特別養子縁組を解消するのは非常に難しいです。
実際、過去10年間で特別養子縁組の離縁は1件も認められていません。前提となる離縁の申立て自体もほとんどありません。
なぜ申立てが少ないかというと、以下の3つが理由として考えられます。
- 離縁を検討する人が少ない
- 養親は離縁を請求できない
- 3つの離縁条件を満たせない
上記が理由となり、離縁の申立て自体がほとんど行われません。
今回の記事では、特別養子縁組の解消について説明しているので、離縁が難しい理由を確認しておいてください。
目次
1.特別養子縁組を離縁する条件は厳しい
特別養子縁組を離縁(解消)する条件は厳しいです。
【4.特別養子縁組の離縁申立て件数】で特別養子縁組の離縁件数は確認できますが、申立て自体がほとんどありません。
もちろん、厳しい成立条件を満たしたうえで特別養子縁組を結んでいるので、離縁の申立てが少ないのは当たり前かもしれません。
ですが、申立件数の少なさには、以下の2つも関係しています。
- 養親は離縁の申立てができない
- 3つの離縁要件が満たせない
それぞれ説明していきます。
1-1.特別養子縁組の解消を養親は請求できない
養親は特別養子縁組の解消を請求できません。
請求できる人は法律により定められています。
- 養子
- 実父母
- 検察官
養親は除外されているので、特別養子縁組の離縁を請求できません。
ですので、養親がいくら特別養子縁組を解消したいと思っても、そもそも請求する権利がありません。
では、当事者間で話し合って、実父母や養子に請求してもらうことが可能かというと、離縁条件を満たすことが難しいです。
1-2.離縁条件を3つ満たすことが難しい
特別養子縁組の離縁を請求する権利があっても、3つの条件を満たしていなければ離縁できません。
そして、3つの離縁条件を満たすのが非常に難しいです。
- 養親による虐待や悪意の遺棄などがある
- 実父母が相当の監護をできる
- 養子の利益のため特に必要がある
上記をすべて満たす必要があります。どれか1つだけでは離縁できません。
例えば、養親が養子を虐待していても、実父母が相当の監護をできる状態でなければ、特別養子縁組の離縁は認められません。
あるいは、実父母が相当の監護をできる状態だと主張しても、養親に何の問題も無ければ結論は同じです。
特別養子縁組の離縁条件を全て満たすのは、非常に難しいでしょう。
2.離婚や再婚は特別養子縁組を解消する理由にならない
養親が離婚や再婚をしても、特別養子縁組を解消する理由にはなりません。
例えば、特別養子縁組を結んだ後に離婚して、相手方が養子を引き取ったとします。自分が育てるわけではないので、特別養子縁組を解消したいと思うかもしれません。再婚して実子ができたので、実子だけに財産を残したいと思うかもしれません。
ですが、特別養子縁組の離縁は認められません。
特別養子縁組を結んでも離婚することは可能ですが、特別養子縁組の解消とは無関係です。
あくまでも、特別養子縁組の解消には、法律で定められた条件を満たすことが前提になります。
3.特別養子縁組に死後離縁は適用されない
特別養子縁組が成立した後で養親(養子)が亡くなっても、特別養子縁組は解消されません。
また、特別養子縁組の離縁条件との兼ね合いで、死後離縁を適用することもできません。
なぜかというと、養親は離縁を請求する権利が無いですし、養子は離縁条件を満たせないからです。
例えば、養子が死後離縁を検討しても、養親はすでに亡くなっているので、虐待や悪意の遺棄に該当しません。
たとえ亡くなった養親が嫌いだったとしても、特別養子縁組の解消は認められないです。
4.特別養子縁組の離縁申立て件数
以下は、平成24年(2012年)以降の申立て件数になります。
認容 | 却下 | 取下げ | |
平成24年 | |||
平成25年 | 2 | ||
平成26年 | 1 | ||
平成27年 | |||
平成28年 | 1 | ||
平成29年 | 1 | ||
平成30年 | |||
令和元年 | |||
令和2年 |
平成24年(2012年)以降では、特別養子縁組の離縁の申立ては全部で5件しかありません。
しかも、特別養子縁組の離縁の認容は0件で、取下げが4件と却下が1件になります。
※取下げは申立人が自ら取下げること。
実際の申立て件数を確認して分かることは、特別養子縁組の離縁条件を満たすことは難しいということです。
5.さいごに
特別養子縁組を解消することは非常に難しいです。
- 養親は離縁を請求できない
- 3つの離縁条件を満たす
養親は特別養子縁組の解消を請求できないですし、実父母も3つの離縁条件を満たすのが難しいです。
以下が、3つの離縁条件になります。
- 養親による虐待や悪意の遺棄などがある
- 実父母が相当の監護をできる
- 養子の利益のため特に必要がある
上記を全て満たさなければ、特別養子縁組の離縁は認められません。
特別養子縁組を解消するのは非常に困難なので、特別養子縁組を検討しているなら今一度考えてください。