相続登記と登記識別情報の関係では、2つのことを知っておきましょう。
- 相続登記の申請に登記識別情報は不要
- 相続登記の申請人に登記識別情報が発行
相続登記を申請する際に亡くなった人の登記識別情報は不要です。
そして、相続登記が完了すると新しい登記識別情報が発行されます。
今回の記事では、相続登記と登記識別情報について説明しているので、相続登記を申請する際の参考にしてください。
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1.相続登記の申請に登記識別情報は不要
不動産の登記に関係する書類に登記識別情報(登記済証)があります。
※昔は不動産の権利証とも呼ばれていました。
- 登記識別情報
-
登記済証に代えて発行されるアラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号のこと
ただし、相続登記の申請に登記識別情報は不要です。
1-1.亡くなっている人の意思確認はできない
不動産の名義を変更する際に、登記識別情報(登記済証)を提出するのは、本人確認や意思確認のためです。
ですが、相続登記を申請する時点で、本人(登記名義人)はすでに亡くなっています。登記識別情報を提出しても、本人確認や意思確認にはなりません。
そのため、相続登記では登記識別情報の提出が不要となっています。
相続登記では相続人であることを証明するために、戸籍謄本や遺言書または遺産分割協議書等を提出します。
関連記事を読む『相続登記の添付書類は相続の内容により違いがある』
1-2.例外的に登記識別情報が必要になる場合
原則として、相続登記を申請する際に、登記識別情報を提出することはありません。
ただし、例外的に登記識別情報を提出するケースがあります。
不動産登記簿に記録されている登記名義人の住所が、亡くなった際の住所と違う場合です。記録されている住所と違う場合、通常は住民票や戸籍の附票で住所の繋がりを証明します。
ですが、住民票や戸籍の附票には保存期間があるので、取得できず住所の繋がりを証明できない相続人もいます。
住所の繋がりを証明できない場合に、法務局から登記識別情報の提出を求められることがあります。
関連記事を読む『相続登記で住所がつながらない場合は別の書類を用意』
2.登記識別情報は相続登記の申請人に発行
相続登記を申請すると、新しく登記識別情報が発行されます。
相続人が相続登記後に不動産を売却する際には、新しい登記識別情報を使用します。
ただし、登記識別情報が発行されるのは、相続登記の申請人だけです。
つまり、相続人が複数人存在する場合に、相続人の1人が単独で申請すると、申請人以外の相続人には登記識別情報は発行されません。
例えば、相続人がA・B・Cの3人の場合、Aだけが申請人になると、登記識別情報はAのみに発行されます。
2-1.法定相続分での相続登記に注意
相続人の1人が単独で申請する相続登記とは、不動産を法定相続分で登記する場合のことです。
法定相続分で登記する場合は、相続人の1人から単独申請が認められています。
なぜなら、法定相続分で登記するだけなので、相続人全員が申請人にならなくても問題がないからです。
単独申請なら他の相続人の協力も不要なので、自分だけで相続登記を完了させることができます。
ただし、他の相続人には登記識別情報が発行されません。
関連記事を読む『相続登記を法定相続分で申請するなら単独でも可能』
2-2.登記識別情報が発行されないデメリット
登記識別情報が発行されないと、不動産を処分する際の登記でデメリットが発生します。
不動産を処分(売却・贈与等)する際に登記識別情報が提出できない場合は、以下の3つの方法から選ぶことになります。
- 法務局からの事前通知
- 司法書士が本人確認
- 公証人が本人確認
法務局からの事前通知は時間がかかりますし、司法書士や公証人の本人確認は有料になります。
不動産を処分することが決まっているなら、法定相続分での登記は相続人全員で申請して登記識別情報を取得しておきましょう。
3.遺贈の登記では登記識別情報が必要
相続登記と間違えやすいのですが、遺贈の登記を申請する際には登記識別情報が必要です。
たとえ相続人に遺贈している場合でも、登記識別情報が添付書類となります。
亡くなった人の不動産を取得するという点では同じですが、不動産登記が違うので登記識別情報の添付にも違いがあります。
亡くなった人が遺言書で不動産を遺贈している場合は、登記識別情報(登記済証)を探しておきましょう。
関連記事を読む『遺贈の登記とは|不動産の取得を第3者に対抗する要件』
4.さいごに
相続登記を申請する際は、原則として登記識別情報は不要です。
ですが、亡くなった人が住所を変更していない場合には、例外として必要になることもあります。
相続登記を申請すると、新たに登記識別情報が発行されます。
ただし、登記識別情報が発行されるのは、相続登記の申請人だけです。相続登記を単独で申請すると、他の相続人には登記識別情報が発行されません。
不動産を処分する際には登記識別情報が必要になるので、できる限り相続人全員で申請人になっておきましょう。