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相続登記が対抗要件なので未了だと第3者に対抗できない

相続登記と対抗要件
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相続登記の申請はすでに済ませていますか?

遺産分割による不動産の取得は、相続登記をしなければ第3者に対抗できません。

また、遺産分割だけでなく遺言書による相続であっても、法改正により相続登記が第3者対抗要件になっています。

相続登記の義務化も決定しているので、相続登記を後回しにする理由はありません。

今回の記事では、相続登記と対抗要件について説明しているので、相続登記が未了であれば参考にしてください。

1.不動産の物件変動は登記が第3者対抗要件

不動産の物権変動を第3者に対抗するには、不動産登記が対抗要件となります。

第3者対抗要件
物件変動等を第3者に対抗するための要件

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法177条)

不動産の物件変動には遺産分割協議も含まれます。

以下は、相続登記と遺産分割に関する判例です。

 相続財産中の不動産につき、遺産分割により権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分をこえる権利の取得を対抗することができない。

出典:裁判所判例集(昭和46年1月26日最高裁判所第三小法廷)

なぜ登記が必要かというと、相続発生と同時に不動産は相続人全員で共有状態となり、その後遺産分割協議により取得者を決めるからです。

遺産分割による物権変動

したがって、遺産分割協議により不動産の取得者を決めた場合は、相続登記をしなければ第3者に対抗できません。

たとえ遺産分割協議書に相続人全員が署名捺印していても、相続登記が未了であれば結論は同じです。

 

2.遺言書による相続も法改正により対抗要件が必要

遺言書による相続についても、2019年7月1日の民法改正により対抗要件が必要になりました。

非常に重要な法改正なので、相続登記が未了なら注意してください。

2-1.法改正前は相続登記未了でも対抗できた

法改正前(2019年6月まで)は、遺言書による相続は相続登記が未了でも第3者に対抗できました。

以下は、最高裁の判例です。

 「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができる。

出典:最高裁判所判例集(平成14年6月10日最高裁判所第二小法廷)

例えば、遺言書に「長男Aに不動産を相続させる」と書いていれば、相続登記が未了であっても第3者に対抗できました。

ですので、法改正の内容を知らなければ、遺言書があれば相続登記は不要と思い込んでいる人もいます。

2-2.法改正後は相続登記が第3者対抗要件

法改正後(2019年7月1日以降)に発生した相続については、遺言書による相続であっても相続登記をしなければ第3者に対抗できません。

下記が、法改正後の民法です。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法899条の2)

簡単に説明すると、法定相続分を超える部分については、遺産分割以外であっても相続登記をしなければ第3者に対抗できないです。


例えば、相続人がAとBの2人で法定相続分が2分の1ずつ。

亡くなった人が遺言書で「不動産をAに相続させる」と書いていたケース。

遺言書による相続も相続登記が対抗要件

相続人Aは相続登記をしなければ、自分の法定相続分2分の1を超える部分については第3者に対抗できません。


遺言書で不動産を相続する場合であっても、できる限り早めに相続登記を申請しておきましょう。

 

3.不動産の物件変動で第3者が登場するケース

相続による不動産の物件変動で、第3者が登場するケースは主に2つあります。

  • 法定相続分で登記後に持分移転
  • 法定相続分で登記後に持分差押え

3-1.法定相続分の登記は相続人が1人で可能

法定相続分での相続登記は、相続人の1人から単独で申請できます。

つまり、遺言書が残っている場合や遺産分割協議が成立している場合でも、相続人は法定相続分で登記することが可能です。

遺産分割は相続登記が対抗要件

法定相続分で登記をした後に、自分の持分を処分(贈与・売却等)して第3者に登記すると対抗できません。

法定相続分以上を取得しているなら、一刻も早く相続登記を申請しましょう。

3-2.相続人の債権者は代位登記が可能

相続人の債権者は差押えの準備として、債権者代位により法定相続分での登記が可能です。

法定相続分での登記後に相続人の持分を差押えます。

遺言書や遺産分割協議によって法定相続分とは違う割合になっていても、先に差押えされると債権者に対抗することはできません。

第3者である債権者に対抗するためにも、相続登記は速やかに申請しておきましょう。

 

4.相続放棄の効力は登記の有無に関係なく発生

相続人の中に相続放棄をしている人がいる場合、法定相続分や相続人に変更が生じます。

そして、相続放棄の効力については、相続登記の有無に関係なく発生します。

相続人は、相続の放棄をした場合には相続開始時にさかのぼつて相続開始がなかつたと同じ地位に立ち、当該相続放棄の効力は、登記等の有無を問わず、何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであつて、相続の放棄をした相続人の債権者が、相続の放棄後に、相続財産たる未登記の不動産について、右相続人も共同相続したものとして、代位による所有権保存登記をしたうえ、持分に対する仮差押登記を経由しても、その仮差押登記は無効である。

出典:最高裁判所判例集( 昭和42年1月20日最高裁判所第二小法廷)

相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったとみなされるので、相続登記の有無に関係なく相続人ではありません。

例えば、相続放棄をした相続人が法定相続分で登記をした後に、自分の持分を第3者に売却しても、第3者は持分を取得することができません。

なぜかというと、相続人ではない人が勝手に相続登記をしても、不動産の所有権は移転していないからです。

相続放棄については、遺産分割協議や遺言書による相続とは違います。

 

5.さいごに

相続登記は不動産の対抗要件となるので、相続発生後は早めに申請しておきましょう。

相続登記未了の間に持分の取得者や債権者による差押え等が発生すると、法定相続分を超える部分については対抗できません。

かつては、遺言書による相続であれば、相続登記が未了であっても第3者に対抗できました。

ですが、法改正により遺言書による相続であっても、相続登記をしなければ第3者に対抗できません。

相続登記の義務化も決まっているので、後回しにせず相続登記を申請しましょう。