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【相続放棄と限定承認の違い】9つの項目で比較

限定承認と相続放棄
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相続放棄と限定承認の違いはご存知でしょうか。

どちらも相続方法の1つですが、手続きや効力には大きな違いがあります。

どちらかの方法でなければ、達成することができない相続もあるので、選ぶ際には注意が必要です。

今回の記事では、相続放棄と限定承認について9つの項目で比較しているので、、相続方法で悩まれているなら参考にしてください。

1.相続放棄と限定承認は家庭裁判所の手続き

限定承認と相続放棄どちらも家庭裁判所での手続きが必要です。

ただし、家庭裁判所での手続きは、同じ部分もあれば違う部分もあるので、間違わないように気を付けてください。

1-1.相続放棄と限定承認の申立期間は同じ

限定承認と相続放棄どちらの申立ても、相続の開始を知った日から3ヶ月以内となります。

3ヶ月以内に申立てをしない場合は、単純承認したとみなされます。

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
(中略)
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

出典:e-Govウェブサイト(民法921条)

単純承認をしないのであれば、3ヶ月以内に申立てを終わらせてください。

1-2.相続放棄と限定承認では申述人に違いがある

限定承認と相続放棄では、申述人に違いがあります。

相続放棄は個別に申請する

相続放棄はそれぞれの相続人が単独で申請します。

ですので、他の相続人が単純承認しても関係ありません。

例えば、相続人が複数人いる場合でも、1人だけ相続放棄することもできますし、全員がそれぞれ相続放棄することもできます。

限定承認は相続人全員で申請する

限定承認は相続人全員で申請します。

(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法923条)

したがって、他の相続人が単純承認すると、限定承認をすることはできません。

単純承認は相続人全員で申請

限定承認をする場合は、相続人全員の意見を合わせる必要があります。

 

2.相続放棄と限定承認では相続財産の扱いが違う

限定承認と相続放棄では、相続財産の扱いに違いがあります。

  • プラスの財産(預貯金や不動産)
  • マイナスの財産(借金など)
  • 後から見つかった財産

2-1.相続放棄すると全財産を放棄する

相続放棄をすると初めから相続人ではないので、プラスの財産もマイナスの財産も相続しません。

ですので、亡くなった人に借金があっても関係ありません。

2-2.限定承認すると条件付きで負債を負担する

限定承認は相続なので、プラスの財産もマイナスの財産も相続します。

ただし、限定承認ではプラスの財産を限度として、マイナスの財産を負担します。

プラスの財産を限度にマイナスの財産を負担

例えば、プラスの財産が100万円で、マイナスの財産が500万円であれば、100万円を限度してマイナスの財産を負担します。

2-3.相続放棄と限定承認では後から見つかった財産の扱いが違う

相続放棄と限定承認では、後から見つかった財産の扱いにも違いがあります。

相続放棄をすると財産はすべて相続できない

相続放棄をしている場合は、後から財産が見つかっても相続することはできません。

たとえ預貯金が見つかっても、相続人ではないので受け取ることはできないです。

限定承認をしているなら相続できる

限定承認は相続なので、後から預貯金が見つかれば相続できます。

ただし、支払えていないマイナスの財産があれば、支払いに充てることになります。

 

3.相続放棄と限定承認の費用比較

限定承認と相続放棄では、手続費用に大きな違いがあります。

3-1.相続放棄は申立て費用のみ

相続放棄の費用は、家庭裁判所への申述申立て費用のみです。

ただし、専門家に依頼するなら、専門家報酬も発生します。

3-2.限定承認の費用は複数ある

限定承認の費用は、家庭裁判所への申述申立て費用以外にもあります。

以下の4つが限定承認の費用として考えられます。

  • 家庭裁判所への申立て費用
  • 官報公告の掲載料
  • 清算手続きの費用
  • 専門家報酬

限定承認の費用は数十万円はかかるので、相続放棄の何倍も必要です。

 

4.相続放棄と限定承認の細かい比較

限定承認と相続放棄に関する、その他の比較です。

  • 撤回はどちらも認められない
  • 次順位相続人への影響
  • 年間の申立件数

4-1.相続放棄と限定承認はどちらも撤回できない

限定承認と相続放棄どちらの手続きも、撤回することは認められません。

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法919条)

後から気が変わっても撤回することはできないので、どちらの手続きを選ぶ場合でも気を付けてください。

4-2.相続放棄と限定承認では次順位相続人への影響が違う

限定承認と相続放棄では、次順位相続人への影響が違います。

全員が相続放棄すると次順位に移る

先順位相続人が全員相続放棄すると、次順位相続人に相続権が移ります。

ですので、亡くなった人に借金があった場合、次順位相続人も相続放棄の手続きが必要になります。

限定承認をすると相続は移らない

限定承認をすると相続は確定するので、次順位相続人に相続権は移りません。

次順位相続人に迷惑をかけたくないので、限定承認を選ぶ相続人もいます。

限定承認のメリットの1つが、次順位相続人に相続が移らないです。

4-3.相続放棄と限定承認の年間申立件数

相続放棄と限定承認の年間申立件数は、比較にならないぐらい違いがあります。

以下の表は過去3年間の件数比較です。

限定承認と相続放棄の申立件数
限定承認 相続放棄
2018 709 215,320
2019 657 225,415
2020 675 234,732
<参考資料:司法統計>

限定承認の申立件数は、1年間で約700件しかありません。

限定承認を知っている人が少ないのは、単純に申請件数が少ないのも理由です。

 

5.さいごに

今回の記事では「相続放棄と限定承認の違い」について説明しました。

相続放棄と限定承認の比較を、簡単にですが表にしております。

限定承認と相続放棄の比較
限定承認 相続放棄
申立期間 3ヶ月以内 3ヶ月以内
申述人 相続人全員 単独
プラスの財産 相続できる 相続しない
マイナスの財産 プラスの財産
を限度に負担
相続しない
後から見つかった財産 相続できる 相続しない
撤回の可否 できない できない
手続費用 複数ある 申立て費用のみ
次順位相続人 影響なし 影響あり
年間の申立件数 約700件 約22万件

あなたの希望によって、相続放棄あるいは限定承認、または単純承認を選ぶことになります。

相続には3ヶ月以内という期間制限があるので、1人で悩んでいる間にも時間は過ぎていきます。

限定承認と相続放棄どちらにもメリット・デメリットがあるので、少しでも疑問があれば専門家に相談してください。