代襲相続について調べるなら、民法の条文を一度は確認しておきましょう。
民法は条文の多い法律ですが、代襲相続に関する部分であれば4つだけです。
代襲相続の発生要件や代襲相続人の相続分も、4つの条文に含まれています。
今回の記事では、代襲相続に関する民法の条文について説明しているので、代襲相続を勉強する際の参考にしてください。
目次
1.孫の代襲相続(民法887条2項)
民法887条2項では、被相続人の孫が代襲相続する場合を規定しています。
以下は、民法の条文です。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 (省略)
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
被相続人の子どもが相続権を失ったときは、子どもの子ども(孫)が代わりに相続します。
孫が代襲相続人になるのは、相続の現場では珍しくありません。
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1-1.代襲相続の発生要件は複数ある
民法887条2項には、代襲相続の発生要件が3つ記載されています。
- 相続開始前に死亡
- 相続人の欠格事由に該当
※民法891条 - 推定相続人の廃除
上記のいずれかに該当すると、子どもの子ども(孫)が代襲相続します。
死亡以外で代襲相続が発生することは少ないですが、確認だけはしておいてください。
関連記事を読む『代襲相続は廃除でも発生するので気を付けよう』
1-2.直系卑属以外は代襲相続できない
民法887条2項のただし書きで、直系卑属でない人は代襲相続できないと規定しています。
どのようなケースが関係するかというと、被相続人が養子縁組を結んでいて、養子が先に亡くなっている場合です。
養子縁組を結ぶ前に出生した子どもは、養親(被相続人)の直系卑属ではありません。直系卑属ではないので代襲相続できないです。
それに対して、養子縁組を結んだ後に出生した子どもは、養親(被相続人)の直系卑属になります。
養子が先に亡くなっている場合は、養子の子どもの出生日に注意してください。
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2.再代襲相続(民法887条3項)
民法887条3項では、再代襲相続について規定しています。
以下は、民法の条文です。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 (省略)
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
民法887条2項の規定は、代襲者が代襲相続権を失った場合に準用します。
民法に限らず法律の条文を読んでいると、「〇〇の規定は〇〇の場合について準用する」という文言を目にします。
- 準用
- ある事項に関する規定を類似する他の事項について必要な修正を加えて当てはめること
民法887条2項の規定を孫に当てはめると、以下のようになります。
被相続人の孫(代襲者)が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失ったときは、その孫の子(曾孫)がこれを代襲して相続人となる。
簡単に説明するなら、被相続人よりも先に子どもと孫が亡くなっていても、曾孫がいれば再代襲相続人となります。
平均寿命が延びているので、再代襲が発生する可能性はあります。
3.甥・姪の代襲相続(民法889条2項)
民法889条2項では、甥・姪が代襲相続する場合を規定しています。
以下は、民法の条文です。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 (省略)
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
代襲相続(民法887条2項)の規定は、被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合に準用します。
3-1.代襲相続(民法887条2項)の規定を準用する
代襲相続(民法887条2項)の規定を、被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合に準用します。
代襲相続の規定を兄弟姉妹に当てはめると、以下のようになります。
被相続人の兄弟姉妹が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、その相続権を失ったときは、その兄弟姉妹の子(甥・姪)がこれを代襲して相続人となる。
代襲相続(民法887条2項)の規定を準用しているので、兄弟姉妹が先に死亡していても甥・姪が代襲相続人になります。
司法書士から一言兄弟姉妹は廃除できないので準用しません。
3-2.再代襲(民法887条3項)は準用していない
被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合、再代襲相続(民法887条3項)の規定は準用していません。
あくまでも、民法889条2項で準用しているのは代襲相続(民法887条2項)だけです。
したがって、甥・姪に子どもがいたとしても、再代襲することはありません。
例えば、被相続人の兄および甥(兄の子)が先に亡くなっていても、甥の子どもは相続人になりません。
非常に間違えやすいので、相続人を確認する際は気をつけてください。
4.代襲相続人の相続分(901条)
民法901条では、代襲相続人の相続分について規定しています。
以下は、民法の条文です。
(代襲相続人の相続分)
第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
代襲相続人の相続分は、本来の相続人の法定相続分と同じになります。
【例題】
例えば、亡くなった人の相続人が「配偶者」と「孫」だとします。
本来の相続人(先に亡くなった子ども)の相続分は2分の1なので、代襲相続人である孫の相続分も2分の1になります。
- 配偶者:2分の1
- 孫 :2分の1
代襲相続人が1人であれば、法定相続分を間違うことも少ないです。
民法901条1項ただし書きにより、代襲相続人が複数人いる場合は、本来の相続人の相続分を人数で分割します。
【例題】
例えば、亡くなった人の相続人が「配偶者」と「孫2人」だとします。
本来の相続人(先に亡くなった子ども)の相続分2分の1を孫2人で分割します。
- 配偶者:2分の1
- 孫 :4分の1
- 孫 :4分の1
代襲相続人が何人であっても、配偶者の相続分は変わりません。
民法901条2項により、兄弟姉妹の子(甥・姪)が代襲相続する場合に準用されます。
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5.さいごに
代襲相続について調べるなら、民法の条文を一度は読んでおきましょう。
代襲相続に関する条文は、民法887条2項、民法887条3項、民法889条2項、民法901条の4つを確認すれば大丈夫です。
代襲相続の発生要件や再代襲相続、代襲相続人の相続分などが規定されています。
みかち司法書士事務所では、相続に関する民法の条文についても説明しているので、相続の悩みを解決する際の参考にしてください。