相続財産清算人に関する民法の条文【952条から957条】

民法改正(令和5年4月1日)により、相続財産管理人は相続財産清算人へと名称が変わりました。

名称が変わっても基本的な内容は同じなのですが、公告については変更があります。

広告の回数や期間満了日が違っているので、一度は確認しておきましょう。

今回の記事では、相続財産清算人に関する民法の条文について説明しているので、相続手続きの参考にしてください。

相続財産清算人の選任(民法952条)

民法952条では、相続財産清算人の選任について定めています。

  • 民法952条1項:選任の請求
  • 民法952条2項:選任の公告

それぞれ説明していきます。

相続財産清算人の選任請求(民法952条1項)

民法952条1項では、相続財産清算人の選任請求について定めています。

(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法952条)

相続人の存在が不明(民法951条)な場合、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求があれば、相続財産清算人を選任します。

つまり、相続人の存在が不明だからといって、自動的に相続財産清算人は選任されません。相続財産清算人が必要であれば、家庭裁判所に選任申立てをしてください。

相続財産清算人の公告(民法952条2項)

民法952条2項では、相続財産清算人の公告について定めています。

令和5年4月1日の法改正により、条文も変わっているので注意してください。

(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 (省略)
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法952条2項)

相続財産清算人を選任した場合、家庭裁判所は公告を行うでのですが、民法改正により違いがあります。

相続財産清算人に関する1回目の公告

民法改正前は、「相続財産清算人の選任」だけを公告していました。

それに対して、民法改正後は、「相続財産清算人の選任」と「相続権の主張」を同じタイミングで公告します。

相続権を主張できる期間は、6ヶ月を下回ることができません。

 

不在者財産管理人の規定を準用(民法953条)

民法953条では、不在者財産管理人の規定の準用について定めています。

(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の清算人(以下この章において単に「相続財産の清算人」という。)について準用する。

出典:e-Govウェブサイト(民法953条)

相続財産清算人の権利や義務については、不在者財産管理人の規定を準用しています。

以下は、27条から29条の主な項目です。

  • 相続財産の目録作成
  • 保存行為は許可不要
  • 処分行為は家庭裁判所の許可
  • 相続財産清算人の報酬

相続財産清算人の条文を確認する際は、不在者財産管理人の条文も確認しておきましょう。

 

相続財産清算人の報告義務(民法954条)

民法954条では、相続財産清算人の報告義務について定めています。

(相続財産の清算人の報告)
第九百五十四条 相続財産の清算人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法954条)

相続財産清算人は、相続債権者や受遺者から請求があった場合、相続財産の状況を報告する義務があります。

相続債権者や受遺者は、相続財産清算人の報告を聞いて、相続財産を取得できるかの判断材料とします。

 

相続財産法人の不成立(民法955条)

民法955条では、相続財産法人の不成立について定めています。

(相続財産法人の不成立)
第九百五十五条 相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の清算人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

出典:e-Govウェブサイト(民法955条)

相続人の存在が明らかになった場合、相続財産法人(民法951条の法人)は成立しなかったとみなされます。

ただし、相続財産清算人が権限内でした行為の効力は有効です。当然ですが、権限外の行為を許可なくしている場合は、無効となるので注意してください。

 

相続財産清算人の代理権消滅(民法956条)

民法956条では、相続財産清算人の代理権消滅について定めています。

(相続財産の清算人の代理権の消滅)
第九百五十六条 相続財産の清算人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2 前項の場合には、相続財産の清算人は、遅滞なく相続人に対して清算に係る計算をしなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法956条)

相続人が相続の承認をした場合、相続財産清算人の代理権は消滅します。

そして、相続財産清算人は、遅滞なく相続人に対して清算の計算をする必要があります。計算が終われば、相続人に相続財産を引き渡して終了です。

 

相続債権者および受遺者に対する弁済(民法957条)

民法957条では、相続債権者および受遺者に対する弁済について定めています。

  • 民法957条1項:請求申出の公告
  • 民法957条2項:限定承認の規定を準用

それぞれ説明していきます。

相続債権者等に対する請求申出の公告(民法957条1項)

民法957条1項では、相続債権者等に対する請求申出の公告について定めています。

令和5年4月1日の法改正により、条文も変わっているので注意してください。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法957条)

相続財産清算人の選任・相続権主張の公告(民法952条2項)があった場合、相続財産清算人は相続債権者等に対する請求申出の公告をする必要があります。

請求申出の公告に関する重要な点は、以下の2つです。

  • 請求申出の期間は2ヶ月以上
  • 請求申出の期間は相続権主張の期間内に満了

文字だけだと分かりにくいので、以下の図を参考にしてください。

相続債権者等に対する請求申出の公告

相続債権者等に対する請求申出(2回目の公告)の期間満了日は、相続権主張(1回目の公告)の期間満了日までに終わらせる必要があります。

限定承認の規定を準用(民法957条2項)

民法957条2項では、限定承認の規定の準用について定めています。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 (中略)
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

出典:e-Govウェブサイト(民法957条2項)

相続債権者および受遺者に対する弁済については、限定承認の規定を準用しています。

以下は、927条2項から4項および928条から935条の主な項目です。

  • 官報公告の内容
  • 期間満了前の弁済拒絶
  • 弁済の順序
  • 相続財産の換価手続き
  • 不当弁済をした相続財産清算人の責任

相続財産清算人の条文を確認する際は、限定承認の条文も確認しておきましょう。

 

まとめ

今回の記事では「相続財産清算人に関する民法の条文」について説明しました。

令和5年4月1日の民法改正により、相続財産管理人は相続財産清算人へ名称が変更しています。

以下は、条文の主な内容です。

  • 民法952条:相続財産清算人の選任
  • 民法953条:不在者財産管理人の規定を準用
  • 民法954条:相続財産清算人の報告義務
  • 民法955条:相続財産法人の不成立
  • 民法956条:相続財産清算人の代理権消滅
  • 民法957条:相続債権者等に対する弁済

相続財産清算人については、不在者財産管理人や限定承認に関する条文も関係します。

民法改正により条文にも変更があるので、一度は条文を確認しておきましょう。

 

相続財産清算人の条文に関するQ&A

Q.相続財産管理人と相続財産清算人の違いは何ですか?
A.名称が違うだけで、基本的な内容は同じです。
Q.公告に関する条文の変更により何が変わりましたか?
A.相続人不存在の確定までに必要な期間が短くなりました。

以下のようなケースでは、相続財産清算人が必要になります。

  • 特別縁故者の財産分与
  • 亡くなった人の財産管理を引き継ぎたい
  • 亡くなった人の共有持分を取得
  • 相続債権を回収

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