事実婚を証明する手段の1つが、住民票の続柄です。
住民票の続柄には、夫(未届)・妻(未届)という記載方法があります。婚姻の意思はあるが届け出をしていない状態です。
法律婚とは違い、事実婚を法律的に証明することはできません。そのため、複数の事実から事実婚を証明する必要があります。
今回の記事では、事実婚と住民票の続柄について説明しているので、まだ変更されていない場合は参考にしてください。
1.事実婚の住民票は続柄が重要
法律婚をした場合は住民票の続柄記載が、基本的に男性の欄に世帯主で女性の欄に妻と記載されます。
それに対して、事実婚では3つの記載が考えられます。
- 両方が世帯主と記載されている
- 一方が同居人と記載されている
- 事実婚と分かる記載になっている
それぞれ説明していきます。
1-1.事実婚の当事者が両方とも世帯主
1つ目の住民票記載は、事実婚の当事者が両方とも世帯主と記載されているです。
2人の住所は同じなのですが、世帯が別々なので、それぞれが世帯主になっています。
住民票の記載だけでは、事実婚であるか分かりません。
ちなみに、ルームシェアを複数人でしていると、それぞれが世帯主になっていることもあります。
1-2.住民票の続柄が同居人になっている
2つ目の住民票記載は、住民票の続柄が同居人になっているケースです。
2人の世帯は同じなのですが、どちらか一方が同居人と記載されています。いわゆる同棲をしている状態です。
住民票の記載から同じ世帯ということは分かりますが、事実婚であるかは分かりません。
関連記事を読む『【住民票の世帯主】記載が省略されるので請求時にチェック』
1-3.住民票の続柄から事実婚と分かる
3つ目の住民票記載は、住民票の続柄が事実婚になっているケースです。
事実婚の手続きが完了している場合は、どちらかが世帯主で妻(未届)または夫(未届)と記載されます。
住民票の記載からも、婚姻の意思はあるが届出をしていない状態だと分かります。
事実婚にするのであれば、できる限り住民票に記載しておきましょう。
住民票の続柄については、下記の記事でも詳しく説明しています。
関連記事を読む『【住民票の続柄】世帯主から見た関係が記載される』
2.続柄の変更手続きは窓口で完了する
住所地の役所に行き、窓口で事実婚にしたいので「妻(未届)または夫(未届)」にしたい旨を伝えてください。
余計な手間を省くため役所に行く前に、電話で必要な書類等があるかを確認しておいた方がいいです。自治体によっては独身であることを確認するために、戸籍謄本の提出を求められることもあります。
ちなみに、大阪市のホームページでは住民票の続柄について記載があります。
事実婚を証明するケースでは、必ずと言っていいほど住民票を提出します。特別な理由がない限り手続きを済ませておいてください。
3.事実婚の記載を断られても諦めない
ほとんどの自治体では、事実婚の記載を問題なくしてくれます。
ただし、一部自治体では、窓口で「〇〇(自治体名)では事実婚の記載を認めていません」と答える職員もいます。
実際、私自身が電話で確認した際も、上記の言葉を言われました。
*2021年8月6日です。
ですが、10年前に総務省から各自治体に通達がされているのに、事実婚の記載を認めないというのは変です。
もし、妻(未届)または夫(未届)の記載を断られた場合は、諦めずに理由を聞いてください。
- 同じ日本の自治体なのに、〇〇(自治体名)だけ認めていない理由
- 総務省から通達が来ているのに、事実婚の記載を認めていない理由
「今までも認めていない」は理由ではないので、誤魔化されないように気を付けてください。
事実婚の記載を認めていないことについて、総務省に質問してみました。
以下は、総務省からの返答です。
住民票の記載については、個別具体の判断は市町村長が行うものであるため、個々の市町村において「夫(未届)、妻(未届)」の記載が認められなかった理由については、お手数ですが当該市町村にお問い合わせください。
総務省からの返答では、個別具体の判断は自治体長がするので、断られた場合は理由を聞いてくださいとのことです。
また、個別具体の判断なので、一律で認めていないというのは理由に該当しません。
4.遺族年金では事実婚を住民票で確認する
事実婚の配偶者も遺族年金の遺族に含まれます。
ただし、日本年金機構が事実婚であると判断した場合です。
法律婚と違い事実婚は戸籍では証明できません。そのため、戸籍以外の書類で、事実婚を証明する必要があります。
日本年金機構が事実婚を判断する書類としては、住民票が一番に挙げられています。
住民票上の住所と世帯が同じであれば、住民票が事実婚を証明する書類です。
それに対して、住所や世帯が別であれば、住民票だけでは判断できないので、その他の書類も参考にして判断します。
事実婚の配偶者が遺族年金を受給する際には、住民票の記載が重要になるので、できる限り記載しておきましょう。
関連記事を読む『事実婚の配偶者も遺族年金の遺族に含まれるが証明する資料が必要』
5.事実婚の住民票は間接的にも役立つ
住民票に事実婚の記載を済ませても、事実婚の配偶者は相続人になりません。
あくまでも、法律上の配偶者でなければ、法定相続人ではないです。
ただし、相続財産の取得に関して、間接的に役立つことはあります。
- 遺言書の裏付けになる
- 特別縁故者となる手助け
それぞれ説明していきます。
5-1.住民票の続柄が遺言書の裏付けとなる
事実婚と遺言書の作成はセットなので、書いていない人は少ないでしょう。
ただし、遺言書にも問題があり、記載内容によっては疑われる可能性があります。
例えば、法定相続人が事実婚をまったく知らなかった場合です。
遺言書で事実婚の配偶者に全財産を遺贈していると、事実婚が本当だったか疑う相続人もいます。
「他人に騙されて全財産を遺贈している」
「本当に事実婚だったか疑わしい」
住民票の記載で事実婚が確認できれば、遺言書の裏付けにもなります。余計な疑いを招かないためにも、住民票に記載しておいた方が良いです。
関連記事を読む『事実婚では遺言書の作成が重要!配偶者に財産を残すなら書くべき』
5-2.住民票の続柄が特別縁故者となる手助け
事実婚と遺言書の作成はセットですが、書いていない人もいます。
例えば、若いので作成していないや、面倒だから作成していない等です。
遺言書を書かないまま亡くなってしまうと、原則として事実婚の配偶者は何も取得できません。
例外として、亡くなった人に相続人がいない場合は、特別縁故者制度を頼ることができます。
特別縁故者と認められるには、事実婚であったことを証明する必要があります。その際には、住民票の記載が証明の手助けとなります。
生前から特別縁故者制度を当てにするのは危険ですが、何もしないよりは記載しておいた方が良いです。
関連記事を読む『特別縁故者は『相続人がいる場合』に該当すると取得できない』
6.住民票以外の事実婚対策もしておく
住民票の記載を変えておくことで、事実婚を証明する証拠の1つとなります。
ただし、住民票以外にも方法はあります。
下記が代表的な方法です。
- 事実婚契約書を結ぶ
- 結婚式を挙げる
- 子どもを認知する
- 社会保険の被扶養者にしている
複数の対策をしておくことで、事実婚の証明が強固となります。
その中でも、子どもを認知しておくことは、子どもの相続にも関係します。
なぜなら、父親から子どもへの相続は認知が絶対条件となるからです。事実婚にするなら、必ず認知しておきましょう。
関連記事を読む『事実婚の子どもは相続に注意!父親の認知が条件となる』
その他の対策についてもまとめています。
関連記事を読む『事実婚を証明する証拠は複数存在する』
7.まとめ
今回の記事では「事実婚の住民票」について説明しました。
事実婚を証明する際には、ほとんどのケースで住民票の提出を求められます。
住民票の手続きは役所の窓口で済むので、変更されていない場合は変更しておいてください。
また、相続で揉めたときにも役立つ可能性もあります。事実婚であったことを証明する証拠は多くて困ることはないです。
事実婚は便利である反面、相続では不便になるので対策は必ずしておきましょう。