養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。
ですが、2つの養子縁組は、完全に別の手続きになります。
- 養子縁組の成立条件
- 戸籍謄本の記載
- 元親の相続
- 養子縁組の離縁条件
今回の記事では、2つの養子縁組の違いについて、4つの項目で説明しています。養子縁組を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.普通養子と特別養子では成立条件が違う
普通養子縁組と特別養子縁組の違い1つ目は、養子縁組の成立条件です。
普通養子と特別養子は同じ養子ですが、成立条件は完全に別ものになります。
1-1.普通養子縁組は養子縁組届の提出が成立条件
普通養子縁組の成立条件は、市役所等に養子縁組届を提出するだけです。
養子縁組届を提出するだけで、縁組の当事者は親子になります。
ただし、普通養子縁組は簡単に成立するのですが、後々揉める原因にもなるので気を付けてください。
1-2.特別養子縁組は家庭裁判所の審判が成立条件
特別養子縁組の成立条件は、家庭裁判所の審判になります。
家庭裁判所に特別養子縁組の審判申立てをするには、以下の5つの条件を満たす必要があります。
- 配偶者と共に養子縁組
- 養親の年齢(25歳以上)
- 養子の年齢(15歳未満)
- 実親の同意
- 6ヶ月以上の監護期間
上記の条件を満たしていても、特別養子縁組を成立させるかは家庭裁判所が審判で決めます。
特別養子縁組は当事者の意思では成立しません。
関連記事を読む『特別養子縁組の成立には条件がある|法改正による養子の年齢変更に注意』
2.普通養子と特別養子では戸籍の記載が違う
普通養子縁組と特別養子縁組の違い2つ目は、戸籍の記載です。
普通養子縁組と特別養子縁組では、養子縁組後の戸籍の記載に違いがあります。
2-1.普通養子の戸籍には実親も養親も記載される
普通養子縁組を結ぶと、養子の戸籍には実親も養親も記載されます。
例えば、養子縁組により養父が存在する場合です。
【名】○○
【生年月日】平成○年○月○日
【父】○○○○
【母】○○○○
【続柄】長男
【養父】○○○○
【続柄】養子
養子の戸籍謄本を取得すれば、実親も養親も確認できます。
2-2.特別養子の戸籍には実親は記載されない
特別養子縁組を結ぶと、養子の戸籍に実親は記載されません。
以下は、特別養子縁組後の記載です。
【名】○○
【生年月日】平成○年○月○日
【父】○○○○
【母】○○○○
【続柄】長男
実親も記載されず、かつ、養父母でなく父母で記載されます。
また、続柄も養子ではなく長男や長女という記載です。
3.普通養子と特別養子では相続が違う
普通養子縁組と特別養子縁組の違い3つ目は、実親との相続関係です。
普通養子と特別養子では、実親との相続関係が違うので注意してください。
3-1.普通養子縁組を結んでも実親の相続人
普通養子縁組を結んでも、実親の子である点に変わりはありません。
養子縁組成立後であっても、実親が亡くなれば第1順位の相続人として相続します。
一方、子が先に亡くなると、実親だけでなく養親も第2順位の相続人です。
普通養子縁組を結ぶと、相続人になる機会が増えていきます。
関連記事を読む『養子縁組をした後に元の親の相続に関係するのか?』
3-2.特別養子縁組により実親の相続はしない
特別養子縁組が成立すると、実親との親子関係は消滅します。
ですので、実親が亡くなっても子は相続人となりません。また、子が先に亡くなっても第2順位の相続人は養親だけです。
特別養子縁組により実親とは、相続関係でも無関係となります。
関連記事を読む『特別養子縁組により相続関係にも変更がある【徹底解説】』
4.普通養子と特別養子では離縁条件が違う
普通養子縁組と特別養子縁組の違い4つ目は、離縁(養子縁組の解消)条件です。
養子縁組を結んでも、後々事情が変わり離縁する人もいます。
ただし、普通養子縁組と特別養子縁組では、離縁条件が違うので注意が必要です。
4-1.普通養子縁組は当事者の同意で離縁できる
普通養子縁組の離縁は、市役所等に離縁届を提出するだけです。当然ですが、離縁について同意していることが条件になります。
ちなみに、当事者のどちらかが亡くなった後でも、家庭裁判所の許可を得れば離縁することは可能です。
どちらかが離縁を拒否した場合は、普通養子縁組を離縁するのが大変になります。
4-2.特別養子縁組の離縁は非常に難しい
特別養子縁組を離縁するのは非常に難しく、実際に離縁した人もほとんどいません。
特別養子縁組の離縁が難しい理由は2つあります。
- 養親は離縁を請求できない
- 3つの離縁条件を満たせない
普通養子縁組と違い養親は離縁を請求できません。
一方、実父母や養子が離縁を請求するには、法律上の条件を3つ満たす必要があります。
ただし、法律上の条件を3つ満たすのは非常に難しく、過去10年間で特別養子縁組の離縁が認められた件数は0件です。
特別養子縁組を離縁するのは難しいでしょう。
関連記事を読む『特別養子縁組の解消は非常に難しい【原則無理】』
5.さいごに
普通養子縁組と特別養子縁組では、同じ養子縁組でも違う点が多くあります。
- 養子縁組の成立条件
- 戸籍謄本の記載
- 元親の相続
- 養子縁組の離縁条件
普通養子縁組と特別養子縁組では利用目的も違うので、同じに考えるべきではありません。
2つの養子縁組は別の制度なので、養子縁組を検討しているなら注意してください。