相続登記の申請はすでに済ませていますか?
遺産分割による不動産の取得は、相続登記をしなければ第3者に対抗できません。
また、遺産分割だけでなく遺言書による相続であっても、法改正により相続登記が第3者対抗要件になっています。
相続登記の義務化も決定しているので、相続登記を後回しにする理由はありません。
今回の記事では、相続登記と対抗要件について説明しているので、相続登記が未了であれば参考にしてください。
目次
1.不動産の物件変動は登記が第3者対抗要件
不動産の物権変動を第3者に対抗するには、不動産登記が対抗要件となります。
- 第3者対抗要件
- 物件変動等を第3者に対抗するための要件
不動産の物件変動には遺産分割協議も含まれます。
以下は、相続登記と遺産分割に関する判例です。
なぜ登記が必要かというと、相続発生と同時に不動産は相続人全員で共有状態となり、その後遺産分割協議により取得者を決めるからです。
したがって、遺産分割協議により不動産の取得者を決めた場合は、相続登記をしなければ第3者に対抗できません。
たとえ遺産分割協議書に相続人全員が署名捺印していても、相続登記が未了であれば結論は同じです。
関連記事を読む『相続登記と遺産分割協議書について徹底解説【2022年版】』
2.遺言書による相続も法改正により対抗要件が必要
遺言書による相続についても、2019年7月1日の民法改正により対抗要件が必要になりました。
非常に重要な法改正なので、相続登記が未了なら注意してください。
2-1.法改正前は相続登記未了でも対抗できた
法改正前(2019年6月まで)は、遺言書による相続は相続登記が未了でも第3者に対抗できました。
以下は、最高裁の判例です。
例えば、遺言書に「長男Aに不動産を相続させる」と書いていれば、相続登記が未了であっても第3者に対抗できました。
ですので、法改正の内容を知らなければ、遺言書があれば相続登記は不要と思い込んでいる人もいます。
2-2.法改正後は相続登記が第3者対抗要件
法改正後(2019年7月1日以降)に発生した相続については、遺言書による相続であっても相続登記をしなければ第3者に対抗できません。
下記が、法改正後の民法です。
簡単に説明すると、法定相続分を超える部分については、遺産分割以外であっても相続登記をしなければ第3者に対抗できないです。
例えば、相続人がAとBの2人で法定相続分が2分の1ずつ。
亡くなった人が遺言書で「不動産をAに相続させる」と書いていたケース。
相続人Aは相続登記をしなければ、自分の法定相続分2分の1を超える部分については第3者に対抗できません。
遺言書で不動産を相続する場合であっても、できる限り早めに相続登記を申請しておきましょう。
関連記事を読む『相続登記は遺言書による相続でも必要になる』
3.不動産の物件変動で第3者が登場するケース
相続による不動産の物件変動で、第3者が登場するケースは主に2つあります。
- 法定相続分で登記後に持分移転
- 法定相続分で登記後に持分差押え
3-1.法定相続分の登記は相続人が1人で可能
法定相続分での相続登記は、相続人の1人から単独で申請できます。
つまり、遺言書が残っている場合や遺産分割協議が成立している場合でも、相続人は法定相続分で登記することが可能です。
法定相続分で登記をした後に、自分の持分を処分(贈与・売却等)して第3者に登記すると対抗できません。
法定相続分以上を取得しているなら、一刻も早く相続登記を申請しましょう。
関連記事を読む『相続登記を法定相続分で申請するなら単独でも可能』
3-2.相続人の債権者は代位登記が可能
相続人の債権者は差押えの準備として、債権者代位により法定相続分での登記が可能です。
法定相続分での登記後に相続人の持分を差押えます。
遺言書や遺産分割協議によって法定相続分とは違う割合になっていても、先に差押えされると債権者に対抗することはできません。
第3者である債権者に対抗するためにも、相続登記は速やかに申請しておきましょう。
4.相続放棄の効力は登記の有無に関係なく発生
相続人の中に相続放棄をしている人がいる場合、法定相続分や相続人に変更が生じます。
そして、相続放棄の効力については、相続登記の有無に関係なく発生します。
相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったとみなされるので、相続登記の有無に関係なく相続人ではありません。
例えば、相続放棄をした相続人が法定相続分で登記をした後に、自分の持分を第3者に売却しても、第3者は持分を取得することができません。
なぜかというと、相続人ではない人が勝手に相続登記をしても、不動産の所有権は移転していないからです。
相続放棄については、遺産分割協議や遺言書による相続とは違います。
関連記事を読む『相続登記は相続放棄した人がいると用意する物が増える』
5.さいごに
相続登記は不動産の対抗要件となるので、相続発生後は早めに申請しておきましょう。
相続登記未了の間に持分の取得者や債権者による差押え等が発生すると、法定相続分を超える部分については対抗できません。
かつては、遺言書による相続であれば、相続登記が未了であっても第3者に対抗できました。
ですが、法改正により遺言書による相続であっても、相続登記をしなければ第3者に対抗できません。
相続登記の義務化も決まっているので、後回しにせず相続登記を申請しましょう。