借金等の存在が判明していても、行方不明の間は相続放棄をすることはできません。
相続放棄ができるのは相続が開始した後です。ですので、行方不明者の死亡が確認されたか、失踪宣告が認められた後になります。
相続放棄を前提として失踪宣告を検討されている場合は、前もって準備をしておいてください。
目次
1.行方不明の間は相続放棄できない
多額の借金を残したまま行方不明になる人もいます。ですが、行方不明の間は相続放棄をすることができません。
なぜなら、何十年行方不明であっても死亡が確認されるまでは、生存していると扱われるからです。
相続放棄ができるのは、相続が開始(死亡)したことを知った日から3ヶ月以内です。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
相続放棄は生前にすることができないので、行方不明の間は相続放棄をすることができません。
相続放棄をするには、「死亡が確認される」か「死亡とみなされる」のどちらかが必要となります。
関連記事を読む『【失踪宣告】生死不明者は死亡とみなされる』
2.失踪宣告により死亡とみなされる
行方不明者が死亡とみなされるには、失踪宣告の申立てをする必要があります。
失踪宣告には以下の2つがあります。
どちらも効力に違いはありませんが、条件等には違いがあります。
関連記事を読む『失踪宣告の手続き|申立ての前に条件確認と準備をしておこう』
2-1.普通失踪は7年経過した日
普通失踪は行方不明になってから7年が経過していると、家庭裁判所に申立てをすることができます。
死亡とみなされる日は、行方不明になってから7年経過した日です。10年経過してから申立てをしても、死亡とみなされるは7年経過した日になるのでご注意ください。
2-2.特別失踪は危難が去った時
特別失踪は危難に遭遇したことにより、生死不明になっている人が該当します。危難が去ってから1年経過していると、家庭裁判所に申立てをすることができます。普通失踪より期間が短いのは、亡くなっている可能性が高いからです。
例えば、船舶が沈没したことにより生死不明になっている場合です。
死亡とみなされる日は危難が去った時です。1年経過後ではないので気を付けてください。
3.相続人であることを知った日
相続放棄ができるのは、相続人であることを知った日から3ヶ月以内となります。
では、失踪宣告により相続が開始した場合は、いつから3ヶ月以内になるかはご存知でしょうか。
間違えやすいのは、死亡とみなされた日です。死亡とみなされた日は、あくまでも死亡とみなされた日であって、相続人であることを知った日にはなりません。
いつから3ヶ月は相続人により違います。
- 申立をした相続人
- その他の相続人
- 次順位相続人
【申立てをした相続人】
失踪宣告の申し立てをした相続人は、失踪宣告が確定してから3ヶ月以内です。
【その他の相続人】
その他の相続人は、失踪宣告が認められていることを知った日から3ヶ月以内です。
例えば、戸籍謄本を取得して失踪宣告を知ったや、債権者からの連絡で失踪宣告を知った等があります。
【次順位相続人】
次順位相続人については失踪宣告であっても変わらないです。先順位相続人が全員相続放棄したことを知った日から3ヶ月以内です。
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4.相続放棄の準備
相続放棄をする前提で失踪宣告の申立てをするのであれば、相続放棄の準備もしておきましょう。
失踪宣告の申立てを専門家(弁護士・司法書士)に依頼している場合は、相続放棄も相談に乗ってくれます。
自分で失踪宣告の申立てしている場合は、審判確定後に市役所等へ届出を忘れずにしてください。届出をしなければ戸籍に失踪宣告が記載されないです。
戸籍謄本等に失踪宣告の記載が無ければ、相続放棄の申立てをする際の添付書類が用意できません。
*戸籍謄本等の記載で死亡を確認する。
借金等が原因で相続放棄をするのであれば、その他の相続人もする可能性が高いです。親交がある相続人がいれば、失踪宣告をしていることを教えてあげても良いと思います。
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5.さいごに
借金等を残して行方不明になる人もいます。ですが、行方不明の間は相続放棄をすることができません。
相続放棄をするのであれば、失踪宣告の申立てをして死亡とみなされる必要があります。
失踪宣告の審判が確定してから、相続放棄の申立てをするという流れです。ただし、相続人であることを知った日から、3ヶ月以内という期間は同じなのでご注意ください。