自筆証書遺言に契印(割印)が無くても法律上は有効

自筆証書遺言に契印が無かったとしても、法律上の成立要件は満たしています。

ただし、複数枚で一通の遺言書だと判断されない可能性はあります。

自筆証書遺言が複数枚になるなら、契印をしておいた方が安全です。

今回の記事では、自筆証書遺言の契印について説明しているので、遺言書作成の参考にしてください。

1.自筆証書遺言の契印について図を用いて説明

まずは、自筆証書遺言の契印について説明していきます。

遺言者の相続人や相続財産が多いと、遺言書に記載する内容が多くなるので、遺言書が複数枚になることは珍しくありません。

そして、複数枚の書面で一通の遺言書であると証明するために、自筆証書遺言に契印をすることがあります。

契印
書類が連続していることを示すために押す印のこと

以下の図を用いて説明します。

自筆証書遺言に契印する流れ

  1. 自筆証書遺言を作成する
  2. 遺言書を重ねてホッチキスで留める
  3. 遺言書の一枚目を折り返す
  4. 折り返した境目に押印する

作成した自筆証書遺言が2枚以上であれば、遺言書を重ねてホッチキスで留めます。

次に、遺言書を折り返して、折り返した境目に押印(契印)します。遺言書が3枚以上あれば、2枚目以降も折り返して契印します。

自筆証書遺言に契印をすることにより、複数枚で一通の遺言書であると証明しやすくなります。

ただし、自筆証書遺言に契印が無くても、法律上は問題ありません。

 

2.自筆証書遺言の成立要件に契印は含まれない

自筆証書遺言の成立要件に契印は含まれていません。

上記の要件を満たしていれば、自筆証書遺言は有効に成立します。

したがって、自筆証書遺言に契印が無くても、法律上は有効に成立します。

2-1.一通の遺言書と判断できるなら契印が無くても有効

自筆証書遺言が複数枚で構成されていても、一通の遺言書であると判断できれば問題ありません。

以下は、最高裁の判例です。

自筆遺言書が二葉にわたり、その間に契印がなく、綴じ合わされていなくても、第二葉には第一葉において譲渡する旨示した物件が記載されていて、両者は紙質を同じくし、いずれも遺言書の押印と同一の印で封印されて遺言者の署名ある封筒に収められている場合には、一通の遺言書と明認できる。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和37年5月29日最高裁判所第三小法廷判決)

上記の判例を簡単に説明すると、自筆証書遺言が2枚(二葉)で契印が無くても、一通の遺言書と判断できるなら有効です。

あくまでも、契印自体は自筆証書遺言の成立要件ではないので、契印以外で一通の遺言書と判断できるなら問題ありません。

 

3.自筆証書遺言に契印しないと抜き取りの可能性

自筆証書遺言に契印をしなくても、法律上は問題ありません。

ですが、自筆証書遺言が複数枚になるなら、契印はしておいた方が安全です。

なぜかというと、自筆証書遺言の記載内容によっては、一部を抜き取られる可能性があるからです。

以下の図を用いて説明します。

自筆証書遺言の内容を分けて記載している

自筆証書遺言の1枚目・2枚目・3枚目で内容を分けて記載しています。

相続(遺贈)の相手が複数人いるなら、上記の図のように分けて記載する人もいます。

ただし、自筆証書遺言の一部を抜き取られても、自筆証書遺言が成立してしまう危険性があります。

自筆証書遺言の一部を抜き取られる

2枚目のBに相続させる内容の部分だけ抜き取っても、文章に矛盾が無ければ自筆証書遺言は成立します。

つまり、AとCに相続させる財産についてだけ記載した遺言書です。記載されていない財産(2枚目部分)については、相続人全員で遺産分割協議が必要です。

自筆証書遺言の抜き取りを防ぐなら、契印は有効な対策になります。

 

4.自筆証書遺言を法務局に保管するなら契印は不要

自筆証書遺言の改ざんや紛失を防ぐなら、法務局に保管するのが一番確実です。

そして、法務局に保管するなら、自筆証書遺言に契印は不要になります。

法務局に原本を保管するので、抜き取り等はすることができません。法務局に保管すること自体が不正対策です。

保管手数料も3,900円と低額なので、自筆証書遺言の不正対策を考えるぐらいなら、法務局に保管しましょう。

 

5.さいごに

自筆証書遺言に契印をしなくても、法律上は有効に成立します。

ただし、契印が無くても、一通の遺言書だと判断される必要があります。遺言書が複数枚なら契印した方が一通の遺言書だと分かりやすいです。

また、契印には自筆証書遺言の抜き取りを防ぐ効果もあるので、遺言書の記載内容によっては重要な対策になります。

自筆証書遺言は公正証書遺言に比べると、死後に改ざんされる可能性が高いので気を付けてください。

遺言書を作成すると、以下のようなことが可能です。

  • 相続人以外に財産を残す
  • 特定の相続人に財産を残す
  • 遺産分割協議が不要になる

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