失踪宣告が認められた後なら相続放棄も可能

失踪宣告でも相続放棄
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借金等の存在が判明していても、行方不明の間は相続放棄できません。

相続放棄できるのは相続が開始した後です。

したがって、行方不明者の死亡が確認されたか、失踪宣告が認められた後であれば可能になります。

失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所で手続きをしてください。

今回の記事では、失踪宣告と相続放棄について説明しているので、行方不明者に借金があるなら参考にしてください

目次

1.失踪宣告する前は相続放棄できない

家族が多額の借金を残して生死不明になっているので、相続放棄したいと相談に来る人もいます。

家族

借金を相続したくないので相続放棄したい。

ですが、失踪宣告する前(生死不明の間)は相続放棄できません。

なぜなら、生死不明者の死亡が確認されるまでは、生存していると扱われるからです。

相続放棄できるのは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内になります。

以下は、民法の条文です。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。
出典:e-Govウェブサイト(民法915条・882条)

生死不明の間は相続が開始しないので、相続放棄の申述期間も始まっていません。

したがって、失踪宣告する前は、借金があっても相続放棄できません。

2.失踪宣告により相続放棄も可能になる

生死不明者の相続を放棄するには、相続を発生させる必要があります。

失踪宣告が認められると、生死不明者は死亡とみなされるので、相続も発生します。

ただし、失踪宣告には条件があるので、相続放棄するなら条件を満たす必要があります。

2-1.失踪宣告するには生死不明が一定期間必要

相続放棄するためであっても、生死不明が一定期間以上なければ、失踪宣告はできません。

生死不明の期間は、生死不明になった原因により2つに分かれます。

  • 一般的な行方不明|7年
  • 特別な危難により行方不明|1年

それぞれ簡単に説明します。

普通失踪は生死不明が7年

一般的な行方不明(普通失踪)の場合、生死不明の期間が7年必要です。

最後に生存が確認できた日から7年経過していれば、家庭裁判所に失踪宣告の申立てができます。

したがって、家族が借金を残して生死不明になっても、7年経過していなければ、失踪宣告(相続放棄)はできません。

特別失踪は危難が去った時から1年

特別な危難に遭遇して行方不明(特別失踪)の場合、生死不明の期間は1年です。

危難が去ってから1年経過していれば、家庭裁判所に失踪宣告の申立てができます。

特別な危難に遭遇した場合であっても、1年経過していなければ、失踪宣告(相続放棄)はできません。

2-2.失踪宣告は家庭裁判所に申立てが必要

家族の生死不明が一定期間以上であっても、相続放棄は認められません。

なぜなら、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをしなければ、生死不明が一定期間以上であっても生存扱いになるからです。

相続放棄する前提として、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをしてください。

3.失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に手続き

相続放棄できるのは、相続の開始を知った日から3ヶ月です。

失踪宣告により相続が開始した場合は、「生死不明者が死亡とみなされたこと」を知った日から3ヶ月以内になります。

3-1.死亡とみなされた日は期限と無関係

間違えやすいのですが、「死亡とみなされた日」は無関係です。

死亡とみなされた日から3ヶ月経過していても、知った日から3ヶ月経過していなければ相続放棄できます。

【事例】
失踪宣告の審判が令和5年12月10日に確定し、平成28年11月23日に死亡とみなされた。

失踪宣告の申立人が相続放棄する場合、審判確定日から3ヶ月以内が期限となります。

死亡とみなされた日(平成28年11月23日)は関係ありません。

失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄の手続きをしてください。

3-2.失踪届を提出した後の戸籍が添付書類

家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する際は、戸籍等が添付書類として必要です。

そして、失踪宣告により相続放棄する場合、失踪届を提出した後の戸籍が添付書類となります。

失踪宣告の審判が確定していても、失踪届を提出していなければ、戸籍には失踪宣告が記載されません。つまり、死亡とみなされた日が記載されていないです。

申立人が失踪届を提出しないと、相続放棄できないので注意してください。

4.失踪宣告による相続を全員が相続放棄

失踪宣告による相続を、相続人全員が相続放棄するのは自由です。

ただし、相続人がいなくなると、生死不明者が相続人だった場合、問題が発生するケースもあります。

相続人の中に生死不明者がいる

生死不明の相続人が失踪宣告により、亡くなった人よりも後に亡くなったとみなされると、生死不明者の相続人(数次相続人)が権利を引き継ぎます。

数次相続人が存在するなら、相続手続きに参加できるので問題ありません。

ですが、生死不明者の相続人全員が相続放棄すると、権利を引き継ぐ人がいなくなります。結果として、相続手続きは進まないです。

4-1.相続財産清算人の選任が必要になる

遺産分割協議前に生死不明者(相続人)が死亡とみなされ、生死不明者の相続人が全員相続放棄した場合、相続手続きを進めるなら相続財産清算人の選任が必要です。

死亡とみなされた相続人の権利は、選任された相続財産清算人が行使します。
※遺産分割協議も相続財産清算人が参加。

ただし、3つの手順(失踪宣告・相続放棄・相続財産清算人)を踏むので、手間と費用が多く発生する点はデメリットです。

4-2.初めから不在者財産管理人を選任する

相続手続きを進めたいのであれば、初めから不在者財産管理人を選任する方法もあります。

不在者財産管理人の選任では相続が発生しないので、相続人が相続放棄する必要もありません。
※生死不明者は生存扱いのまま。

生死不明者に借金があり、相続するのが難しい場合は、不在者財産管理人の選任も検討しましょう。

5.まとめ

今回の記事では「失踪宣告と相続放棄」について説明しました。

家族が借金を残して行方不明になっても、相続放棄はできません。生死不明の間は生存扱いなので、家庭裁判所に却下されます。

失踪宣告により生死不明者が死亡とみなされると、相続放棄できるようになります。失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述をしてください。

ただし、相続手続きを進めるために失踪宣告した場合、相続人が全員相続放棄すると、相続手続きは進みません。他の手続きが必要になるので、失踪宣告以外を選んだ方が良いかもしれません。

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