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再転相続人による相続放棄も可能|熟知している専門家を探そう

再転相続による相続放棄
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被相続人の死亡を知ることなく、相続人が死亡することもあります。

相続人は相続の開始を知らずに死亡しているので、相続人の相続人(再転相続人)は、相続人に代わって相続放棄することが可能です。

ただし、専門家であっても再転相続による相続放棄を知らない人もいるので、相談する際は十分に注意してください。

今回の記事では、再転相続による相続放棄について説明しているので、急な連絡(通知)に困っているなら参考にしてください。

目次

1.再転相続人による相続放棄を図で説明

まずは、再転相続人による相続放棄を図で説明します。

以下の図をご覧ください。

再転相続人

被相続人は平成25年に死亡していますが、相続人は死亡の事実を知りません。その後、被相続人の死亡を知ることなく、相続人は令和2年に死亡しています。

相続人の配偶者と子どもが再転相続人に該当します。

1-1.再転相続人は相続人に代わって相続放棄

相続人が相続の開始(被相続人の死亡等)を知らなければ、3ヶ月の熟慮期間はスタートしていません。

そして、3カ月の熟慮期間が経過する前に相続人が亡くなると、再転相続人は相続人に代わって相続放棄できます。

なぜなら、再転相続人は相続人の一切の権利義務を引き継ぐので、相続放棄する権利も引き継いでいるからです。

1-2.再転相続人による相続放棄の効力

再転相続人による相続放棄の効力を図に表すと、以下のようになります。

再転相続人による相続放棄の効力

「被相続人の財産」と「相続人の財産」を分けて、被相続人の財産だけ相続放棄するイメージです。

再転相続による相続放棄をしても、相続人の財産は相続できるので安心してください。

2.再転相続人の熟慮期間も知った時から3ヶ月

再転相続人の相続放棄であっても、熟慮期間は知った時から3ヶ月以内です。

ただし、いつから3ヶ月以内かは、非常に分かりにくいので気を付けてください。

以下は、最高裁の判例です。

民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいう。

出典:裁判所ウェブサイト(令和元年8月9日最高裁判所第二小法廷判決)

上記を分かりやすく説明すると、以下のようになります。

再転相続人が被相続人の地位を承継した事実を知った時から3ヶ月以内です。

再転相続による相続の熟慮期間

再転相続による相続放棄は熟慮期間の判断も難しいので、一つ一つの事実を確認してください。

3.再転相続人の一部だけが相続放棄

再転相続人が複数人存在する場合、相続放棄するかどうかは各再転相続人が決めます。

したがって、再転相続人の一部だけが相続放棄することもあります。

例えば、配偶者と子どもが再転相続人で、子どもだけが相続放棄した場合です。

再転相続人の一部だけが相続放棄

相続放棄した子どもは相続人の財産だけ相続して、配偶者は被相続人の財産も含めて相続します。

相続放棄するかどうかは、再転相続人がそれぞれ判断してください。

4.再転相続による相続放棄が認められない場合

再転相続人による相続放棄が認められない場合は2つあります。

  • 相続人が単純承認に該当している
  • 相続人が死亡した際に相続放棄している

それぞれ説明していきます。

4-1.相続人が単純承認に該当している

相続人が被相続人の死亡(財産の存在)を知っていて、何もせずに3ヶ月経過していると単純承認に該当します。

単純承認に該当した後で相続人が死亡しても、再転相続による相続放棄はできません。

再転相続により相続放棄ができるのは、被相続人の相続が確定する前に相続人が死亡している場合です。

4-2.相続人が死亡した時に相続放棄している

相続人が死亡した時に相続放棄しているなら、再転相続人には該当しません。

相続放棄しているなら再転相続人に該当しない

ただし、あなたの相続放棄に気付かず連絡(通知)してくる人もいます。

債権者等から連絡があった場合は、相続放棄している旨を伝えれば大丈夫です。相続放棄申述受理通知書が手元に残っていれば、コピーを送付すると相手の調べる手間が省けます。

相続人であるとの連絡が届いたときは、相続関係をしっかりと確認してください。

5.再転相続による相続放棄には上申書も添付

再転相続により相続放棄するなら、相続放棄の申述書を提出する際に上申書も添付します。

上申書

再転相続の事情を説明した書面

再転相続による相続放棄なら、主に以下の2つを記載します。

  • 相続人が被相続人の死亡を知らなかった事情
    ※財産に気付いていなかった事情
  • 再転相続人が被相続人の死亡を知った経緯
    ※財産に気付いた経緯

以下は、上申書の記載例(一部)です。

被相続人と相続人は絶縁状態にあり、連絡先も知らないので20年以上連絡を取っていませんでした。

令和○年○月○日に相続人は死亡しています。

令和○年○月○日に市役所より固定資産税の連絡が届き、被相続人がすでに死亡していることを知りました。

(以下省略)

上記のような感じで、再転相続による相続放棄の事情を説明します。

ただし、上申書を提出しなかったとしても、家庭裁判所は相続放棄をすぐには却下しません。照会書(回答書)を送付して説明を求めてきます。

再転相続による相続放棄の場合、事情説明が必要だと知っておいてください。

6.専門家でも再転相続による相続放棄を知らない

一般の人は驚くかもしれませんが、専門家であっても再転相続による相続放棄を知らない人はいます。

「亡くなってから何年も経っているので諦めてください」

「相続はすでに確定しているので相続放棄は無理です」

上記の言葉は、相談者が当事務所に相談する前に、他の専門家から言われた言葉です。諦めきれずにネットを検索して、当事務所にたどり着いています。
※相続放棄は無事に完了しています。

再転相続であっても、条件を満たしていれば相続放棄は認められます。

専門家に再転相続による相続放棄を相談する際は、専門家が知らない可能性も考慮しておきましょう。

7.さいごに

今回の記事では「再転相続による相続放棄」について説明しました。

被相続人が死亡(財産の存在)を知る前に、相続人が死亡することもあります。

相続人は相続が確定する前に死亡しているので、再転相続人は相続人に代わって相続放棄できます。

ただし、再転相続による相続放棄を知らない専門家もいます。諦めずに相談することも重要です。

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