事実婚の配偶者も要件を満たすことで、遺族年金を受給できることはご存知でしょうか。
ただし、法律婚の配偶者とは違い、要件だけではなく事実婚の証明も必要になります。
事実婚の証明には複数の書類が必要になるので、前もって確認しておいてください。
今回の記事では、事実婚と遺族年金について説明しているので、受給要件などをご存知なければ参考にしてください。
目次
1.事実婚の配偶者は遺族年金の遺族に含まれる
事実婚の配偶者が遺族年金の遺族に含まれるかは、年金法の条文を確認すれば分かります。
- 遺族年金
- 遺族が受け取る年金のこと
- 遺族基礎年金
- 遺族厚生年金
遺族年金は2種類あり、それぞれ別の法律により定められています。
1-1.国民年金法に事実婚の記載がある
遺族基礎年金の遺族に、事実婚の配偶者が含まれるかは、国民年金法に記載されています。
以下は、国民年金法の条文です。
国民年金法に記載されている「配偶者」「夫」「妻」には、事実婚の配偶者を含みます。
つまり、事実婚の配偶者は、遺族基礎年金の遺族に含まれます。
遺族基礎年金の支給要件については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『【遺族基礎年金の支給要件】亡くなった人と遺族に要件がある』
1-2.厚生年金保険法に事実婚の記載がある
遺族厚生年金の遺族に、事実婚の配偶者が含まれるかは、厚生年金法に記載されています。
以下は、厚生年金法の条文です。
厚生年金法に記載されている「配偶者」「夫」「妻」には、事実婚の配偶者を含みます。
つまり、事実婚の配偶者は、遺族厚生年金の遺族に含まれます。
2.日本年金機構に事実婚だと認定してもらう
遺族年金は事実婚の配偶者も受給できます。
ただし、遺族年金を受給するには、日本年金機構に事実婚だと認定してもらう必要があります。
事実婚の成立要件は、以下の2つです。
- 当事者間に夫婦関係を成立させる合意がある
- 当事者間に夫婦関係と認められる事実関係がある
当事者の一方は亡くなっているので、書面等で事実婚を判断します。
2-1.事実婚の認定には住民票の記載が重要
日本年金機構に事実婚だと認定してもらうためには、住民票の記載が重要になります。
なぜなら、事実婚および生計同一を判断する資料として、住民票が挙げられているからです。
事実婚の居住形態は、以下の4つに分かれます。
住民票の住所が同じ | 世帯も同じ |
世帯は別 | |
住民票の住所が違う | 同居 |
別居 |
①住民票上同一世帯に属している
住民票の住所が同じで、かつ、世帯も同じであれば、住民票が事実婚を証明する資料となります。
事実婚の夫婦であっても同一世帯にできるので、理由がなければ同一世帯にしておきましょう。
事実婚と住民票の続柄については、以下の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『事実婚では住民票の記載が重要|続柄は夫(未届)妻(未届)ですか』
②住民票上の住所は同じだが世帯は別
住民票上の住所は同じですが、世帯は別になっている場合です。
住民票だけでは事実婚とは判断できないので、別の書類も提出する必要があります。
③住民票上の住所は違うが同居していた
住民票上の住所は違いますが、実際は同居していた場合です。
住民票では事実婚が判断できないので、別の書類を提出する必要があります。
④事実婚だが事情があり別々に暮らしていた
事実婚の夫婦であっても、事情があり別々に暮らしている場合があります。
例えば、単身赴任中で一時的に住所が違う場合です。
あるいは、親の介護をするために、実家に戻っている場合などが考えられます。
住民票では事実婚が判断できないので、別の書類を提出する必要があります。
2-2.事実婚だと判断するための資料
住民票の記載だけでは事実婚と判断できない場合、追加で資料を提出する必要があります。
日本年金機構が事実婚を判断するための資料は、『日本年金機構のホームページ』で確認できます。
以下は、日本年金機構が具体的に指定する書類です。
該当するケース | 提出書類 |
---|---|
健康保険等の被扶養者になっている | 健康保険被保険者証等の写し |
給与計算上で扶養手当等の対象になっている | 給与簿または賃金台帳簿等の写し |
他制度から遺族給付を受けている | 他制度の遺族年金証書等の写し |
当事者の挙式・披露宴等を1年以内に挙げている | 結婚式場等の証明書 |
葬儀の喪主になっている | 葬儀を主宰したことを証する書類 |
上記に該当しない場合は、その他の書類で事実婚を証明することになります。
その他の書類については、以下が例示されています。
- 連名の郵便物
- 公共料金の領収書
- 生命保険の保険証書
- 未納分の税の領収書
- 賃貸借契約書の写し
上記以外でも、証明するのに役立ちそうな書類があれが提出します。
日本年金機構に事実婚であると認められなければ、遺族年金は受給できないので、できる限り多く用意しましょう。
関連記事を読む『事実婚を証明する証拠は複数存在する』
3.事実婚の配偶者が遺族年金で注意する点
事実婚の配偶者が遺族年金に関して、注意する点を3つ説明します。
- 遺族年金は請求しないと貰えない
- 遺族年金にも消滅時効の規定がある
- 遺族年金は相続財産に含まれない
それぞれ説明していきます。
3-1.遺族年金は請求しなければ貰えない
事実婚の配偶者が遺族年金の受給要件を満たしていても、請求しなければ支給されません。
年金事務所が遺族を調べて支給するのではなく、遺族が申請書類等を準備して請求する必要があります。
遺族が何もしなければ、遺族年金も支給されないままです。
遺族年金の受給要件を満たしているなら、忘れずに請求手続きをしてください。
3-2.遺族年金にも消滅時効の規定がある
遺族年金の受給権にも、消滅時効の規定があります。
- 消滅時効
- 一定期間を経過すると権利が消滅すること
ですので、事実婚の配偶者が遺族年金を請求しなければ、一定期間(5年)経過後に権利は消滅します。
ただし、やむを得ない事情により、時効完成前に請求できなかった場合、過去5年間分は遡って請求できます。
遺族年金の受給権も放置しておくと消滅するので、受給要件を満たしているかは必ず確認してください。
関連記事を読む『遺族年金の消滅時効は5年|経過していても諦めずに請求』
3-3.遺族年金の受給と相続は別問題
事実婚の配偶者は遺族年金の遺族に含まれますが、相続人ではありません。
そもそも、遺族年金は相続財産に含まれないので、相続とは別問題です。
事実婚の配偶者が相続財産を取得するには、前もって相続対策をしておく必要があります。
例えば、遺言書で事実婚の配偶者に遺贈しておくです。遺贈の相手方に決まりはないので、事実婚の配偶者も相続財産を取得できます。
遺族年金と相続は別問題なので、相続財産があるなら忘れずに対策をしましょう。
関連記事を読む『事実婚では遺言書の作成が重要!配偶者に財産を残すなら書くべき』
4.まとめ
今回の記事では「事実婚と遺族年金」について説明しました。
事実婚の配偶者も受給要件を満たしていれば、遺族年金を受給することができます。
ただし、亡くなった人と生計維持関係にあったことや、事実婚であったことを証明する必要があります。
事実婚であったことを証明するには、複数の書類を提出しなければいけません。前もって、証明に使える書類の準備をしておきましょう。