【失踪宣告の事例集】実際の依頼・相談を基に説明

失踪宣告の事例集

みかち司法書士事務所では、年間20件ほど失踪宣告の依頼・相談を受けています。

そこで、私が受けた失踪宣告に関する依頼・相談を、事例ごとに分けて説明します。失踪宣告を検討しているなら、役立つ部分があるはずなので、ぜひ参考にしてください。

司法書士から一言実際の依頼・相談内容から、個人を特定できないように変更を加えています。

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目次

遺産分割協議のために失踪宣告した事例

親や兄弟姉妹が遺言書を残さずに亡くなると、相続人全員による遺産分割協議が必要になります。

ですが、共同相続人の中に生死不明者がいると、遺産分割協議ができません。生死不明者を除外して遺産分割協議をしても無効です。

そのため、遺産分割協議をするために、失踪宣告した事例です。

失踪宣告により代襲相続人が参加

失踪宣告の事例1の家族構成図

被相続人(父親)が亡くなる20年以上前から相続人は生死不明であり、相続人には子どもがいた事例です。

相続人の1人が生死不明だったので、遺産分割協議のために失踪宣告を検討していました。

当初は、共同相続人が申立人になるつもりでしたが、生死不明者には子どもがいたので、共同相続人は利害関係人に該当しなかったです。

そのため、共同相続人から生死不明者の子どもに事情を説明して、失踪宣告の申立人になってもらいました。

死亡とみなされる日が被相続人より前だったので、相続人の子ども(孫)が代襲相続人として遺産分割協議に参加して無事に成立しました。

失踪宣告前失踪宣告後
配偶者配偶者
子ども子ども
子ども(生死不明)孫(代襲相続人)

被相続人が亡くなる前から相続人が生死不明だと、代襲相続が発生しやすいです。

失踪宣告により数次相続人が参加

失踪宣告の事例2の家族構成図

親が亡くなった後に遺産分割協議をせずに放置していたら、相続人の1人が生死不明になった事例です。

相続人は独身だったので、兄弟が推定相続人として失踪宣告の申立人となりました。

失踪宣告による死亡日が親よりも後だったので、相続人の相続人(数次相続人)が権利を引き継いで遺産分割協議に参加し、無事に成立しました。

親が亡くなる直前や亡くなった後に生死不明になると、数次相続になります。代襲相続とは違うので注意してください。

相続を発生させるために失踪宣告した事例

生死不明になった人の財産は、相続が発生しない限り本人の財産です。

生死不明である以上、不動産(共有名義含む)の処分や、定期預金等の解約はできません。

そのため、相続を発生させるために失踪宣告した事例です。

本人所有の建物を取り壊したかった

生死不明者が名義人である建物が老朽化しており、家族が取り壊しを検討していた事例です。

失踪宣告により建物・土地の所有者を変更して、新しい所有者(相続人)が建物を取り壊しました。後日、更地になった土地も売却。

ちなみに、失踪宣告が戸籍に記載された後であれば、建物の名義は変更しなくても取り壊しできます。
土地を売却するには名義変更が必要。

本人口座に年金の振込が続いていた

家族が通帳・印鑑・キャッシュカードを残したまま生死不明になり、7年以上経過していた事例です。

生死不明者の口座に年金の振込が続いており、年金事務所に相談したが、振込を止めれないとの説明を受けた。
※条件を満たせば振込を止めれる。

失踪宣告により相続を発生させ、相続人が年金事務所に過払い分(死亡日以降の振込分)を返納し、年金問題を終了させました。

注意同居している親族が行方不明の場合、親族は年金事務所に申し出る義務があります。

特殊な事情により失踪宣告した事例

特殊な事情により、失踪宣告した事例もあります。

  • 亡くなった姉の戸籍が残っていた
  • 遺体が発見されたが特定できなかった

かなり特殊ですが、失踪宣告しなければ死亡になりません。

亡くなった人の戸籍が残っていた事例

亡くなったと聞いていた人の戸籍が残っていた事例です。

親が亡くなったので、相続手続きのために親の戸籍を取得したら、亡くなったはずの姉の記載が残っていました。念のため、戸籍の附票を取得して住所を確認したが、何十年も前に抹消されており記載がない。

姉は1歳の頃に亡くなったと聞いており、亡くなった親以外に事情が分かる人も存在しない。
※60年前なので死亡届や火葬の記録も見つからない。

市役所の窓口で相談したが、失踪宣告して死亡にするしかないと説明を受け、失踪宣告の申立てをしました。

司法書士から一言死亡診断書や埋葬の記録が見つかれば、死亡が記載される可能性はあります。

遺体が本人だと特定できなかった事例

親族の遺体が発見されたが、本人だと特定できなかった事例です。

親族が自宅で亡くなっていたが、発見までに時間が経っていたので、DNA鑑定で本人だと特定できませんでした。本人だと特定できないので、法律上は生死不明扱いになります。

家族は本人が亡くなったと認識しているので、10年以上経過してから失踪宣告の申立てをしました。

ちなみに、警察に問い合わせたところ、役所によっては死亡と判断するケースもあるそうです。

失踪宣告を選ばなかった事例

失踪宣告の依頼・相談を受けても、失踪宣告以外を選んだケースもあります。

具体的には、失踪宣告ではなく不在者財産管理人の選任を選びました。

生死不明者に多額の借金があった

失踪宣告により数次相続を発生させて、遺産分割協議の成立を検討したが、借金を相続したくないので失踪宣告を諦めました。

なぜなら、失踪宣告により相続が発生しても、相続人全員が相続放棄すると、遺産分割協議の成立に相続財産清算人が必要になるからです。清算人の選任には高額な予納金を納める必要があり、割に合わないと判断しました。

最終的に、失踪宣告ではなく不在者財産管理人を選任して、遺産分割協議を成立させました。

失踪宣告の申立人に該当しなかった

失踪宣告の依頼・相談を受けたが、申立人に該当しなかったので、不在者財産管理人の選任に切り替えた。
※生死不明者の兄弟から相談。

生死不明者の推定相続人である子どもはいたが、疎遠だったので協力してもらえず、不在者財産管理人を選任して遺産分割協議を成立させた。

利害関係人(申立権利者)の協力を得られるとは限らないので、失踪宣告ができないケースもあります。

失踪宣告の申立後に失踪者が見つかった事例

生死不明の期間は20年以上だったが、家庭裁判所の調査により失踪者が見つかったケース。

失踪者の住民票は実家から動いていなかったが、調査により免許証の住所は違うという事実が判明しました。

また、申立ての1年前に免許更新もしていたので、要件を満たせず却下(取下げ)となりました。

失踪宣告する理由は事例ごとに違う

失踪宣告の申立てをしている理由は、事例ごとに違います。

遺産分割協議(相続手続き)のために失踪宣告する人もいれば、生死不明者の財産を処分するために失踪宣告する人もいます。

失踪宣告以外の方法を選んだ方が良いケースもあるので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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司法書士 小嶋高士

開業以来、相続専門で仕事をしている司法書士です。

失踪宣告の経験も豊富で、外国人の失踪宣告、生死不明が60年以上の失踪宣告、複数人の失踪宣告なども経験しております。

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