遺言者本人が遺言書を破棄すれば、遺言の撤回とみなされます。
それに対して、相続人が遺言書を破棄すると、相続の欠格事由に該当します。
今回の記事では、遺言書の破棄について説明しているので、遺言書を作成しているなら参考にしてください。
目次
1.遺言者が遺言書を破棄すると撤回とみなす
まずは、遺言者が遺言書を破棄した場合について説明します。
遺言者(本人)が遺言書を破棄すると、遺言を撤回したとみなされます。
以下は、民法の条文です。
簡単にいえば、遺言書を破って捨てれば、遺言書の破棄です。
関連記事を読む『【遺言書の撤回】遺言者はいつでも遺言を撤回できる』
1-1.自筆証書遺言等の原本は破棄できる
自筆証書遺言等の原本を本人が破棄すれば、遺言は撤回したとみなされます。
例えば、自筆証書遺言を破って捨てれば遺言の撤回です。撤回の意思表示がなくても、撤回とみなされます。
簡単に遺言を撤回したいなら、自分で遺言書を破棄しましょう。
ただし、遺言書のコピーを破棄しても、遺言の撤回にはならないので、原本を破棄してください。
関連記事を読む『【自筆証書遺言の撤回方法は4つ】みなし規定もあるので注意』
1-2.公正証書遺言の原本は破棄できない
公正証書遺言はその他の遺言書と違い、破棄による撤回はありません。
なぜなら、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されており、遺言者が原本を破棄できないからです。
「公証人から遺言書を渡されている」と思ったかもしれません。ですが、公正証書遺言の作成後に遺言者に渡されるのは、遺言書の正本(謄本)になります。
あくまでも、正本(謄本)は原本のコピーなので、破棄しても撤回にはなりません。
関連記事を読む『公正証書遺言の原本はどこにある?遺言者も原本は持っていない』
2.相続人が遺言書を破棄すると相続できない
次に、相続人が遺言書を破棄した場合について説明します。
相続人が遺言書を破棄すると、欠格事由に該当するので相続人になれません。
以下は、民法の条文です。
遺言書の内容が自分に不利だからといって、破棄してはいけません。相続人の資格を失ってしまいます。
ただし、遺言書の破棄でも、代襲相続の規定は適用されます。
2-1.遺言書の破棄でも代襲相続は発生する
相続人が遺言書の破棄により欠格事由に該当した場合でも、代襲相続は発生します。
- 代襲相続
- 相続人の子どもが代わりに相続すること
遺言書を破棄した相続人に子どもがいれば、子どもが代わりに相続人となります。
【事例】
遺言者に子が2人いて、子の1人が遺言書を破棄した場合。
遺言書を破棄した子どもは欠格事由に該当しますが、代わりに子ども(孫)が代襲相続人です。
- 配偶者
- 子ども
- 孫(代襲相続人)
上記の3人が、遺言者の相続人となります。
相続人が遺言書を破棄した場合は、代襲相続人の有無を確認してください。
関連記事を読む『代襲相続の発生条件は3パターン|死亡以外でも発生します』
2-2.遺言書を破棄した目的によっては例外あり
相続人が遺言書を破棄すると、相続の欠格事由に該当します。
ただし、破棄した目的によっては、相続できるとした判例があります。
以下は、最高裁の判例です。
遺言書の破棄が不当な利益を目的としていなければ、相続人の欠格事由に該当しないと判断しています。
ただし、あくまでも例外なので、遺言者以外が遺言書を破棄するのは止めておきましょう。
3.遺言書を勝手に破棄すると罪になる
他人の遺言書を勝手に破棄すると、私用文書等毀棄罪に問われる可能性があります。
- 私用文書等毀棄罪
- 権利義務に関する他人の文書を毀棄した場合の罪
以下は、刑法の条文です。
遺言書も権利義務に関する文書といえるので、勝手に破棄すると私用文書等毀棄罪に該当すると考えられます。
ただし、私用文書等毀棄罪は親告罪なので、遺言書の破棄で捕まる人は少ないでしょう。
- 親告罪
- 訴えがなければ捜査を開始しない罪
遺言書を破棄するのは親族だと考えられるので、親族内の話し合いで解決しているはずです。
4.まとめ
今回の記事では「遺言書の破棄」について説明しました。
遺言書を誰が破棄したかによって、効果に違いがあります。
- 遺言者|遺言の撤回とみなされる
- 相続人|相続の欠格事由に該当する
遺言者(本人)が遺言書を破棄すれば、遺言の撤回とみなされます。
それに対して、相続人が遺言書を破棄すれば、相続の欠格事由に該当します。相続できないので注意してください。
遺言書が破棄された場合は、誰が破棄したかを確認してください。