失踪宣告するなら借金に注意!生死不明者の負債も引き継ぐ

失踪宣告と借金
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失踪宣告を検討しているなら、生死不明者の借金(負債)にも注意してください。

なぜなら、失踪宣告により生死不明者が死亡とみなされると、借金も相続人が引き継ぐからです。

失踪宣告しても借金は消滅しないので、相続人が弁済する必要があります。

今回の記事では、失踪宣告と借金について説明しているので、生死不明者がいるなら参考にしてください。

目次

1.失踪宣告で生死不明者の借金も引き継ぐ

失踪宣告で借金も相続する

失踪宣告により生死不明者は死亡とみなされるので、生死不明者の財産は相続人に引き継がれます。預貯金口座や不動産の名義変更も可能です。

ただし、相続人はすべての財産を引き継ぐので、生死不明者の借金(負債)も引き継ぎます。

失踪宣告したからといって、生死不明者の借金は消滅しません。

債務者が生死不明になっても借金は残る

債務者が生死不明でも負債は消滅しない

債務者(お金を借りた人)が生死不明になっても、借金は残ったままです。

生死不明者(債務者)の口座に残高があれば、債権者も差押えて回収します。ですが、差押えする財産がなければ、利息や遅延損害金も増え続けているはずです。

失踪宣告により債務者に相続が発生すれば、相続人が借金(利息や遅延損害金含む)を引き継ぎます。

生死不明者の借金を生前に見つけるのは難しい

生死不明の段階では負債を調査できない

失踪宣告する前に生死不明者の借金を調べたい人もいます。

ですが、生死不明の段階では生存扱いなので、たとえ推定相続人や親族であっても勝手に調べることはできません。
※失踪宣告後は相続人として調査可能。

住民票が実家に残っていて督促状が届いているなら別ですが、失踪宣告前に借金を見つけるのは難しいでしょう。

2.借金があるなら失踪宣告以外も検討

失踪宣告以外の方法で解決する

生死不明者に借金があると、前もって分かっているなら、失踪宣告以外も検討しましょう。

一般的に、失踪宣告をする理由は、相続手続きと不動産の処分です。相続人が生死不明や、不動産の共有者が生死不明で手続きが進まない。

上記を失踪宣告以外で解決するなら、方法は2つ考えられます。

  1. 不在者財産管理人
  2. 所在等不明共有者の持分取得

どちらの制度にもデメリットはあるので、しっかりと確認しておいてください。

2-1.不在者財産管理人であれば借金は相続しない

生死不明者のために不在者財産管理人を選任すると、不在者財産管理人が相続手続き等を行います。

そして、不在者財産管理人を選任しても相続は発生しないので、生死不明者の借金も相続しません。

ただし、不在者財産管理人の選任には予納金等の問題があり、場合によっては失踪宣告より高額な費用が発生します。

生死不明者の借金と不在者財産管理人の費用を比較して、どちらにするのか決めましょう。

2-2.借金を相続せずに生死不明者の共有持分を取得

不動産の共有者に生死不明者がいる場合、共有持分は欲しいが相続はしたくないケースもあります。

【事例】
兄弟で不動産を共有(各2分の1)しているが、弟は生死不明になっている。

弟の推定相続人は兄だけなので、失踪宣告により不動産の共有持分を取得可能。

ただし、弟には借金が500万円ある。

共有持分を取得するために失踪宣告すると、借金500万円も相続してしまう。

上記のようなケースであれば、「所在等不明共有者の不動産の共有持分取得手続き」で解決できます。

具体的な説明は省略しますが、生死不明者の共有持分(不動産に限る)を取得できる制度です。

ただし、共有持分の時価相当額を支払う必要があるのと、遺産共有(10年経過後は除く)では使用できません。

新しい制度なので知らない人も多いですが、失踪宣告よりも簡単に共有持分を取得できるようになっています。

3.失踪宣告した後で借金に気付いた

失踪宣告による相続でも単純承認・相続放棄・限定承認を選べる

失踪宣告前に借金を発見できれば良いですが、失踪宣告した後で借金に気付くケースもあります。

ただし、失踪宣告した後で借金に気付いても、失踪宣告の取消しはできません。つまり、相続の問題として解決する必要があります。

3-1.借金が少額であれば単純承認する

失踪宣告による相続を単純承認

生死不明者に借金以外の財産があれば、借金とその他財産の額を比較して単純承認します。

単純承認

すべての財産を相続すること

【事例】
生死不明者の財産は、不動産(500万円)と借金30万円。

500万円ー30万円=470万円

不動産が処分できれば、借金を相続しても損はしません。
※不動産の処分費用は除外しています。

生死不明者の借金が少額であれば、相続したうえで返済すれば良いでしょう。

3-2.借金が高額であれば相続放棄する

失踪宣告による相続を相続放棄

生死不明者の借金が高額であれば、失踪宣告した場合でも相続放棄してください。

相続放棄

相続人ではなかったとみなされる

【事例】
生死不明者の財産は、預貯金(100万円)と借金500万円。

100万円ー500万円=ー400万円

自分の借金が400万円増えるだけです。

相続するために失踪宣告した場合であっても、多額の借金を相続しては意味がありません。

3-3.借金の額が不明なら限定承認する

失踪宣告による相続を限定承認

生死不明者の借金額が不明なら、限定承認するという方法もあります。

限定承認

プラスの財産を限度にマイナスの財産を負担する

生死不明者の相続を限定承認すれば、後から借金が見つかっても対応できます。

【事例】
生死不明者の財産は、預貯金(100万円)と限定承認後に見つかった借金が300万円。

100万円ー300万円=0円

プラスの財産が100万円なので、借金も100万円までしか負担しません。

生死不明者の相続を単純承認するのが不安であれば、限定承認するという方法もあるので安心してください。

4.失踪宣告により借金以外の負債も引き継ぐ

失踪宣告により借金以外の負債や義務も引き継ぐ

失踪宣告により相続人が引き継ぐのは、借金だけではありません。借金以外の負債も引き継ぎます。

以下は、民法の条文です。

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト(民法896条)

借金以外にも注意すべき負債はあるので、確認しておいてください。

  • 賃貸不動産の滞納家賃
  • 固定資産税の滞納分

それぞれ簡単に説明していきます。

4-1.生死不明者の滞納家賃や退去費用

生死不明者が賃貸不動産に住んでいた場合、家賃を滞納していた可能性があります。

また、正式な退去手続を済ませずに生死不明になっていれば、退去費用を不動産会社が立て替えているはずです。
※部屋の片付けや清掃にかかる費用。

生死不明者の最後の住所が賃貸不動産であれば、滞納家賃や退去費用にも注意してください。

4-2.生死不明者が滞納している固定資産税

生死不明者が不動産を単独所有している場合、固定資産税を滞納している可能性があります。

生死不明者の口座に残高があれば、自治体が差し押さえするでしょう。ですが、残高がなければ、滞納になっているはずです。

不動産が生死不明者の単独所有なら、固定資産税を滞納していないか自治体に確認してください。
※共有なら共有者に確認。

5.まとめ

今回の記事では「失踪宣告と借金」について説明しました。

失踪宣告により生死不明者が死亡とみなされると、借金も相続財産として相続人に移ります。

失踪宣告だからといって、借金が消滅するわけではありません。

前もって借金に気付いているなら、失踪宣告以外の方法も検討しましょう。

一方、失踪宣告後に生死不明者の借金に気付いたなら、相続放棄も検討してください。借金が高額であれば、無理に相続する必要はないです。

失踪宣告により生死不明者の権利・義務はすべて相続人が引き継ぎます。預貯金や不動産だけでなく、借金も引き継ぐので注意してください。

失踪宣告と借金に関するQ&A

失踪宣告の申立人も相続放棄できますか?

できます。

生死不明が長期間でも借金は残っていますか?

時効により消滅している可能性はあります。

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