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任意後見人にもデメリットは存在する|8つのポイントを確認

任意後見デメリット
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任意後見を検討しているが、デメリットも知っておきたいのではないでしょうか。

どんな制度にも欠点は存在します。任意後見であっても例外ではありません。

法定後見と比べて優れていると感じる部分もあれば、劣っていると感じる部分もあります。

今回の記事では、任意後見人のデメリットを8つ説明しているので、あなたにとってデメリットになるか確認しておいてください。

1.任意後見契約書の作成方法は決まっている

1つ目のデメリットは、任意後見契約書の作成方法は決まっているです。

任意後見契約を結ぶには、契約書を公正証書で作成しなければなりません。

(任意後見契約の方式)
第三条 任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(任意後見契約に関する法律3条)

当事者間の口約束や私文書では成立せず、必ず公正証書で作成する必要があります。

公正証書で作成するには一定額の手数料が発生します。つまり、任意後見契約を結ぶには、必ず費用が発生するということです。

以下は、公正証書作成手数料の目安です。

作成手数料の目安
公正証書作成 1万1,000円
登記嘱託手数料 1,400円
印紙代 2,600円
郵便切手代 約600円
原本超過枚数加算 1枚250円
正本謄本の作成料 1枚250円

正本は本人と受任者に各1通、謄本は法務局への登記申請用として1通必要になります。
ですので、契約書の枚数×3通×250円です。

任意後見契約書を作成するのに約2万円が必要です。また、専門家に相談すると報酬も発生します。

任意後見契約書を作成するのに必ず費用が発生するのはデメリットになります。

 

2.任意後見契約を締結できる時期は限られる

2つ目のデメリットは、任意後見契約を締結できる時期は限られるです。

任意後見契約を締結できる時期は限られています。それは、あなたの判断能力が低下する前、つまり元気なうちです。

後見が必要になってから、任意後見契約を結ぼうとしても間に合わない可能性が高いです。

以下は、法定後見と任意後見の件数比較です。

法定後見と任意後見の件数比較
法定後見 任意後見
2016 33,458 791
2017 34,933 804
2018 35,785 764
2019 35,211 748
2020 36,497 738
〈最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和2年)」のデータより〉

法定後見は後見・保佐・補助の申立件数で、任意後見は任意後見監督人の申立件数です。

任意後見と法定後見の申立て件数を比べると、法定後見の方がまだまだ多いです。

理由の1つとしては、判断能力が低下した時点で、任意後見契約を結ぶことが難しいからです。判断能力が低下してしまうと、公証役場で医師の診断書を求められます。

任意後見契約の締結時期が限られるのはデメリットになります。

 

3.任意後見は身体能力の低下に対応できない

3つ目のデメリットは、任意後見は身体能力の低下に対応できないです。

任意後見契約を締結しても、効力が発生するのは判断能力低下後です。

身体能力が低下しても、判断能力を維持していれば後見はスタートしません。たとえ、家から出ることも難しいぐらいの状態になっても、判断能力の低下前は対応することできません。

対応策としては、移行型と呼ばれている方法を採用している人が多いです

財産管理から任意後見に移行

任意後見が身体能力の低下に対応できないのはデメリットになります。

 

4.任意後見契約を解除される恐れがある

4つ目のデメリットは、任意後見契約を解除される恐れがあるです。

任意後見は契約なので解除することもできます。

任意後見契約の効力発生前であれば、当事者の一方から解除することが可能です。

事情が変わることもあるので解除できるのはメリットにもなるのですが、相手側からも一方的に解除することが可能です。

せっかく契約を結んでも解除されてしまうと、新しい相手と結び直す必要があります。その際には公正証書の作成手数料も再度必要になります。

任意後見契約を解除される恐れがあるのはデメリットになります。

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5.任意後見の効力発生には申立てが必要

5つ目のデメリットは、任意後見の効力発生には申立てが必要です。

あなたの判断能力が低下しても、誰かが申立てをしてくれないと効力が発生しません。自分で申立てをすることも可能ですが、現実的には難しいと思います。

家族と一緒に住んでいるや近くに住んでいる場合は、あなたの状態に気付いて申し立てをしてくれます。一方、誰も近くに住んでいない人は、契約を締結していても申立てをする人がいないので、いつまで経っても効力が発生しません。

対応策としては、見守り契約を別に締結する人が多いです。

見守り契約
定期的に訪問や電話連絡をしてくれるサービスのこと

見守り契約を結ぶことで、状態の変化に気付いてもらいやすくなります。

任意後見の効力発生に申立てが必要なのはデメリットになります。

 

6.任意後見監督人が必ず選任される

6つ目のデメリットは、任意後見監督人が必ず選任されるです。

任意後見人には必ず後見監督人が選任されます。法定後見人の場合は就任しないケースもあります。

任意後見監督人をデメリットと感じる点は2つあります。

  • 任意後見監督人に支払う報酬が発生する
  • 任意後見監督人と相性が合わない可能性

6-1.任意後見監督人の報酬額がデメリット

任意後見監督人は専門家が就任する可能性が高いので、毎月の報酬も必要となります。
*原則として第三者が選ばれます。

後見人の報酬を契約で0円にすることはできますが、後見監督人の報酬は発生します。任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めます。

以下は、報酬額の目安です。

報酬額の目安
管理財産額 報酬額(月額)
5,000万円以下 1万円~2万円
5,000万円超 2万5,000円~3万円

後見契約の効力が発生すると、最低でも年間約12万円は必要です。

任意後見だからといって、金銭面で得をするわけではありません。

6-2.任意後見監督人と相性が合わない可能性

任意後見監督人を選任するのは家庭裁判所です。

そのため、選任された任意後見監督人と、あなた(任意後見人)の相性が合わない可能性があります。

「任意後見監督人の話し方が気に入らない」

「任意後見監督人が私の言うことを信じない」

「任意後見監督人から一方的に指示される」

家庭裁判所に不満を言っても、任意後見監督人が法律に違反していない限り、解任されることはありません。

つまり、任意後見が終了するまで、任意後見監督人と一生付き合っていく必要があります。

誰が任意後見監督人に選任されるのか分からない点は、任意後見のデメリットになります。

 

7.任意後見人の代理権は契約で定めた範囲のみ

7つ目のデメリットは、任意後見人の代理権は契約で定めた範囲のみです。

任意後見人の代理権は、任意後見契約で定めた範囲のみとなります。たとえ、どんなに基本的なことであっても、契約書に記載していなければ代理することができません。

判断能力が低下した後に気づいても、すでに契約をやり直すことが難しいので法定後見の申立てをすることになります。

任意後見契約で定める代理権の範囲については、2人で必ず確認をしてください。

任意後見人の代理権は契約で定めた範囲のみはデメリットになります。

 

8.任意後見人は取消権が認められない

8つ目のデメリットは、任意後見人は取消権が認められないです。

法定後見人は「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外について取り消すことができます。

それに対して、任意後見人は取消権が認められていません。

例えば、本人が高額な商品を購入したとしても、契約自体に問題がなければ取消すことはできません。

本人の状態によっては、法定後見でなければ対応できないかもしれません。

任意後見人に取消権が認められないのはデメリットになります。

 

9.さいごに

任意後見人のデメリットとなる部分を8つ説明しました。

  • 契約方法が決められている
  • 契約を締結できる時期が限られる
  • 身体能力の低下には対応できない
  • 契約を解除される恐れがある
  • 効力発生には申立てが必要
  • 任意後見監督人が必ず就任
  • 代理権は契約で定めた範囲のみ
  • 取消権が認められない

人によっては気にならない部分もあれば、他の方法と組み合わせることで対応できる部分もあります。

完全無欠な制度は無いので、デメリットもあると知ったうえで任意後見を上手く利用する必要があります。