自筆証書遺言の成立要件は4つ【自書・日付・氏名・押印】

自筆証書遺言の要件
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自筆証書遺言を作成するなら、4つの成立要件を満たす必要があります。

  • 遺言書を自分で書く
  • 遺言書の作成日を記載
  • 遺言者の氏名を記載
  • 遺言書に押印

どれか1つでも要件を満たしていなければ、本人の意思に関係なく遺言書は無効です。

自筆証書遺言は手軽に作成できると思われがちですが、成立要件に関しては非常に厳しいので注意しましょう。

今回の記事では、自筆証書遺言の成立要件について説明しているので、遺言書を作成するなら必ず確認しておいてください。

目次

  1. 自分で遺言書を書くことが要件
    1. 自筆証書遺言は第3者が読める字で書く
    2. 財産目録については自書以外でも大丈夫
  2. 自筆証書遺言を作成した日付の記載も要件
    1. 自筆証書遺言の日付には年月日を用いる
    2. 自筆証書遺言に日付印は使用しない
  3. 遺言者の氏名を署名することも要件
    1. 自筆証書遺言には苗字と名前を両方とも書く
    2. 自筆証書遺言には戸籍上の氏名を書く
  4. 自筆証書遺言への押印が要件
    1. 自筆証書遺言に押印する印鑑に定めはない
    2. 自筆証書遺言のどこに押印するか決まっていない
    3. 自筆証書遺言が複数枚なら割印は必要なのか?
  5. 自筆証書遺言の成立要件ではない事項
    1. 封筒の封印は成立要件ではない
    2. 住所の記載は成立要件ではない
  6. さいごに

1.自分で遺言書を書くことが要件

自筆証書遺言は自分で書く

自筆証書遺言の要件1つ目は、自分で遺言書を書くことです。

”自筆”証書遺言という言葉どおり、自分で書かなければ自筆証書遺言は成立しません。

以下は、民法の条文です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法968条)

たとえ遺言書の一部分であっても、他の人が書いていれば遺言書は無効となります。

1-1.自筆証書遺言は第3者が読める字で書く

自筆証書遺言の作成で一番気を付けるのは、第3者が読める字を書くことになります。

文字の書き方は人それぞれ違うので、自分は読めても他人は読めない可能性もあるからです。

例えば、遺言書に自書していることは間違いなくても、読めなければ相続手続きに使用できません。

遺言書を自書で作成するのは当然ですが、読める字で作成することも重要です。

1-2.財産目録については自書以外でも大丈夫

自筆証書遺言は自書することが要件なのですが、財産目録については法律で別の定めがされています。

以下は、民法の条文です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 (省略)
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法968条2項)

自筆証書遺言に添付する財産目録は、自書で作成しなくても大丈夫です。

例えば、財産目録をWord(ワード)で作成したり、銀行の通帳をコピーして作成することもできます。

ただし、財産目録についても、遺言者が署名捺印する必要があります。

 

2.自筆証書遺言を作成した日付の記載も要件

自筆証書遺言の作成日を記載

自筆証書遺言の要件2つ目は、遺言書を作成した日付の記載です。

自筆証書遺言には作成日を忘れずに記載してください。

以下は、民法の条文です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法968条)

たとえ遺言書を書いたのが本人であっても、遺言書の作成日が抜けていれば無効となります。

2-1.自筆証書遺言の日付には年月日を用いる

法律上は、日付の記載方法について決まりがありません。

ですが、誰が読んでも日付が分かるように、「年月日」を用いて日付を記載してください。

「R4.5.14」でも成立要件を満たす可能性はありますが、「令和4年5月14日」と記載する方が安全です。

2-2.自筆証書遺言に日付印は使用しない

自筆証書遺言の作成日を日付印で表示しても、遺言書の成立要件は満たしていません。

なぜなら、遺言書の日付も自書することが要件だからです。

そもそも、日付印では誰が押したか分からないので、本人の意思確認になりません。

 

3.遺言者の氏名を署名することも要件

自筆証書遺言には遺言者の氏名を記載

自筆証書遺言の要件3つ目は、遺言者の氏名を署名することです。

自筆証書遺言にはあなたの氏名を忘れずに記載してください。

以下は、民法の条文です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法968条)

どの財産を誰に相続させるかも重要ですが、遺言者の氏名を書き忘れると無効になります。

3-1.自筆証書遺言には苗字と名前を両方とも書く

過去の判例では、苗字だけしか記載していない遺言書でも、本人であることが特定できれば遺言書は有効とされています。

ですが、後々のトラブルを防ぐためにも、苗字と名前を両方書きましょう。

遺言書の信憑性を低くするような記載をするメリットがありません。

3-2.自筆証書遺言には戸籍上の氏名を書く

過去の判例では、通称の氏名を記載した遺言書でも、本人であることが確認できれば遺言書は有効とされています。

ですが、遺言書に記載する氏名は戸籍謄本と一致させてください。

なぜかというと、相続手続きでは遺言書と戸籍謄本を一緒に提出するので、遺言書と戸籍上の氏名が一致しなければ余計な手間が発生する恐れがあるからです。

遺言書の成立要件を満たしていても、相続手続きで問題が発生しては意味がありません。

 

4.自筆証書遺言への押印が要件

自筆証書遺言には押印が必要

自筆証書遺言の要件4つ目は、自筆証書遺言への押印です。

自筆証書遺言には作成者(遺言者)の押印が必要となります。

以下は、民法の条文です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法968条)

たとえ遺言書の文章(内容)に問題が無くても、印が押されていなければ遺言書は無効です。

4-1.自筆証書遺言に押印する印鑑に定めはない

民法では自筆証書遺言に押印する印鑑について、特に定めがありません。

ですので、要件上はどの印鑑を使用しても問題ありません。

自筆証書遺言に認印で押印しても問題はないのか?

自筆証書遺言に認印で押印しても成立要件は満たしています。

ただし、認印よりも実印で押印した方が、遺言書の成立を巡る争いを防ぎやすいです。

あなたにとって重要な書面である遺言書には、実印で押印することをお勧めします。

自筆証書遺言への押印が拇印でも無効ではない

過去の判例では、自筆証書遺言への押印が拇印ぼいんであっても有効という判断です。

ですが、わざわざ拇印する必要はないので、印鑑で押印しましょう。

4-2.自筆証書遺言のどこに押印するか決まっていない

自筆証書遺言に押印が無ければ無効となりますが、どこに押印するかは決まっていません。

ただし、押印の箇所が決まっていないからといって、変わった箇所に押印すると遺言書の成立が疑われる恐れがあります。

わざわざ疑われる必要もないので、分かりやすく氏名の横または下に押印しましょう。

4-3.自筆証書遺言が複数枚なら割印は必要なのか?

自筆証書遺言が複数枚の場合、割印がなくても遺言書は有効に成立します。

ですが、遺言書の成立要件とは別に、遺言書が繋がっているかで揉めることはあります。

余計な揉め事を防ぐためにも、遺言書が複数枚なら割印をしておきましょう。

 

5.自筆証書遺言の成立要件ではない事項

最後に、自筆証書遺言の成立要件ではない事項について、簡単に説明しておきます。

いずれの事項も、自筆証書遺言の証拠能力を高めるための方法です。

5-1.封筒の封印は成立要件ではない

自筆証書遺言を封筒に入れて保管する場合、封筒に封印する人も多いです。

ですが、封筒に封印することは自筆証書遺言の成立要件ではありません。

ですので、見つかった封筒に封印がされていなくても、自筆証書遺言は有効に成立します。

5-2.住所の記載は成立要件ではない

自筆証書遺言に住所・氏名を記載する人も多いです。

ですが、住所の記載は遺言書の成立要件ではありません。

したがって、見つかった遺言書に住所の記載が無くても、自筆証書遺言は有効に成立しています。

 

6.さいごに

自筆証書遺言の成立要件は4つあります。

  • 遺言書を自分で書く
  • 遺言書の作成日を記載
  • 遺言者の氏名を記載
  • 遺言書に押印

どれか一つでも欠けると、自筆証書遺言は無効となります。

自筆証書遺言を作成するなら、成立要件を満たすだけでなく、第3者が読んでも分かりやすいように記載してください。

遺言書を実際に使用するのは、遺言者ではなく相続人等だからです。

自筆証書遺言をチェックする場合は、自分だけでチェックするのではなく、できる限り他の人のチェックを受けましょう。

自分で書いた文章のミスには、他人の方が気付きやすいです。