遺族基礎年金には支給要件があるので、無条件では受け取れません。
「亡くなった人の要件」と「遺族の要件」を両方とも満たす必要があります。どちらか一方だけでは支給されません。
ただし、支給要件を満たしていても、停止要件や消滅要件に該当すると支給されないです。
今回の記事では遺族基礎年金の支給要件について説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。
目次
1.遺族基礎年金の支給要件(被保険者等)
亡くなった人が「被保険者」または「被保険者だった」場合、保険料の納付要件を満たさなければ、遺族基礎年金は支給されません。
- 被保険者だった人
- 日本国内に住所を有して、かつ、60歳以上65未満の人
保険料納付要件は2つあり、どちらかを満たせば大丈夫です。
- 納付済期間と免除期間を合算して被保険者期間の3分の2以上
- 直近1年間に保険料未納期間が無い
※令和8年3月末日まで、死亡者が65歳未満
それぞれ説明していきます。
1-1.納付済・免除期間が被保険者期間の3分の2以上
亡くなった人の「納付済期間」と「免除期間」を合算した期間が、被保険者期間の3分の2以上であれば支給要件を満たせます。
以下は、国民年金法の条文です。
【事例1】
被保険者期間が20年(240月)で、納付済期間が12年、免除期間が4年だった場合。
240×3分の2=160(必要な期間)
144+48=192(合算した期間)
合算した期間が192月なので、被保険者期間の3分の2以上です。遺族基礎年金の支給要件を満たしています。
【事例2】
被保険者期間が15年(180月)で、納付済期間が8年、免除期間が1年だった場合。
180×3分の2=120(必要な期間)
96+12=108(合算した期間)
合算した期間が108月なので、被保険者期間の3分の2未満です。遺族基礎年金の支給要件を満たしていません。
納付済期間と免除期間を合算した期間が、被保険者期間の3分の2未満だった場合でも、特例要件に該当すれば遺族基礎年金の支給要件を満たせます。
1-2.直近1年間に保険料未納期間が無い
亡くなった人の納付期間が3分の2未満であっても、直近1年間に未納期間が無ければ支給要件を満たせます。
以下は、国民年金法の条文です。
直近1年間に「納付済期間と免除期間」以外の期間が無いとき、つまり未納期間が無ければ、3分の2未満には該当しないという特例です。
ただし、死亡日に65歳以上の人は除きます。
【直近1年間に未納期間が無いケース】
死亡月(令和5年7月)の前々月(令和5年5月)までの1年間に未納期間が無いので、遺族基礎年金の支給要件を満たしています。
【直近1年間に未納期間が有るケース】
直近1年間の最後の月(令和5年5月分)が未納なので、遺族基礎年金の支給要件を満たせません。
保険料の未納期間が多くても、直近1年間に未納期間が無ければ、遺族基礎年金の支給要件は満たせます。諦めずに保険料は納付しておきましょう。
2.遺族基礎年金の支給要件(老齢基礎年金の受給者等)
亡くなった人が「老齢基礎年金の受給者」または「老齢基礎年金の受給資格者」の場合、受給資格期間が25年以上なければ、遺族基礎年金は支給されません。
以下は、国民年金法の条文です。
「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」を合算して25年以上あれば、支給要件を満たします。
老齢基礎年金の受給要件は10年に短縮されていますが、遺族基礎年金は25年で変わっていません。
ただし、寡婦年金の受給要件は10年に短縮されています。合算した期間が25年に満たなくても、寡婦年金の受給要件は満たしている可能性があります。
関連記事を読む『【寡婦年金の支給要件は5つ】夫と妻にそれぞれ要件がある』
3.遺族にも遺族基礎年金の支給要件
亡くなった人が支給要件を満たしていても、遺族に該当しなければ、遺族基礎年金は支給されません。
遺族基礎年金の遺族とは、亡くなった人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」で、かつ、支給要件を満たした人です。
3-1.遺族は生計維持要件を満たす必要がある
遺族基礎年金の生計維持要件を満たすには、以下の2つを両方とも満たす必要があります。
- 生計同一要件
- 収入要件
それぞれ説明していきます。
生計同一要件は住民票で判断する
亡くなった人と遺族の生計が同一だったかは、原則として住民票で判断します。当時者が住民票上で同一世帯であれば、生計同一要件は満たせます。
ただし、住民票上の住所が同一でなくても、生活費や療養費等の援助があれば、生計同一要件を満たすことは可能です。
遺族の収入が一定額未満である
以下のどちらかに該当すれば、遺族の収入要件は満たせます。
- 前年の年収が850万円未満
- 前年の所得が655.5万円未満
一時的な所得(退職金等)がある場合は除外して計算します。
3-2.配偶者と子に個別の支給要件がある
配偶者と子も個別の支給要件を満たす必要があります。
配偶者は子と生計同一が支給要件
配偶者が子(支給要件を満たした子)と生計が同一でなければ、遺族基礎年金の支給要件は満たせません。
遺族基礎年金の遺族とは「子のいる配偶者」なので、配偶者だけでは支給されないです。
子は死亡日の年齢が支給要件
子が遺族基礎年金の支給を受けるには、死亡日の年齢が支給要件となります。
- 18歳到達年度の3月31日までの子
- 20歳未満で障害等級(1級・2級)に該当する子
※婚姻していないこと
上記のどちらかに該当しなければ、遺族基礎年金の遺族には該当しません。
4.支給要件を満たしても年金が支給されない
遺族基礎年金の支給要件を満たしても、遺族に年金が支給されないケースは2つあります。
- 遺族基礎年金の停止要件に該当
- 遺族基礎年金の消滅要件に該当
それぞれ簡単に説明していきます。
4-1.停止要件に該当すると支給は停止される
遺族基礎年金の支給要件を満たしていても、遺族が停止要件に該当している間は支給されません。
- 配偶者が受給権を有すると子は支給停止
- 親と子の生計が同一なら子は支給停止
- 併給調整により支給停止
- 所在不明により支給停止
- 遺族補償により支給停止
上記に該当すると、遺族基礎年金の支給は停止されます。
ただし、支給停止が解除されると、遺族基礎年金を受け取れます。停止要件に該当しても、受給権が消滅するわけではありません。
関連記事を読む『【遺族基礎年金が支給停止】4つのケースを分かりやすく説明』
4-2.消滅要件に該当すると受給権が消滅する
遺族基礎年金の支給要件を満たしていても、遺族が消滅要件に該当すると受給権は消滅します。
- 遺族が死亡
- 遺族が結婚
- 配偶者と子の生計が別になった
- 子が一定年齢に達した
上記に該当すると、遺族基礎年金の受給権は消滅です。
たとえ遺族基礎年金の支給期間が短くても、受給権が消滅すると受け取れません。
関連記事を読む『遺族基礎年金はいつまでもらえる?受給権が消滅すると終了』
5.まとめ
今回の記事では「遺族基礎年金の支給要件」について説明しました。
遺族基礎年金が支給されるには、「亡くなった人の要件」と「遺族の要件」の両方を満たす必要があります。
亡くなった人は保険料の納付要件、遺族は生計維持要件と子の年齢要件を確認してください。
遺族基礎年金の支給要件を満たしていても、停止要件または消滅要件に該当すると、遺族に年金は支給されません。