任意後見契約の移行型|身体能力の低下に対応する方法

任意後見契約の移行型
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任意後見契約には移行型と言われる類型があるのは、ご存知でしょうか。

任意後見契約には3つの類型があります。

  • 将来型
  • 移行型
  • 即効型

3つの中でも多く採用されているのが移行型です。

任意後見の移行型を選ぶことにより、任意後見契約の欠点である身体能力の低下に対応することができます。

今回の記事では、任意後見契約の移行型について説明しているので、まだご存知なければ確認しておいてください。

1.任意後見契約は3つの類型に分かれる

任意後見契約は3つの類型に分けることができます。

  • 将来型
  • 移行型
  • 即効型

移行型以外の2つについても、簡単に説明しておきます。

1-1.将来に備えて任意後見契約を結ぶのが将来型

任意後見契約の本来の形が将来型です。

自分の判断能力が低下した時のために、あらかじめ後見人になってくれる人と任意後見契約を結びます。

将来のために任意後見契約を結ぶので将来型と言われています。

1-2.任意後見契約の効力を直ぐに発生させるのが即効型

任意後見契約を結ぶと同時に、任意後見監督人の選任申立てをするのが即効型です。

将来のためではなく、任意後見契約の効力を直ぐに発生させることを前提に契約を結びます。

すでに判断能力が低下し始めている人が利用するのですが、判断能力によっては任意後見契約を結ぶことが困難です。

 

2.将来型の欠点を補うのが任意後見の移行型

任意後見契約(将来型)にも欠点があります。

任意後見契約は判断能力が低下しなければ、契約の効力が発生しない点です。

つまり、身体能力が低下して寝たきりになったとしても、判断能力が低下していなければ効力は発生しません。

欠点を補うために考えられたのが、任意後見契約の移行型です。

2-1.財産管理委任契約で身体能力低下に対応する

任意後見契約の移行型では、2つの契約を結びます。

  • 財産管理委任契約
  • 任意後見契約

2つの契約を移行して利用します。

財産管理から任意後見に移行

判断能力低下前に身体能力が低下すれば、財産管理委任契約で対応します。

その後に判断能力が低下したら、任意後見契約に移行して対応します。

2-2.財産管理委任契約の内容は自由に決めれる

財産管理委任契約の内容は、当事者が自由に決めることができます。

財産管理契約で委任できる主な内容です。

  • 不動産の管理や保存
  • 金融機関との預貯金取引
  • 定期的な費用の支払い
  • 生活必需品の購入

委任する内容はあなたの希望に応じて、自由に決めることができます。すべてを委任するのではなく、必要な部分だけ委任します。

ちなみに、財産管理委任契約という名称ではなく、財産管理等委任契約や単に委任契約と呼ぶこともあります。

 

3.移行型の任意後見契約を結ぶ際に知っておくこと

任意後見契約を移行型にするなら、以下の2つを知っておいてください。

  • 同じ人に委任することも可能
  • 同じ契約書で作成すると手数料が増える

3-1.同じ人に委任することも可能

任意後見契約と財産管理契約を同じ人と結ぶこともできるので、判断能力低下後の移行もスムーズに進めることが可能です。

財産管理と任意後見を同一人物に依頼

信頼できる人が任意後見契約の受任者になっているなら、財産管理契約を同じ人と結ぶのも良いでしょう。

同じ人と契約を結ぶデメリットは【4.任意後見の移行型にも問題点がある】で説明しています。

3-2.同じ契約書で作成すると手数料が増える

任意後見契約と財産管理契約は、同じ契約書で作成することができます。

ただし、任意後見契約は公正証書で作成するので、財産管理委任契約も公正証書で作成することになります。

公正証書の作成手数料が増えてしまいます。

増える手数料は以下のとおりです。

  • 財産管理契約分:1万1,000円
  • 契約書の枚数増加分:1枚につき250円

 

4.任意後見の移行型にも問題点がある

任意後見の移行型にも問題点があります。

任意後見の移行型を選ぶ人は、同じ人と契約を結ぶことが多いです。

同じ人と契約を結んで問題になるのが、任意後見監督人の選任申立てをしない人がいることです。

4-1.監督人の存在を嫌がり申立てをしない

財産管理委任契約の監督者は、あなた自身となります。

ですが、あなたの判断能力が低下した後は、誰も監督する人がいません。

本来であれば、任意後見監督人の選任申立てをするのですが、監督人の存在を嫌がり申立てをしない人がいます。

防ぐ方法としては、本当に信頼できる人と契約を結ぶや、財産管理契約の他に見守り契約を別の人と結ぶ等が考えられます。

4-2.見守り契約で判断能力低下に気付いてもらう

見守り契約を別の人と結ぶことで、申立てを意図的にしないことを防ぎやすくなります。

なぜなら、第3者が定期的に見回りに来るので、判断能力の低下に気付きやすくなるからです。

判断能力が低下しているのに申立てをしないのであれば、家族や役所などに連絡してもらいます。

見守り契約の詳細は『見守り契約|あなたの変化に気付いてもらうための準備』をご覧ください。

 

5.さいごに

任意後見契約には移行型という類型があります。

移行型では任意後見契約だけではなく、財産管理委任契約も結びます。

任意後見契約と財産管理委任契約を結ぶことで、任意後見契約の欠点である身体能力の低下に対応することが可能です。

ただし、同じ人と2つの契約を結ぶと、判断能力が低下しても申立てをしないリスクも発生します。

任意後見契約の移行型を選ぶ際には、十分に確認をしたうえで契約を結びましょう。