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特別養子縁組の解消は非常に難しい【原則無理】

特別養子縁組の解消
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特別養子縁組を解消するのは非常に難しいです。

実際、過去10年間で特別養子縁組の離縁は1件も認められていません。前提となる離縁の申立て自体もほとんどありません。

なぜ申立てが少ないかというと、以下の3つが理由として考えられます。

  • 離縁を検討する人が少ない
  • 養親は離縁を請求できない
  • 3つの離縁条件を満たせない

上記が理由となり、離縁の申立て自体がほとんど行われません。

今回の記事では、特別養子縁組の解消について説明しているので、離縁が難しい理由を確認しておいてください。

1.特別養子縁組を離縁する条件は厳しい

特別養子縁組を離縁(解消)する条件は厳しいです。

【4.特別養子縁組の離縁申立て件数】で特別養子縁組の離縁件数は確認できますが、申立て自体がほとんどありません。

もちろん、厳しい成立条件を満たしたうえで特別養子縁組を結んでいるので、離縁の申立てが少ないのは当たり前かもしれません。

ですが、申立件数の少なさには、以下の2つも関係しています。

  • 養親は離縁の申立てができない
  • 3つの離縁要件が満たせない

それぞれ説明していきます。

1-1.特別養子縁組の解消を養親は請求できない

養親は特別養子縁組の解消を請求できません。

請求できる人は法律により定められています。

(特別養子縁組の離縁)
第八百十七条の十 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法817条の10)
  • 養子
  • 実父母
  • 検察官

養親は除外されているので、特別養子縁組の離縁を請求できません。

ですので、養親がいくら特別養子縁組を解消したいと思っても、そもそも請求する権利がありません。

では、当事者間で話し合って、実父母や養子に請求してもらうことが可能かというと、離縁条件を満たすことが難しいです。

1-2.離縁条件を3つ満たすことが難しい

特別養子縁組の離縁を請求する権利があっても、3つの条件を満たしていなければ離縁できません。

そして、3つの離縁条件を満たすのが非常に難しいです。

(特別養子縁組の離縁)
第八百十七条の十 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二 実父母が相当の監護をすることができること。
2 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法817条の10)
  • 養親による虐待や悪意の遺棄などがある
  • 実父母が相当の監護をできる
  • 養子の利益のため特に必要がある

上記をすべて満たす必要があります。どれか1つだけでは離縁できません。

例えば、養親が養子を虐待していても、実父母が相当の監護をできる状態でなければ、特別養子縁組の離縁は認められません。

あるいは、実父母が相当の監護をできる状態だと主張しても、養親に何の問題も無ければ結論は同じです。

特別養子縁組の離縁条件を全て満たすのは、非常に難しいでしょう。

特別養子縁組の離縁条件

 

2.離婚や再婚は特別養子縁組を解消する理由にならない

養親が離婚や再婚をしても、特別養子縁組を解消する理由にはなりません。

例えば、特別養子縁組を結んだ後に離婚して、相手方が養子を引き取ったとします。自分が育てるわけではないので、特別養子縁組を解消したいと思うかもしれません。再婚して実子ができたので、実子だけに財産を残したいと思うかもしれません。

ですが、特別養子縁組の離縁は認められません。

特別養子縁組を結んでも離婚することは可能ですが、特別養子縁組の解消とは無関係です。

あくまでも、特別養子縁組の解消には、法律で定められた条件を満たすことが前提になります。

 

3.特別養子縁組に死後離縁は適用されない

特別養子縁組が成立した後で養親(養子)が亡くなっても、特別養子縁組は解消されません。

また、特別養子縁組の離縁条件との兼ね合いで、死後離縁を適用することもできません。

なぜかというと、養親は離縁を請求する権利が無いですし、養子は離縁条件を満たせないからです。

例えば、養子が死後離縁を検討しても、養親はすでに亡くなっているので、虐待や悪意の遺棄に該当しません。

たとえ亡くなった養親が嫌いだったとしても、特別養子縁組の解消は認められないです。

 

4.特別養子縁組の離縁申立て件数

以下は、平成24年(2012年)以降の申立て件数になります。

特別養子縁組の離縁申立て
認容 却下 取下げ
平成24年
平成25年
平成26年
平成27年
平成28年
平成29年
平成30年
令和元年
令和2年
〈出典:最高裁判所ウェブサイト司法統計情報〉

平成24年(2012年)以降では、特別養子縁組の離縁の申立ては全部で5件しかありません。

しかも、特別養子縁組の離縁の認容は0件で、取下げが4件と却下が1件になります。
※取下げは申立人が自ら取下げること。

実際の申立て件数を確認して分かることは、特別養子縁組の離縁条件を満たすことは難しいということです。

 

5.さいごに

特別養子縁組を解消することは非常に難しいです。

  • 養親は離縁を請求できない
  • 3つの離縁条件を満たす

養親は特別養子縁組の解消を請求できないですし、実父母も3つの離縁条件を満たすのが難しいです。

以下が、3つの離縁条件になります。

  • 養親による虐待や悪意の遺棄などがある
  • 実父母が相当の監護をできる
  • 養子の利益のため特に必要がある

上記を全て満たさなければ、特別養子縁組の離縁は認められません。

特別養子縁組を解消するのは非常に困難なので、特別養子縁組を検討しているなら今一度考えてください。