行方不明者が外国人であっても、条件を満たせば失踪宣告は可能です。
- 最後の住所が日本にある
- 日本で失踪宣告する事情がある
どちらかに該当すれば、外国人でも失踪宣告の申立ては認められます。
ただし、専門家でも経験者は少ないので、相談する際は注意してください。無理だと説明する人もいるからです。
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1.行方不明者が外国人でも失踪宣告できる
行方不明者が外国人であっても、法律上の条件を満たせば失踪宣告できます。
以下は、法の適用に関する通則法の条文です。
(失踪の宣告) 第六条 裁判所は、不在者が生存していたと認められる最後の時点において、不在者が日本に住所を有していたとき又は日本の国籍を有していたときは、日本法により、失踪の宣告をすることができる。 2 前項に規定する場合に該当しないときであっても、裁判所は、不在者の財産が日本に在るときはその財産についてのみ、不在者に関する法律関係が日本法によるべきときその他法律関係の性質、当事者の住所又は国籍その他の事情に照らして日本に関係があるときはその法律関係についてのみ、日本法により、失踪の宣告をすることができる。
上記の条文で重要な点は2つです。
- 外国人の最後の住所が日本
- その他の事情に照らして日本に関係がある
どちらかに該当すれば、行方不明者が外国人であっても失踪宣告できます。
1-1.外国人の最後の住所が日本だった
日本で生活していた外国人が行方不明になったケースであれば、最後の住所も日本のはずです。
外国人にも住民票はあるので、取得して確認してください。職権消除されていても、最後の住所が日本であれば大丈夫です。
最後の住所が日本であれば、失踪宣告の申立ては認められます。
1-2.最後の住所が外国でも日本に関係がある
外国人の最後の住所が外国(日本以外)であっても、事情があれば申立て可能です。
- 不在者の財産が日本にある
- 不在者に関する法律関係が日本法によるべきとき
- その他、日本に関係があるとき
例えば、外国人名義の不動産(共有名義含む)が日本にあり、名義人が行方不明になっていれば、失踪宣告できると考えられます。
私が実際に依頼を受けたケースでは、外国人配偶者が行方不明だったので、婚姻関係を消滅させる目的で失踪宣告しました。
※無事に認められて再婚しています。
日本で失踪宣告する(死亡とみなす)必要があれば、申立ては認められます。
関連記事を読む『失踪宣告すると離婚ではなく死別による婚姻関係の消滅』
1-3.生死不明期間等の要件は日本人と同じ
当然ですが、生死不明期間等の要件は、外国人も日本人と同じです。
- 生死不明期間|7年以上(1年以上)
- 家庭裁判所に申立て
生死不明期が一定期間以上経過、かつ、家庭裁判所への申立てをしなければ、死亡とはみなされません。
共通の要件に関しては、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『失踪宣告の要件は2つ!「生死不明の期間」と「家庭裁判所への申立て」』
2.外国人の失踪宣告は申立先に注意
失踪宣告の申立先は、外国人の従来の住所地(居住地)で決まります。
以下は、家事事件手続法の条文です。
第百四十八条 失踪の宣告の審判事件(別表第一の五十六の項の事項についての審判事件をいう。次項において同じ。)は、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
まずは、外国人の住所を確認してください。
- 日本に住所がある
- 日本に住所がない(住所不明を含む)
どちらに該当するかで、申立先の家庭裁判所が違います。
2-1.日本に住所地がある
外国人の住所地が日本にあれば、当該住所地を管轄する家庭裁判所が失踪宣告の申立先です。
外国人の住民票が取得できれば、管轄家庭裁判所はすぐに判断できます。
【事例】
行方不明者|配偶者(韓国人)
住所地 |大阪府大阪市中央区○丁目○○町○番○号
大阪市を管轄する大阪家庭裁判所が失踪宣告の申立先になります。
住所地が日本にあれば、日本人の場合と変わらないです。
2-2.日本に住所地がない(住所不明含む)
外国人の住所地・居住地が日本に無い場合、または、住所地・居住地の情報が不明な場合、別の条文で管轄が決まります。
以下は、家事事件手続法の条文です。
(管轄権を有する家庭裁判所の特例) 第七条 この法律の他の規定により家事事件の管轄が定まらないときは、その家事事件は、審判又は調停を求める事項に係る財産の所在地又は最高裁判所規則で定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
以下は、家事事件手続規則の条文です。
(法第七条の最高裁判所規則で定める地の指定) 第六条 法第七条の最高裁判所規則で定める地は、東京都千代田区とする。

東京都千代田区を管轄するのは東京家庭裁判所なので、日本に住所が無い場合や住所不明の場合は、東京家庭裁判所に失踪宣告の申立をします。
3.失踪宣告後に外国人も失踪届を提出

失踪宣告の審判が確定したら、失踪届を役所に提出してください。
ただし、外国人の失踪届は、日本人の場合と違う点が2つあります。
- 提出先の役所
- 戸籍の記載
※配偶者が外国人の場合で説明します。
3-1.日本人とは届出先の役所が違う
行方不明が外国人配偶者の場合、失踪届は日本人配偶者の本籍地に提出します。
なぜなら、日本人配偶者の戸籍に、外国人配偶者も記載されているからです。
※婚姻欄に記載がある。
日本人の失踪届とは届出先が違うので、提出する際は気を付けてください。
関連記事を読む『失踪宣告が戸籍に記載されるのは失踪届を提出した後』
3-2.戸籍に外国人配偶者の失踪宣告も記載
失踪届を提出すると、日本人配偶者の戸籍に、外国人配偶者の失踪宣告が記載されます。
以下は、戸籍の記載例です。

上記の記載がされると、戸籍で外国人配偶者の死亡が確認できます。
相続手続きでは、失踪宣告が記載された戸籍が必要なので、記載の有無を必ず確認してください。
4.失踪宣告されている外国人
失踪宣告されている外国人は、以下のようなケースです。
- 配偶者が外国人
- 親が外国人
- 日本に帰化した人の親族
- 国籍離脱した人
行方不明になった配偶者や親が外国人だった。
日本に帰化した人の親族(外国人)や、国籍離脱した人(外国人)が行方不明になった。
失踪宣告している理由は、相続手続や不動産の共有解消です。
5.外国人の失踪宣告は件数が少ない
外国人の失踪宣告は件数が少ないです。
以下は、2023年に審判が確定した、外国人の失踪宣告を国別にした表になります。
※官報を1年間確認して集計。
国籍 | 件数 |
---|---|
韓国 | 12件 |
中国 | 5件 |
朝鮮 | 3件 |
不明 | 3件 |
その他 | 8件 |
合計 | 31件 |
1年間で31件しかないので、専門家であっても経験者は少ないです。
もし、外国人だから失踪宣告は無理だと説明されても、世の中には経験者(私を含めて)がいるので、諦めずに連絡してください。
関連記事を読む『失踪宣告は司法書士に依頼できる!経験者は少ないので注意』
6.まとめ
今回の記事では「外国人の失踪宣告」について説明しました。
行方不明者が外国人であっても、条件を満たせば失踪宣告できます。
- 外国人の最後の住所が日本
- その他の事情に照らして日本に関係がある
申立先の家庭裁判所は、外国人の住所が日本に有るかで違います。
日本に住所地・居住地があれば、当該住所を管轄する家庭裁判所です。
一方、日本に住所地・居住地が無い場合や住所の記録が無い場合は、東京家庭裁判所が申立先となります。
失踪宣告が認められた後は、外国人であっても失踪届の提出が必要です。
配偶者が行方不明であれば、日本人配偶者の本籍地に提出してください。戸籍に失踪宣告が記載されます。
外国人の失踪宣告は経験者が少ないので、専門家でも断る人はいますが、諦めずに連絡をください。