限定承認は亡くなった人の相続人全員で行います。誰か1人でも反対の相続人がいると、限定承認をすることはできません。
相続人全員と親しければ連絡を取るのも難しくないですが、以下に該当すると連絡を取るのが難しくなります。
- 代襲相続が発生している
- 相続放棄をした相続人がいる
- 行方不明の相続人がいる
相続人全員が納得しなければ、単純承認または相続放棄のどちらかを選ぶことになります。
今回の記事では、相続人全員での限定承認について説明しているので、限定承認を検討する際の参考にしてください。
目次
1.誰か1人でも反対すると限定承認できない
相続人が複数人存在する場合、限定承認は相続人全員で行う必要があります。
1人でも反対の相続人がいると、限定承認をすることはできません。単純承認か相続放棄を選ぶことになります。
相続人全員でなければ行えない点が、限定承認の申請件数が少ない理由として挙げられます。
以下のどれかに該当していると、限定承認の手続きをするのが大変になります。
- 代襲相続が発生している
- 相続放棄した相続人がいる
- 相続人の中に行方不明者がいる
なぜ大変になるかを、項目別に説明していきます。
2.限定承認には代襲相続人の同意も必要
相続人の中に亡くなっている人がいると、代襲相続が発生しているか確認しておきましょう。
なぜなら、代襲相続が発生していると、限定承認をするのに代襲相続人も共同して行う必要があるからです。
代襲相続人が発生すると、相続人の人数が増えることもあります。限定承認に関わる人が増えるので、忘れずに連絡を取っておきましょう。
代襲相続が発生するのは、相続人が「子ども」または「兄弟姉妹」の場合です。
【子ども】
相続人である子どもが亡くなっていて、子どもに子ども(孫)がいると代わりに相続人となります。
【兄弟姉妹】
相続人である兄弟姉妹が亡くなっていて、兄弟姉妹に子ども(甥・姪)がいると代わりに相続人となります。
3.相続放棄した人は限定承認に関わらない
相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったとみなされます。
したがって、相続放棄をした相続人は、限定承認に関わることはありません。
3-1.相続放棄により人数が変わる
相続放棄をした相続人は、限定承認をする人には含まれません。
例えば、配偶者と子ども2人が相続人だったとします。子どもの内1人が相続放棄をすれば、配偶者と子ども1人で限定承認をすれば大丈夫です。
3-2.相続放棄により相続人が変わる
限定承認で問題になるのは、同順位の相続人が全員相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ることです。相続人が変更すれば、当然ですが限定承認をする人も変更になります。
例えば、配偶者と子どもが相続人だったとします。子どもが相続放棄すると、配偶者と次順位の相続人が限定承認をすることになります。
配偶者が限定承認をするには、次順位の相続人と連絡を取り、かつ、限定承認の説明を理解してもらう必要があります。
4.相続人の中に行方不明者がいても除外できない
共同相続人の中に行方不明者がいても、限定承認から行方不明者を除外することはできません。
そのため不在者財産管理人を選任する必要があります。
限定承認までの流れは以下になります。
- 不在者財産管理人の選任
- 権限外行為許可の申立て
- 限定承認の申述申立て
①不在者財産管理人の選任
まずは、不在者のために不在者財産管理人の選任申立てをします。
共同相続人は利害関係があるので、申立てをすることが可能です。
②権限外行為許可の申立て
不在者財産管理人の権限は保存行為と管理行為です。
限定承認の申立ては権限外行為となるので、家庭裁判所に権限外行為許可の申立てをします。
関連:『不在者財産管理人の権限外行為許可とは?』
③限定承認の申述申立て
権限外行為の許可を得たら、相続人と不在者財産管理人が共同で限定承認の申述申立てをします。
5.さいごに
限定承認をするには、相続人全員で行う必要があります。1人でも反対の相続人がいると、限定承認をすることはできません。
以下に該当すると限定承認が面倒になります。
- 代襲相続が発生している
- 相続放棄した人がいる
- 行方不明の相続人がいる
相続人全員に連絡を取り、限定承認の説明をして理解してもらうのは大変です。連絡を取るのに時間がかかりそうなら、期間伸長の申立てをしておいてください。