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限定承認をわかりやすく簡単に図解や表を用いて説明

限定承認の簡単な説明
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限定承認を検討しているが、ネット上の説明が難しく困っていませんか。

わかりやすい説明と書いてあっても、一般の人が読むと難しいと感じる記事も多いです。

一般の人が限定承認を理解するには、初めからすべてを知る必要はなく、基本の部分を先に知った方が良いでしょう。
※難しい(細かい)部分は専門家に相談してください。

今回の記事では、限定承認を分かりやすく説明することに挑戦しています。限定承認を検討する際の参考にしてください。

1.限定承認をわかりやすく言うなら条件付きの相続

限定承認をわかりやすく言うなら、条件付きの相続になります。

  • 単純承認:無条件で相続
  • 限定承認:条件付きの相続
  • 相続放棄:相続しない

単純承認が通常の相続で、相続放棄は相続しません。

限定承認は単純承認と同じく相続なのですが、条件付きになります。

1-1.負債の負担額に条件を付けて相続

単純承認と限定承認の最大の違いは、負債の負担額に違いがあります。

単純承認はすべてを相続するので、亡くなった人の負債も無条件で相続します。

一方、限定承認は負債の負担額に条件を付けて相続します。

以下は、民法の条文です。

(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法922条)

上記をわかりやすく説明するなら、「相続財産(プラスの財産)を限度に借金を支払います」と、条件を付けて相続することができます。

借金の負担額に限度がある

例えば、亡くなった人の借金が1,000万円だったとしても、限定承認をした相続人はプラスの財産を限度して負担します。

以下の表は、亡くなった人の借金が1,000万円だった場合の負担額です。

借金が1,000万円の場合
プラスの財産 借金の負担額
100万円 100万円
500万円 500万円
700万円 700万円
1,000万円 1,000万円

わかりやすく100万円単位にしていますが、プラスの財産が1万円しかなければ1万円しか負担しません。

負債額がいくらであっても、負担するのはプラスの財産額までです。

1-2.負債が少なくても限定承認は選べる

限定承認をした相続人は、相続財産(プラスの財産)を限度して借金等を負担します。

では、借金等を支払っても、相続財産が残った場合はどうなるのかです。

結論から言えば、相続人(限定承認者)の財産になります。正確には初めから相続人の財産になっています。

プラスの財産が多ければ貰える

プラスの財産とマイナスの財産(条件付き)を相続しているので、プラスの財産が多くても問題ありません。

限定承認をしてからプラスの財産が見つかる可能性もあるので、亡くなった人の財産構成によっては限定承認を検討しましょう。

 

2.限定承認を選ぶには条件が2つある

限定承認を選ぶには条件が2つあります。

  • 相続人全員で限定承認をする
  • 相続の開始から3カ月以内

限定承認の条件をわかりやすく言えば、「相続人全員で3カ月以内に限定承認の手続きをする」です。

2-1.限定承認は相続人全員で行う必要がある

限定承認を選ぶには、相続人全員で行う必要があります。

以下は、民法の条文です。

(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法923条)

誰か1人でも限定承認に反対する相続人がいれば、単純承認か相続放棄のどちらかを選ぶことになります。

限定承認は全員の同意が必要

限定承認を選ぶには他の相続人に連絡を取って、全員の意見を一致させる必要があります。

相続人の仲が悪い場合や、相続人と連絡が取れない場合は、限定承認を選ぶことが難しいです。

2-2.限定承認は相続の開始を知った日から3カ月以内

限定承認は相続の開始を知った日から、3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。

以下は、民法の条文です。

(限定承認の方式)
第九百二十四条 相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法924条・915条)

限定承認は相続の開始から3カ月以内

相続人同士の話し合いでは、限定承認の効力は発生しません。相続の開始を知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。

相続人の意見をまとめるのに時間がかかると、限定承認を選ぶのが難しくなります。

 

3.限定承認の清算手続きを簡単に説明

限定承認の申し立てをした後は、清算手続きが待っています。

限定承認の清算手続きは複雑なので、分かりやすくするために簡略化して説明します。

以下の図は、清算手続きの流れです。

限定承認の清算手続きの流れ

まずは、限定承認の官報公告をしてください。

次に、負債(借金等)の計算します。

相続財産(現金や預貯金)で負債が支払えなければ、相続財産(動産や不動産)の換価手続きをしてください。

最後に、債権者へ支払いをします。

文章にすると簡単に見えますが、非常に手間がかかります。限定承認を選ぶ人が少ない最大の理由です。

 

4.わかりやすい説明だけで限定承認を選ぶと危険

分かりやすい説明だけで限定承認を選ぶのは、危険なので止めた方が良いです。

なぜなら、分かりやすくするために、難しい(細かい)部分を省いているからです。

分かりやすい説明では難しい部分を省略している

省略している部分に重要な点が含まれています。

  • 譲渡所得税の問題
  • 先買権の行使
  • 債権者が複数だと按分計算
  • 清算手続後に債権者が現れる

簡単な説明だけで限定承認を選ぶと、思わぬ損害が発生する可能性もあります。

限定承認を選ぶ場合は、難しい(細かい)部分にも目を通しておきましょう。

 

5.さいごに

今回の記事では「限定承認をわかりやすく説明」に挑戦しました。

限定承認とは、相続財産(プラス)を限度として、相続財産(マイナス)を負担するという相続方法です。条件付きの相続とも言えます。

限定承認を選ぶには、相続人全員で3カ月以内に家庭裁判所の手続きが必要です。

家庭裁判所に対する限定承認の手続きが終了した後は、清算手続きを進めます。

清算手続きを簡略化すると、以下の流れになります。

  1. 限定承認の官報公告
  2. 負債額の計算
  3. 換価手続き
  4. 債権者への支払い

今回の記事では分かりやすさを優先しているので、詳しい説明は省略しています。限定承認を選ぶなら、詳しい説明も参考にしてください。