借金等の存在が判明していても、行方不明の間は相続放棄できません。
相続放棄できるのは相続が開始した後です。
したがって、行方不明者の死亡が確認されたか、失踪宣告が認められた後であれば可能になります。
失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所で手続きをしてください。
今回の記事では、失踪宣告と相続放棄について説明しているので、行方不明者に借金があるなら参考にしてください
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1.失踪宣告する前は相続放棄できない
家族が多額の借金を残して生死不明になっているので、相続放棄したいと相談に来る人もいます。
借金を相続したくないので相続放棄したい。
ですが、失踪宣告する前(生死不明の間)は相続放棄できません。
なぜなら、生死不明者の死亡が確認されるまでは、生存していると扱われるからです。
相続放棄できるのは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内になります。
以下は、民法の条文です。
生死不明の間は相続が開始しないので、相続放棄の申述期間も始まっていません。
したがって、失踪宣告する前は、借金があっても相続放棄できません。
関連記事を読む『相続放棄が生前に認められることは無く例外も存在しない 』
2.失踪宣告により相続放棄も可能になる
生死不明者の相続を放棄するには、相続を発生させる必要があります。
失踪宣告が認められると、生死不明者は死亡とみなされるので、相続も発生します。
ただし、失踪宣告には条件があるので、相続放棄するなら条件を満たす必要があります。
2-1.失踪宣告するには生死不明が一定期間必要
相続放棄するためであっても、生死不明が一定期間以上なければ、失踪宣告はできません。
生死不明の期間は、生死不明になった原因により2つに分かれます。
- 一般的な行方不明|7年
- 特別な危難により行方不明|1年
それぞれ簡単に説明します。
普通失踪は生死不明が7年
一般的な行方不明(普通失踪)の場合、生死不明の期間が7年必要です。
最後に生存が確認できた日から7年経過していれば、家庭裁判所に失踪宣告の申立てができます。
したがって、家族が借金を残して生死不明になっても、7年経過していなければ、失踪宣告(相続放棄)はできません。
特別失踪は危難が去った時から1年
特別な危難に遭遇して行方不明(特別失踪)の場合、生死不明の期間は1年です。
危難が去ってから1年経過していれば、家庭裁判所に失踪宣告の申立てができます。
特別な危難に遭遇した場合であっても、1年経過していなければ、失踪宣告(相続放棄)はできません。
2-2.失踪宣告は家庭裁判所に申立てが必要
家族の生死不明が一定期間以上であっても、相続放棄は認められません。
なぜなら、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをしなければ、生死不明が一定期間以上であっても生存扱いになるからです。
相続放棄する前提として、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをしてください。
関連記事を読む『失踪宣告の手続き|申立ての前に条件確認と準備をしておこう』
3.失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に手続き
相続放棄できるのは、相続の開始を知った日から3ヶ月です。
失踪宣告により相続が開始した場合は、「生死不明者が死亡とみなされたこと」を知った日から3ヶ月以内になります。
3-1.死亡とみなされた日は期限と無関係
間違えやすいのですが、「死亡とみなされた日」は無関係です。
死亡とみなされた日から3ヶ月経過していても、知った日から3ヶ月経過していなければ相続放棄できます。
【事例】
失踪宣告の審判が令和5年12月10日に確定し、平成28年11月23日に死亡とみなされた。
失踪宣告の申立人が相続放棄する場合、審判確定日から3ヶ月以内が期限となります。
死亡とみなされた日(平成28年11月23日)は関係ありません。
失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄の手続きをしてください。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月|いつまでなのか確認しておこう』
3-2.失踪届を提出した後の戸籍が添付書類
家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する際は、戸籍等が添付書類として必要です。
そして、失踪宣告により相続放棄する場合、失踪届を提出した後の戸籍が添付書類となります。
失踪宣告の審判が確定していても、失踪届を提出していなければ、戸籍には失踪宣告が記載されません。つまり、死亡とみなされた日が記載されていないです。
申立人が失踪届を提出しないと、相続放棄できないので注意してください。
関連記事を読む『失踪宣告を戸籍に記載するには失踪届の提出が必要 』
4.失踪宣告による相続を全員が相続放棄
失踪宣告による相続を、相続人全員が相続放棄するのは自由です。
ただし、相続人がいなくなると、生死不明者が相続人だった場合、問題が発生するケースもあります。
生死不明の相続人が失踪宣告により、亡くなった人よりも後に亡くなったとみなされると、生死不明者の相続人(数次相続人)が権利を引き継ぎます。
数次相続人が存在するなら、相続手続きに参加できるので問題ありません。
ですが、生死不明者の相続人全員が相続放棄すると、権利を引き継ぐ人がいなくなります。結果として、相続手続きは進まないです。
4-1.相続財産清算人の選任が必要になる
遺産分割協議前に生死不明者(相続人)が死亡とみなされ、生死不明者の相続人が全員相続放棄した場合、相続手続きを進めるなら相続財産清算人の選任が必要です。
死亡とみなされた相続人の権利は、選任された相続財産清算人が行使します。
※遺産分割協議も相続財産清算人が参加。
ただし、3つの手順(失踪宣告・相続放棄・相続財産清算人)を踏むので、手間と費用が多く発生する点はデメリットです。
4-2.初めから不在者財産管理人を選任する
相続手続きを進めたいのであれば、初めから不在者財産管理人を選任する方法もあります。
不在者財産管理人の選任では相続が発生しないので、相続人が相続放棄する必要もありません。
※生死不明者は生存扱いのまま。
生死不明者に借金があり、相続するのが難しい場合は、不在者財産管理人の選任も検討しましょう。
5.まとめ
今回の記事では「失踪宣告と相続放棄」について説明しました。
家族が借金を残して行方不明になっても、相続放棄はできません。生死不明の間は生存扱いなので、家庭裁判所に却下されます。
失踪宣告により生死不明者が死亡とみなされると、相続放棄できるようになります。失踪宣告を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述をしてください。
ただし、相続手続きを進めるために失踪宣告した場合、相続人が全員相続放棄すると、相続手続きは進みません。他の手続きが必要になるので、失踪宣告以外を選んだ方が良いかもしれません。